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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
六章 竜谷異変
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「これで今回の問題は解決した、ということでいいよな?」

「ええ、まあ、恐らく問題は解決したのでしょう。実際ワイバーンたちが大人しくなったのは事実ですし」


 ワイバーンの谷に起きていた異変は解決した。公也がこのワイバーンの谷にいるのはオーガンに頼まれ問題の解決に来たからである。つまり大元の原因を断ち暴れているワイバーンたちを落ち着かせた以上これで問題は解決である。公也がワイバーンに掛けた大地への束縛の魔法は公也の意思で自由に解除できるので特に問題もない。ゆえにこれ以上公也がこの地にいる必要性はない。一応このワイバーンの谷はトルメリリンの領土であり敵国、他国の位置だ。あまり長居すると言うわけにもいかないだろう。


「それじゃあ戻るか。こっちのワイバーンは……」

「ご主人様ご主人様! ワイバーンに乗るですか?」

「ああ、来るときはそういう感じだったしな……お前は空を飛んでいくか?」

「それもいいのです。でも、もうちょっといい手段があるのです。あ、一応言っておくのですけどわたしがワイバーンに乗ろうとしたらワイバーンが緊張で動けなくなるのでそれはできないのです」

「いや、聞いてないが……」


 竜少女はワイバーンよりも上位の竜、格上ゆえに近づくだけでもかなりの緊張を強いる、それが背に乗っていたとすれば動けなくなるくらいに緊張することだろう。なので基本的にワイバーンに乗らずに公也の乗るワイバーンに同行して移動する……と思われていたが、どうやら竜少女側か提案があるらしい。


「わたしはご主人様のことを乗せたいのです! そこのワイバーンの背に乗せるのではなくわたしの背にです!」

「……いや、流石にそれは。見た目的に犯罪的だから」

「流石に今の状態で乗せたりはしないのですよ!?」


 少女の姿で公也を背に乗せる、というのは流石に竜少女の方も考えてはいない。一応力で考えればできなくもないが安定性もないしその状態で飛行するのも難しい。背に乗せるのではなく抱き着いてもらえば比較的やりやすいがやはり安定性には欠けるだろう。吊り下げ、というのも一つの手だが安定性はまあまあ悪くないとしても公也に負担を強いるのは竜少女の望むことではない、


「わたしにあった時の姿を思い出してほしいのです! わたしの記憶は結構曖昧ですけど、会った時はまだこっちの姿じゃなかったのですよ!?」

「ああ、そういえば……」


 竜少女の姿は本来は竜の姿が正しい。人の姿も竜の特徴を合わせた人竜の姿もどちらも彼女の本来の姿であるが、大本のベースの姿は竜の姿。そしてその大きさ、飛行における人を乗せた時の安定という面でも竜の時の姿がもっともいいだろう。


「それでは戻るのです! ちょっと離れているのです! いえ、わたしが離れるのです!」


 とっとっとっ、と公也たちから離れた場所でふわりと竜少女は姿を変える。みしり、と肉体が変化薄る音がして。ずわっと光るように肉体が生成される。今の大きさは本来の起き差の半分ほど、だいたい一メートル半くらいだったがそれが二倍のおよそ三メートルほどの大きさへと変化する。とうぜんながらそれまでになかった肉体を出さなければいけないのだからそういった変化はあってしかるべしだが……しかし、一体どうやって肉体を生成しているのか。謎は多い。もっともだからこその魔物というべきなのかもしれない。


「ルウウウウウウウ…………」


 しかし、そうして元の大きさに戻った後再び人の姿に戻る。なお、服が破れていたり来ていないとかはない。彼女の服は元々は鱗、皮膚であり体の一部である。


「ご主人様、元の姿に戻るですので乗ってくださいなのです! もうこの谷に用はないはずなのですよね!」

「ああ。そういうわけだからオーガン、俺は帰るよ」

「…………はっ! はっ、え、ちょ、ちょっと待ってくださいアンデール様!」

「……どうした?」

「その竜、その竜は! 本物の竜でしょう!? 人の姿に変われるようですし、意思疎通もできる素晴らしい竜! ワイバーンも亜竜とはいえ竜、悪くはないですがそれ以上に素晴らしいフォルムの立派な竜! 凄く、凄く羨ましいです!」

「………………えっと」


 オーガンは色々と特殊な能力を持っていたりもする。それが切っ掛けでこのワイバーンの谷にいたわけだが、それ以外にもこの地にいた理由がある。オーガンは竜好きなのである。ワイバーンもまた竜だが、亜竜である。本来の竜とは程遠い。それでも竜の一種には変わりはないのでそれを気に入りオーガンはこの地にいたわけだが……本当に好きなのはやはり本当の意味での竜。つまり竜少女の本来の姿のそれのような竜である。それを目の前にして興奮するなという方が彼には無理だろう。近づくことも探すこともできないような存在が目の前にいる。しかも意思疎通の出来る安全な対象として。


「羨ましいと言われても……」

「そうなのです! わたしはご主人様についていくのですよ!」

「なら私もついていっていいでしょうか! 迷惑をかけるつもりはありません。私にできることなら大体のことは仕事としてやって見せましょう! 動物や魔物に好かれると言う特殊能力もあります。アンデール様はワイバーンを持っているのでしょう? 普通に世話をするのもなかなか大変なはず。私ならば問題なく世話をできます」

「……そこまで問題はないが、確かにワイバーンをしっかり管理してくれる人間がいれば苦労はしないが」


 現状公也たちの所にいるワイバーンは公也かヴィローサが世話をする形だ。他の人間だとワイバーンたちを御することができない。そういう点では確かにオーガンがいるとかなり世話が簡単になると思われる。


「……ご主人様? もしかして連れていくつもりなのですか?」

「お前には悪いと思うが……こっちも事情的に切迫していてな」

「そうなのですか……ならしかたないのです。ついてくるのを許すのですよ! わたしに見とれるのも、興味をそそられるのはいいですけど、でもわたしはご主人様のものなのです! みる以上のことは許さないのです! 世話も別に必要ないのですよ!」

「ええ、それで構いません!」

「………………この谷のことはいいのか?」

「元々勝手に住んでいただけですので問題はありません。トルメリリンは故郷ですが、別に家族もいるわけではないですし……」

「そうか。まあ、いいのならそれでいい」


 そういうことで竜少女に加えオーガンも一緒にアンデルク城に戻ることになった。確かに城における仕事ができる人員が増えるのは良いことだが、変わった特徴の魔物に妙な趣味を持つ竜好きの世話係の二人が増えると言うのは問題はないのだろうか。



※竜形態の大きさは主となる大きさは三メートルほど。ただしもっと大きくもなれるし少しだけなら小さくもなれる。流石に手乗りになるのは無理だし大きくなるにも限度はあるが基本的には自由、可変である。

※なんなのこの竜好き……ということでオーガンさんが仲間になるらしい。動物に好かれる特殊能力持ちゆえにワイバーンの世話も牧畜も思いのまま。まあワイバーンは竜少女の存在のおかげで力で言うことを聞かせる必要もなく楽だけど。

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