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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
六章 竜谷異変
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8



 空を飛ぶ能力を持つ生物というものは戦闘を行う場合基本的に厄介な物である。


「っと! はっ!」

「ルウウウウウウウウッ!」

「……一撃離脱は厄介だな。反撃できるタイミングが相手が攻撃してきた時のみか。まあ、剣に拘ればそうなると言う話だけど」


 近接戦闘をメインとする場合飛行する生物は一方的に攻撃タイミングを選べる。空を飛んでいると基本的に攻撃が届かない。そして地上にいる限り相手に近づいて攻撃すると言う手段を選べない。つまり相手側が有利な状況ということになる。もっとも遠距離攻撃手段があればまだなんとでもなるが、それでもやはり相手の方が優勢になるだろう。地上にいる生物は地上しか行動できない。横方向への移動しかできず縦、つまり上への移動ができない。そして空を飛ぶ相手は上下左右自由な移動ができる。自由度というものが大きく違う。地上にいる生物も一応跳躍で空中にいる相手に近づけなくもないが、自由な移動ができるわけではないので結局相手側が有利だろう。

 だが公也にその辺りのことを考える必要はない。公也は魔法が使える。遠距離攻撃も問題なく使える。


「風よ渦巻き球となりて吹き飛ばせ」


 風の球を生み出しそれを飛ばす。しかし竜少女には当たらない。空を縦横無尽に飛び回る彼女に直線的な攻撃はなかなか通用しにくいだろう。


「速度を上げる……いや、範囲攻撃がいいかな。渦巻く風よ……いや、空気、大気よ落ちよ、其れは大地に向かう風の圧力!」

「キュルァアアアッ!?」


 上空から風が下へと落ちる。空を飛ぶ竜少女がその風の力で強制的に大地に向けて押し出される。それに驚いた様子を見せるが直ぐに体勢を立て直す。地へと押し出す圧力に抵抗し力技で再び上に。


「キュルル…………」

「……様子見されてるな。さて、どうするか……ワイバーンと同じで大地に縛り付ける、そうすれば行動を阻害できるか。風よ縛り束縛せよ、其れは拘束、大地に結ぶ綱、汝は重力に囚われる、翼を奪え、飛ぶ力を払え、彼の者は大地の囚人なりて! グラビティプリズナー!」

「キュルアアアアッ!?」


 風の力が竜少女にまとわりつく。そしてそのままその身体を大地へと引きずりおろそうとする。しかし引きずりおろす力に竜少女の力が拮抗して中々降りてこない。そしてそのまま竜少女が魔法に対しての抵抗を見せる。


「キュルウウウウウウウウアアアアアアアアアアアッ!!!」

「っ……! 気合? いや、何かすごく気を放っていたと言うか……咆哮とかの時の威圧に近い。魔法が無効化された? いや、弾かれた、か。魔力を放出して無理やり魔法を吹き飛ばした、あるいは竜気みたいなものか? まあ竜気と言ってもあるかどうかもよくわからないものだけど……しかし、魔法を弾かれるとなると厄介な」


 公也の魔法による束縛を竜少女は吹き飛ばした。魔法という特殊な力に対し竜少女が己に内在する力を放出してその作用を吹き飛ばした……かなりの力技である。魔法などの技術以上に無理やりなものだ。竜少女が内在する力はかなりのものであると考えられる。孵化するために集めた地脈の力、谷に住む生命の力を奪いそれらも集まっている。膨大な力を持っている竜少女なら多少の魔法くらいならば力技で払い飛ばせるだろう。もっともそれに必要とする力は大きくなる。魔法という特殊な技術で起きた現象に対し、彼女はただ力で無理やり払い飛ばしているに過ぎない。それは効率としてみればあまりよくない方法と言える。ずっと同じやり方で魔法によるちょっかいをかければいずれは力を失い倒すことはできる。まあそれを行うのはあまり現実的ではないが。


「ここまで力のある相手とやり合うのは初めて……か? あの時の悪霊と比べてもまだこちらの方が強いな」


 かつて戦った群体悪霊、あちらも力としては結構な物だった。少なくともまともに相手をするならば魔法使いでも結構厄介な相手だったことには違いない。とはいえ、今戦っている竜少女よりは力としてははるかに劣る。そして公也はここまで強い存在とはあまり戦ったことがない。まあ強いと言っても空を飛ばれて厄介というだけであり、肉弾戦ではそこまで極端な強さを見せているわけではない。一応放浪魔のドラゴケンタウロスも中々に強力な相手だったが、それと同格……くらいに見ることはできるだろう。強さとしては公也と竜少女はほぼ同じくらい、と見れる。まあ瞬発力だと竜少女の方が上に見れるだろうか。その時その時の状況次第でもある。


「……このままだと埒が明かない。相手と同じ舞台に上がるしかないな」


 地上からの攻撃、空からの攻撃。公也は魔法を用いて遠距離攻撃しかできず、竜少女は一撃を入れてすぐに空に戻る、基本的にはそのやり取りの繰り返し。一応考える手立てとして近づいてきたところに束縛の魔法打ち込むなどの手段を考えなくもないが、相手もなかなか本能的な動きを見せ避けたり準備をしているところを警戒してきたりする。まあそれでもずっと睨み合う、というわけにもいかない。相手も動いてくるとは考えられる。問題があるとすれば相手がどこまで公也を相手してくれるかだ。

 公也と違い相手は逃げるという手段を選べる。もし公也にかなわない、相手をしていられないとして逃げだしたら其れはそれで厄介だ。これだけの強さを持つ生物を野放しにするのも危険すぎる。また、地脈から力を得るという手法を卵の時にしていた竜少女が同じことができないとも限らない。下手にまた力を得るようになれば被害が馬鹿にならない可能性もあるし強さも上がる可能性がある。ゆえにできればここでどうにかしたいと言う考えが強い。


「大地の束縛は我に通ぜず、風を足場に我の体空に在りて、空を駆け風を歩み空に我が身を躍らせる。エアーウォーカー」


 空を歩むための風の魔法を使い、それによって空を駆けることができるようになった公也。


「風よ纏え、剣の刃となりてその鋭さを上げよ。剣よ硬化せよ、その身あらゆるものを切り裂く刃にて。纏えわが身に風の力、速を上げ振るう力の鋭さを高めよ」


 風による強化、剣自身の強化、己の戦闘力を強化して公也は竜を空より地へと墜とさんと一気に駆けだした。竜少女へと公也は一気に近づく。それに対し竜少女も応戦する。


「キュルウウウウウウウアアアアアアアアアッ!!!」

「っ! 風よ防げっ!」


 魔力により強引に強力な風の防護を作る。その防護は放たれた炎を防ぎ、公也の左右へと逸らしていく。


「人間の姿の時でもブレスは使えるのか……」


 竜のブレスはそもそも特殊な能力、集束と放出。集める力と放つ力。形態に寄るものではなく、体内器官に影響しない。人の姿であろうとも問題なく使える。ただ、そのインパクトに関しては中々衝撃的な光景だったと公也は感じた。



※叫びが変わってる。人なのか竜なのかはっきりしろい。

※強さ的に主人公と竜少女が同一なのは出力の関係。総合的なエネルギー、出力元、出力できる分野などを考慮すれば主人公のほうが強い。単純に肉弾戦なら若干竜少女のほうが強いだろう。ただし耐久力の面で主人公が勝つので持久戦で負けると思われるが。

※竜の姿だろうと人の姿だろうとブレスは使えます。生体によらない特殊能力なので。そもそも口から出す必要性すら本来はないはず。本能的、感覚的な問題でそうするし最大威力になるのが口からなので口から出すけど。

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