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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
六章 竜谷異変
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9



 一方は空を駆ける。まるでその場に足場があるように空を踏みしめ駆け、跳び、時に落ちる。常に踏みしめる空中が足場になれば下に降りられなくなる。そのあたりの調整は魔法に対しての意識や魔力の調整でどうにかなるようだ。常に自分自身にかけている魔法なので魔力によって相応の調整ができる。

 一方は空を飛ぶ。翼による飛翔ではないため風による影響は受けず、重力による影響は多少受けつつ、空気による干渉もそれなりにありつつも、基本的にはどういう移動も自由自在の飛行である。ゆえに空を駆ける相手にも対応しやすい。何よりその相手は駆けることはできても止まることはできないのだから。


「走らなければ機能しない……まあ、止まってる余裕なんてないからいいけど」

「ルウウウウウウウウッ!!」

「っと! 体当たりもやってくるようになったな! ブレスだけなら防ぐのは簡単だっていうのに……いや、どっちにしても面倒なことには変わりないか。あれはあれで相手の損耗が少ない気がする。防ぐだけでも結構大変だっていうのに……ま、現状こっちが有利だが」


 公也と竜少女の戦闘において優勢なのは公也の方だ。竜少女が空に、公也が地上にいた時点では明らかに竜少女の方が優勢だったが互いが空中にいる時点での戦闘は空中にいられる手法の違いがあるにしても、公也の方が優勢だ。自由性は竜少女の方が高いのだが、身体能力に合わせ活動しやすい公也の方が速度としては速い。飛行することによる空中移動は自由性の高さ、空中を移動する速度としては悪くないが、地を駆けるように空中を移動するものよりは遅い。飛行にかけられる移動の力に対して大地を踏みしめ跳躍する力の方が強いのが理由だろう。まあ移動速度が速くても移動範囲が狭いためそこまでの差は見えないが、ともかく公也と竜少女の戦いは公也が空中に上がってきたため公也の優勢となった。


「渦巻く風よ彼の者を飲み込め、トルネード!」

「キュラアアアアアッ!?」

「はっ!」

「ルウウアアッ!」


 魔法も交えつつ、公也は竜少女に斬りかかる。魔法によるダメージはないが風による魔法は竜少女を飲み込みある程度その行動を阻害している。それゆえにその隙をついて攻撃できる。とはいえ、いくら武器の攻撃性能、自身の強化を行っても竜の鱗を容易に突破できるわけではない。今は人の姿をしているが根本的には竜、いやそもそもどちらが本体かは不明だ。生まれた時点で竜だったから竜である可能性は高いが。

 人の見た目でもその身体は竜の鱗の防御を持ち、竜の強靭で強力な肉体を持つ。ゆえに簡単に攻撃が通りそうに見えてあっさりと攻撃を受け止められてしまう。まあそれでも攻撃性能が上がったおかげでその防御をある程度抜け、斬ることができている。斬り捨てると言うことほどはできないが、


「ラアアアアアッ!!」

「っと! 攻撃手段、実は少ないよな。もしかしてこっちの方が弱いんじゃ……」


 竜少女の攻撃手段。それは体当たり、ブレス、そしてその腕を振るい引っかくようにする、そんな少ない攻撃手段しかない。一応尻尾もないわけではないが、人間の姿をしていると尻尾はそれほどの長さではなく、また自由な攻撃性能を持たない様子である。本来の竜の姿の時は牙による攻撃もあるだろう。攻撃力はともかくそれなりに大きめの体ゆえに体当たりも有効打になりやすい。まあ、どちらにしても実は攻撃手段は多くない、竜の姿の時の方が若干多い、くらいの話になるだろう。


「まあ、どちらにしても……叩き伏せる! 空中だとあまりうまくいかないけど、なっ!」

「ルウウウウッ! キュルウアアアアッ!」

「はっ!」


 空中での体のぶつかり合い、しかしその痛打は一方的。公也の方は攻撃を防ぎつつ、特に傷を負うことがない。傷を負っても補填により勝手に回復し、体力的にも無尽蔵に近い。まあ一応限度はあるが、小規模な戦いで尽きるようなものではない。一方で竜少女は体力的にはかなりの体力があると言えるが、これでも生まれたばかり、その上傷を負わされその回復や短時間とはいえ血を流すことによる消耗がある。公也と違い竜少女の方は傷の回復は多少できても肉体の損耗に関しては看過できるものではない。その肉体の量は生まれた時点の肉体、つまり公也が最初に早退した三メートルほどの竜の体の量に依存する。つまり消耗していけばいくほど竜少女の方が不利になる。内在する力としては公也と同格でも肉体自体はその大元の肉体に依存する。その点が公也と竜少女の違いである。

 そして消耗していき、行動能力も徐々に弱っていく。攻撃の冴えは落ち、本能的な反射もかなり弱まり……その翼に公也の剣が届く。


「そこだっ!」

「ルッ!?」

「墜ちろっ! 吹き飛べっ!」


 魔力によるごり押しで地上に向けての風の魔法を発動する。ただ吹き飛ばすだけ、だが今の竜少女は翼を大きく傷つけられ飛行能力の半分ほどを損なっている。軌道修正、飛翔による大地への衝突回避を図ろうとする者の、片翼の飛行能力だけでは不可能。そのまま風の勢いに吹き飛ばされそのまま大地へと叩きつけられる。声にならない声をあげ、竜少女はそのまま叩きつけられたまま地面に倒れ伏す。動き出す様子を見せなかった。


「………………ふう。流石にどうにかできたか。まあ、まだ倒したというだけで危険が去ったわけじゃない……ここで殺せばすぐに終わる話なんだが」


 現状意識を失っている竜少女……今は竜の特長は幾らか残っているものの、より人間らしい形態をしている。幾らか体の各部に残っていた鱗は消え、爪なども通常の状態になっている。折れたとか剥がれたのではなく人化がより進んだと言った感じである。今ならば意識を失っている彼女容易に殺すことができる……もっとも殺すつもりであれば最初から殺していたわけだが。


「……とりあえずまた暴れ出した時のための対策を。今度暴れ出したら流石に生かしたまま倒す、というわけにはいかない……か? まあそもそもどうして生かすつもりにあったのか、という点も俺の本能的な感覚が理由だからな。別に特別何か理由があると言うわけでもないし」


 公也が彼女を生かしていたのは殺してはいけない、勿体ないという感覚に由来するもの。しかしこれが最終的にずっと敵対するのであれば生かして置く意味もなく始末するべき相手となる。それがどうなるかは、今後彼女が起きた時どういう反応をするか、それ次第だ。


「……檻だな。大地よその形を繋ぎ空間を塞ぐ檻となれ」


 簡易的に大地を檻の形に隆起させて繋ぎ竜少女を閉じ込める檻を作る。もっとも本気で竜少女が暴れれば確実に破壊されるものである。しかし、一手間はかかる。


「二重、三重の檻となりて」


 それを三つ作り手間を三つにし、相手の行動から公也が動くまでの時間を作る。その準備を終え、彼女が起きるまで待つこととした。



※倒す、殺すだけなら実は簡単。暴食を使わないにしても魔法で超強力な攻撃を魔力でごり押しすれば不可能ではない。

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