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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
七章 館城建築
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「…………案外すんなりとはいかないものか。まあいきなり城を作りたいから城の設計図を作ってくれ、なんて言ってくる相手がいたらたとえ貴族でも訝しがられるものか」


 公也は建築関連の人材をクラムベルトから紹介してもらい訪ねた。しかし、そこで城を作るので設計をしてほしい、過去に城を作った設計図があればそれが欲しい、そんなことを言ったところでまず信用して設計してもらえる、設計図を見せてもらえるかといえば普通はそうではないだろう。個人で城を作る、貴族とはいえ、領地をもっているとしても、そもそも城作り自体が極めて珍しい事業である。王城のような国の中心地に城を作る、あるいは戦闘状況にある地域、戦争のための城塞、砦づくりのようなものならばともかく、日常過ごすような通常の領地に城を作るというのはあまりないだろう。維持の問題、城を作るために必要な資金資材の問題、そもそも城というものを必要とするものでもない。見栄を張って城を作りたいという人間がいるかもしれないがいろいろな意味で現実問題難しいだろう。

 そして設計図。これを見せてくれと言われてもまず見せることはないだろう。このキアラートにおいて城の設計図といえば王城だったりトルメリリンとの国境付近に作られた戦闘用の砦だったりそういうものだろう。その設計図を見せるということは構造的な弱点、場合によっては隠し通路の類が記載されている可能性もある。つまりは城の地図の情報は極めて重要な情報になるのである。なのでいきなり来た人間に見せられるものではない。


「……知識を得られれば大きいんだが、さすがにそれはな。職人が消えるのは問題あるし、そういう手法で知識を得るのは……かといって弟子入りは流石に無理だろう。そもそも今どうにかしたいわけだし……来てもらうのが一番かもしれないが、それはそれで問題があるだろうしな」


 暴食の力を使えば職人を食らいその知識を得ることができる。しかし公也はそれをするつもりがない。知識を得るために暴食の力を使うのが嫌というわけではなく、無為に人殺しをするのが嫌だというものである。生きるため、切羽詰まった状況、それ以外に手段がない思いつかないというのならばともかく、ただ自分が望みを叶えるために本当に必要とされるような行動としてではない暴食の力を使っての知識の摂取は望ましいものではない。それに職人がこの世界から一人消えるというのも少々この国には痛手だろう。さらに言えば、消えた職人に関して一番怪しまれるのは直前にかかわっていた公也である。報復あるいは建築のために攫ったなどと考えることもできる。ゆえに手は出せない。


「…………城、城か。別に、そうだ、別に城でなくてもいいかもしれない。そもそも城と館の違いは何か、という話になる。家、小屋、倉庫、館、城、建物として建てられるそれぞれの建物の違いはなんだ?」


 究極的に言えば、どれも同じ建物であるという点には変わらないだろう。違う点といえば、その用途、住む住人など。城に求められるのは何かというと、戦闘に耐えること、戦争に使われること。そういった用途の建築物が城ということになるだろう。逆に言えばその用途に沿ったものであれば、館を建てても城と言い張れるかもしれない。あるいは用途ではなく、建築に使う資材を変更するのもありか。木材での建築ではなく石材で館を建築する……それだけでも大きく違う。まあ、やはり形状よりは意図、目的、用途のほうが大きな要素だと思われる。


「それなら館の設計図を頼む、というのもありか。結局建てるのは俺なわけだし……あるいはそういった設計図から派生させるのもあり、なのかな? まあ、もう一度同じ話を持ち込むのはどうなんだろうと思うし、別のところに話を持ち込んだほうがいいのか……いや、思い直して館の設計図を、というほうがいいか? ああ、でも建てるのは建物だけじゃなくて城壁も……いや、壁はそこまで気にしなくてもいいか。壁自体はそこまで面倒なものでもないと思うし…………まあ、設計図だけでなくある程度どうやって建てるか、ということに関しての話も聞いておいたほうがいいかもしれない……一応基本的なことは知っておいたほうが損はないからな。自分だけで作るのも限界はあるだろう。教えてくれるかどうかはまた別の話だが……」


 いくら相手が貴族でも自分たちの飯の種である建築に関して教えてくれ、と言われても困るだろう。さらに言えば設計だけを頼みその建築に関しては専門家である自分たちに頼むのではなく頼んだ公也が行うというのであれば余計に面倒なことになる可能性はある。まあ、この場合公也がいる場所、新しく領地となったアンデルク山のアンデール領であるという話が聞ければまた少し話は違うかもしれないが。


「とりあえず館の設計図だけを頼む、その設計図さえもらえればそれを参考に……まあ、今回ですべてを完璧に建築する必要性もないしな。まず仮にそこそこの大きさのものを隣接する形で建築する、そういう風にしてもいいか? 最悪城壁で囲む形にしても……洋風にするつもりでなければいくらか和風建築の方はそれなりに知らないわけではないからあちらの城を建築する形でもいい……仮に本来の建築と同じようにできなくとも、魔法による補強をするし……試す分には何でもいいかもしれないな。やれるだけ自分でやる、そのため基本的な設計、形だけをどうにか作ってもらう……そんなところでいいか」


 頼んで受けてもらえるかはともかく、現時点ではそういった形で貴族的な館の建築設計の依頼をすることに決める公也。頼んですぐに、というのは少々時間的に間が悪いのでその間に資材集めを行うことに決める。


「土壁、石造り……煉瓦を使うにしてもやはり基本的には土があったほうがいい、ある程度は城の周りを均す時にでる余りでいいとして。木材、芯や柱に使う木材、石柱、石材、金属の素材、購入で賄うのには必要な資金が多すぎる……さすがに金属系の資材は鉱山、鉱床を新しく探すというわけにもいかないが……木材に関しては何とかなる。土も集める分には苦労しない。山の切り崩しあたりを行うとなると……まあ、アンデルク山の付近あたりがいいな。後は人の手の入っていない山脈沿いあたりか。資材集めの場所の検討……とはいっても、たいして検討も必要がない……」


 ぶつぶつと一人でいろいろと考えている公也。とりあえず考える必要のあることは枚挙に暇がないため、時間はそれなりに潰せる様子である。



※城を作る機会って実際どれくらいある物だろうか。権威の象徴、あるいは戦争に向けてなど理由がなければ作る意味もない。維持費の問題もあるだろうし……相応に必要な状況がなければ作られないのではないだろうか。住むだけなら大きな館で十分な気もする。

※用途も性質も全然違うが建物の設計図さえあればそれを参考に別の建物を建築することは…………まあ全然違うにしてもできなくはないのではないか、という主人公の推測。実際はそこまで簡単ではないと思うが。

※お金がないから資材が買えない? なら自分で集めよう!

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