表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
六章 竜谷異変
191/1638

15


「ご主人様ー。すこしいいですかー」

「……どうした?」


 メルシーネが公也の下に来て声をかける。


「外にいるワイバーンたちについてなのですけど」

「……何か問題があったか?」

「問題というほどのことでもないのです。一応ワイバーンも魔物ですので外で過ごそうが特にこれと言って問題はないのです。でも、一応飼われているという立場なのですし外に放っておいてばかりなのもあれなのです。もっといい環境をよこせって思ってるのですよ。巣をつくらせろって感じに。なのでご主人様、彼らのために住む場所をどうにか作ってほしいと思うのです。つまりは厩舎をつくらないのですか、という話なのですよ」

「…………厩舎か」


 現状ワイバーンたちは城の外で野ざらしのまま眠らせている形になっている。別に魔物は元々野生で生きているうえにワイバーンはその中でも竜種、かなり強靭で生命力も強い。ゆえに雨が降る中外で過ごしたとしてもそこまで弱ることもないし死ぬこともない。とはいえ、やはり飼われているワイバーンは通常の野生のワイバーンとはまた意識が違ってくるだろう。そんな彼らのために厩舎を作る。ある意味野ざらしにするよりも管理もしやすくなる。メルシーネがいる限りワイバーンが暴れ壊れるようなこともないし管理もしやすいので問題はない。外に出して体を動かさせるなどの手間も問題なく行ける。


「そうだな、建てたほうがいいか」

「なのです!」

「………………」

「………………」

「なにか二人がじっと見ているのです」

「ああ、気づいているから…………雪奈、ペティエット。どうした?」

「雇い主様ー。私も宿を広げたいのですけどー? 部屋を増やして泊れる人を多くしたいですし、宿自体も大きく場所をとって広くしておきたいのですけどー?」

「城、もっと大きく、成長させてほしい……」

「わかった、わかってるから……」


 メルシーネが厩舎を立ててほしいと言う陳情を持ち込んだのと同じようなもので雪奈とペティエットもまた自分の領分である宿、城を大きく広げ立派なものとしたいと言う意思がある。特にペティエットにとっては城が大きくなると言うのは自分の力が大きくなると言う意味合いでもより重要なものだ。雪奈に関しては城が大きくなることで宿の範囲を増やせる。現状彼女に与えられている城の領分ではそこまで大きな宿としての経営はできない。彼女にとっては少なくとも自分で作った公也の訪れた山奥の宿くらいの大きさにはしたい。この城ならばそれ以上の大きさ、範疇にもできるが現状それができない状態だ。あえて言うならこの城の内部に作る必要もなく、外にある程度の建物を土台として作ればそこに宿を広げより大きく立派な宿としての経営ができるのでそちらでもいい。

 どちらにしても城を大きくする、というのは変わりない。そういう点で厩舎を立てる、城を大きくする、宿の経営場所を作る……そしてこのアンデール領、アンデルク山に公也の領地として作るべき場所として人が住むことのできる建物を作るのは確実に必要なこと。簡単に街をつくると言っても必要なことが多いので単純に建物を作るだけでいいわけではないが、すむところがなければまず人が来てもい続けることはできない。

 現在のアンデルク城はまだ三十人も人がいないと言っていい状況である。城は一応結構な大きさを持っているためそれくらいの人数を収容できる規模はある。しかしこれから人を増やすとなれば城だけでは足りないし、そんな缶詰の様に押し込んで過ごすのもなかなか大変である。リーリェたちの負担も増える。城を大きくし住める人数を増やす、過ごせる部屋を増やし広くする、一人一部屋を確実にする、それ以外にも城の外に家を作りそちらに住んでもらうなどいろいろなことが必要になるだろう。家族がいる人物が来る場合やこれから家族ができた場合なども部屋が一つ、というわけにはいかないだろう。アパートやマンションの一室で過ごすような社会観は今の所……恐らくない。もしかしたら貧民の類が長屋の小さな部屋で家族で暮らしている、みたいなことはあるかもしれないが。

 ともかく色々と建てたり増やしたり大きくしたり、現状のアンデール領に住まう住民……まあ、三人とも人間ではないがそんな三人からの陳情である。実に十パーセントを超える人数からの陳情なのだから少しは話を聞くべきだろう。総数が少ないので三人でも一割以上ということになるのだが。


「とりあえず、すぐにいきなり建てるということはできない。ああ、ワイバーンの厩舎に関しては簡単に石造りで雨をしのぐ場所くらいは用意できる。だが雪奈とペティエットの頼みに関してはすぐにはいかない。特に城は単純に増築しようと思って増築できるわけではないからな」

「それは……一応わかってる」

「そうですねー。お城ですからね。大きくするのには人手がいるでしょうし……広げる場所も問題になるでしょうしー」

「材料の問題もあるですし、設計からして色々と面倒くさいと思うのです。一から作ると言うわけにもいかないのですし」


 単純に城を立てると言うのならそこまで難しくもない……ということもないが、まだ手間は少なく済むかもしれない。しかし今回はペティエット、城魔であるアンデルク城自体を大きくするもの。この城を壊し新しく城を立てると言うわけにはいかない。ペティエットという存在を維持しているほうが都合がいいし便利である。また魔法において帰還地点としてアンデルク城を利用できるのはペティエット、城魔だからこそだ。通常の城では不可能。掃除も楽だし水も問題なく集められるし便利さが普通の城よりもはるかに違う。この便利さが城が大きくなればもっといろいろと便利にできるだろうと言う点で城魔を大きくするのは大きな価値がある。

 新しく建てた城にペティエットを移し替える、みたいなことは流石にできない。城魔は城自体が本体でありペティエットはそれに付随するもの。ペティエットが死んでも城魔に影響はないが城魔が死ねばペティエットは消えるだろう。ゆえに城魔の本体、城自体を改築、増築する必要性があるのである。既にある城を作り替える……新しく物を作る方が既にある物を作るよりも楽なことも多い。城となると片づけやらなにやら、手間が多いだろうしどこをどう残しどこを変えるかなどでも面倒が多い。増築するにしても一度城を見て話を聞く必要もある。設計図さえあればいいと言うわけでもないだろう。

 そして一番の問題として。公也は城づくりの経験がない。とうぜんだろう。そもそも城づくりの経験がある人間とはどれほどいるものか。この世界でも城を作ると言うのはそうないことだろう。漫画などで昔の城、公也の住んでいた国における古城の建築風景を見たことはあるが、それだって多少参考になると言う程度で城づくりのすべてが乗っているわけではない。洋風な城づくりとなればまた全然話は違ってくる。さらに言えば公也のいるアンデルク城はそういった白とも違う砦風の城……また雰囲気の違ってくるものだ。それを改築する、というのはまず公也単体では無理だろう。どういう城に作り替えるかの構想からもまたどうするかが変わってくる。

 まあ、全てを公也が行う必要はない。城づくりの経験のある技師を連れてくるなどやり様はあるだろう……時間の問題、材料の問題、費用の問題、人手の問題、様々な問題はあるが。そのあたり公也がどうにかして手を尽くす部分であるともいえる。一応これでも貴族なのだからなんとかできなくもないだろう、多分。


「………………まあ、どうにかするさ」


 公也としてはペティエットのためにもいろいろと考えていることもある。ペティエットが他の仲間が外に出るのを羨ましそうに見ているのを公也は知っている。ペティエットは城の外に出れない。これはペティエットが城魔という存在故にしかたのない話だ。だが、それでもある程度、完全な自由は不可能でも外に出るくらいの想いはかなえさせたい。そんな考えが公也にはある。

 まずは相談、そこから。公也はそう考えとりあえずいい伝手がないかとクラムベルトに相談することにした。


※ワイバーンの厩舎……トルメリリンがいたころに建てていないのか。資材の関係で建てていない、建てていても仮設。破壊されることを考慮するとまともな建物は立てていないだろう。主人公が来てからは仮設のものだったら解体して更地にしていると思われる。なお今までワイバーンは外で野晒。まあそもそも野生生物でしかも強靭な生物だからそこまで気にする必要も…………

※メルシーネ:厩舎求・雪奈:宿求・ペティエット:城増築求

※建築の問題に関してはお金はまだどうにかなるし資材も集めることは難しくないだろう。最大の問題は人手。労力という点なら力仕事はどうとでもなるが…………根本的に建築技術、建築知識に関しては別物。主人公は知識を集める人間ではあるが広い一般的なものならばともかく専門分野では特別興味を持たなければ微妙なところ。ゆえに次章の建築で苦労するようである。


※ヒロインラッシュも終わったところでメイン・サブのヒロインの違いについて。現状出ている中でメイン扱いはヴィローサ、ペティエット、アリルフィーラ。サブはウィタ・フェイ、雪奈、メルシーネ。フェイはウィタとセット扱い。

基本的にメインサブの取り分けは主人公に対する行為の性質の違い。恋愛感情、あるいはそういった愛情に近い感情を持つことがメインヒロインの条件。ウィタは将来的には不明だし、雪奈は宿一筋で主人公には好意的だが恋愛感情は一切ないし、メルシーネは仕え魔として仕えることに従事するつもりなのでそういった感情は消している。

ぶっちゃけあまりメインサブ分ける意味もない気もするけどとりあえずそういう感じで区分されている。なおまだ増える模様。一応この作品ハーレム要素ありだから……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ