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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
六章 竜谷異変
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13



 帰り道。公也は竜少女の本来の姿である竜の姿のその背に乗っている。追従するのは二体のワイバーン。一体は公也が乗ってきたワイバーンでありもう一体はオーガンの乗っているワイバーンである。両方とも竜少女の命があれば問題なくついてくる。まあ一体はオーガンの指示で移動しているわけだが。

 竜少女は本来の姿、三メートルほどの姿をとっているが実際に竜の姿をとる場合巨大化もある程度はできる。その場合最大は二倍ほど、六メートルほどになるだろう。もっともそれほどの大きさになっても公也以外の存在を背に乗せるのはそう簡単にしない。公也が認めた相手ならば多少は配慮するがそれくらいだろう。公也の考えでは背に乗せることはできずとも現状の大きさでも運搬に仕えないか、という考えがある。三メートルほどでも籠などを使えばある程度は人員の運搬ができる。倍の六メートルほどもあればもっとそれが可能となるだろう。まあ、公也の場合竜少女などを使わずとも空間魔法で一時的に人を収容して移動先でその扉を開くことで容易に運搬できるので竜少女の存在は必要ないだろう。

 と、移動途中も竜少女の使い道、利用方法などを考えつつ、その乗り心地にそれなりに満足しつつ、あっさりとアンデルク城に到達する。ワイバーンに乗っての移動よりもはるかに速い。竜少女はなんだかんだで竜でありその飛行能力による移動能力は高いと言うことなのだろう。


「はあっ、はあっ…………何だかと思ったわ!」

「リーリェ。どうした?」

「でかい竜が見えたか何事かと思ったのよ! キミヤ君が背に乗っているのが見えたから一応安堵したけど、それでも危険な存在かもしれないから念のため警戒してたのよ!」

「……ああ、そうか。こんなでも竜だからな」


 魔物における竜は世界最強の種族。それが自分の住んでいる城に向かって跳んでくるとなれば危機的な感覚を抱いてもおかしくはない。まあ、公也の姿が見えたし結界の反応もない、見た目ではわかりづらいが公也の乗っていったワイバーンもついてきている。ならば恐らく大丈夫なのだろうと判断できる。


「キイ様! おかえりなさい!」

「ああ、ただいまヴィラ」

「おかえりっす、師匠。もう俺は突っ込まないっすよ?」


 竜を連れてくる、竜を従える。多くの英雄譚でもなかなかないような事態である。竜を倒すと言う話はそれなりにあるが従属させるのは本当に珍しいケースだろう。初めてとは言わないが、しかし現代ではほぼ竜を従えている事態は存在していないと思われる。ワイバーンは別だ。亜竜と竜ではかなり大きな差がある。本当の意味での竜を従えるのは極めて稀、よほど強力な冒険者がとんでもなく珍しい出来事、事態で偶然天文学的な確率で従えるといったことがなければなかなかない。まあ、友人関係あたりはないとは言わなかったりするが。


「ル!」


 一声無き、竜少女が元の姿に戻る。


「ただいまなのです!」

「……お前は初めてだろ、ここ」


 大きな竜の姿をしていた存在が小さな少女の姿に変わる。竜の特徴を持っているが、基本的には人に近いその姿に変わったことにこの場にいた人間は驚く。魔物ならばそういった特殊な力を有していてもおかしくないし雪奈という前例があってもやはり竜がそうすることはかなり驚きな事態だろう。見た目的にも和ゴスはこの世界の世界間には似合わない衣装でありその服に関してもまた妙な感覚を受けているようだ。


「キイ様? また女の子を攫ってきたの?」

「ヴィラ、人聞きの悪いことを言わないでくれるか? 今まで人を攫ってきたことはないぞ。ちゃんと本人から了解を得ている。むしろそれはヴィラの方が怪しいだろう」

「まあ、そうね……でも女の子ばかり連れてきて。欲求不満なのですか? それならどうぞ私をお使いくださいませ」

「無理はするな。そもそもそういう意図で連れてきたりもしていない。俺が連れて来た相手にそういうことはしてないだろう」


 基本的にヴィローサに公也と外に出て連れて来た人員は全員女性……一応フェイは雄だが、肉体ベースであるのがウィタなので女性と考えていいだろう。まあ連れてきたと言っても全部で三人……いや、オーガンも含めれば一応四人で全員が女性ということではなく男性も含むと言うことになるのだろう。オーガンに関しては今回竜少女にインパクトを持っていかれたうえに連れてきたと言うよりは元々城に自分から押しかけて来て頼みごとをしたと言うのもあるし、向こうから来た感じであるため連れてきた対象には含めていないのだろう。

 いや、ヴィローサとしてはやはり公也が女性ばかりを連れてきていると言う方が問題なのだと思われる。一応ヴィローサは他の女性が公也の傍にいることに対して王子が多くの姫を娶るのは当然なので問題はないと考えているが、女として他の女性が想い人の近くにいるのはむかっとする、という点で不満に思う心はあるのだろう。まあそういう面を公也に向けるようなことはしないようにはしているが。無意識的に、雰囲気的に向けてしまうようなことはあるかもしれない。していたら後で自己嫌悪するが。


「えっ……えっと、竜、っすか? え? 女性っすか?」

「………………魔物なの? それとも亜人の類かしら?」

「魔物だ。これが変化したのは魔法とかじゃなくて本人の特殊能力……竜の方が本体らしいな」

「一応どちらもわたしの本来の姿なのです! 竜が基本的なベースではあるですが、人の姿が偽りというわけでもないのですよ!」

「そう、魔物……人の姿を取れる魔物なのね。雪奈さんみたいなものかしら。ええ、まあ、いいのだけど…………」

「名前は? なんてよべばいいのかしら?」

「まだ決まってないのです! ご主人様に決めてもらうことになっているのです」

「えっ? ご主人様?」

「キイ様のこと? ご主人様呼びだなんて……」

「……こいつに関しての細かい話は本人に聞いてくれ。いちいち説明するのは流石にいろいろと面倒くさい」


 公也が竜少女の説明に関して諦めた。まあ、竜少女に関しては公也は一応理解はしたもののその説明内容に公也の知識でも及ばない範囲が多い。公也でもそうだが恐らくヴィローサやリーリェでも無理、ロムニルがいたとしても理解はしきれないだろう。この世界において彼女の話す内容に関して完璧に理解できるものは恐らくほぼいない。そういう内容である。なので公也は知っている程度であり細かい解説をする気はない……というかできない。


「そう……まあ、後で話は聞くとして。名前を決めてもらうって……名前はないのかしら?」

「そうなのです! わたしはついちょっと前に卵から生まれたばかりなのです。親もいないので一番近くにいてわたしくらいに強いご主人様に従うことにしたのです。なのでわたしはご主人様のものなのです。名前もご主人様に決めてもらうのですよ」

「……そう」

「キイ様、名前決まってるの?」

「一応……返ってくる途中に考えていたものはある。こいつが気に入るかはわからないが…………」


 道中で竜を題材として竜少女の名前を考えていた公也。流石に己の取り込んだ知識から竜関連から名前に使えそうなものを探ってもなかなかいいものがなかったらしく結構な難産だったようだ。しかし一応は作ることができたが……しかし名前としては捻りが薄いのとちょっと物足りない感じがあると公也は感じている。


「ご主人様の付けてくれる名前ならよっぽど変な名前でなければ問題ないのです! でも卑猥な物とか変な意味がある者は流石にわたしでも遠慮するのですよ!」

「そういうのは付けるつもりは俺もないからな?」

「それで、どういう名前を彼女に付けるのかしら?」

「メルシーネ。まあ、女の子の姿にもなれるしいろいろな意味でちょうどいいんじゃないかな……」

「メルシーネ、なのですね! わかったのです! 今日からわたしはメルシーネなのです! 親しみを込めてメルと呼んでくれていいのですよ! ダブルセイバーではないのですけど!」

「……? 言っていることはわからないけど、メル、でいいのかしら。よろしくね、メル」

「同じキイ様を慕う存在として……よろしくお願いするわね、メル」

「ええっと、師匠の弟子として、よろしくお願いするっすメル」

「さんをつけるのです! 男の人から呼び捨ては流石になれなれしいのです!」

「ええっ!? ちょっとひどくないっすか!?」


 オチ要因とされたフーマル……まあ、年下に見えるし小さめなメルシーネを呼び捨てするのはわからないでもない。そもそも年齢でいえば生まれたばかりで赤ん坊のような者ともいえる。呼び捨てされてもおかしくはないのだが、男相手からの呼び捨ては許容しないらしい。

 ともかくアンデルク城に竜の少女、メルシーネが来てそれなりにあっさりと受け入れられる。一応雪奈という魔物だが意思疎通の出来る人型種の事例もあるからこそ容易に受け入れられるのだろう。一応竜で危険な存在なのだが、本人の気さくさ、雰囲気、そういった部分が受け入れられる要因なのかもしれない。ワイバーンを完ぺきに抑えることができるようにしていると言うのも大きいかもしれない。

 もっとも、そんな彼女が目立ちすぎているためか。オーガンが一緒に来ていることは半ば忘れられていた。影が薄い。


※私の作品では基本的な生物最強になってる竜。なおあくまで基本的に種族的に最強というだけであり例外はいろいろとある。

※女性陣ばかり増えていく……男キャラ増やしたいけど増やせる機会がイマイチない。

※メルシーネ。名前の大本はメリュジーヌ。Melusine。わりとそのまま。竜種で何かいい名前ないかと調べたところよさげな感じであったからそのまま流用。ドラゴンメイドだから仕え魔的にちょうどいい……ドラゴンメイドは竜のメイドって意味じゃないって?

※オチ要因のフーマル……よりも来たことに気づかれないというオチを持ってこられたオーガン。なおこの後もオーガンは半ば忘れられる。基本的に彼の性格の都合上ワイバーンの近くとか牧畜とかやったらそっちばかりにいることになるので。

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