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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
六章 竜谷異変
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6


 まず公也は剣を抜く。別に直接の肉弾戦になっても公也が死ぬことはないができる限り死ぬような危険を減らして戦いたい。一応損害を補填するのはもともと公也が持ち得ている今まで食らった生命の肉体や生命力によるものだ。それは公也自身の力でもあり無駄に消耗するのはもったいない。そもそも肉弾戦で戦う意味は薄い。公也の力自体はかなりのもので竜と真っ向から戦っても恐らく戦えるが、根本的な地力の違いがある。生命体としては人より竜の方がはるかに強靭である。肉体で戦うよりも武器を持って戦う方が人間としては正しい。人間は脆弱なのだから。

 もっとも、今回公也の戦う相手は竜。竜相手に普通の武器を持って戦っても勝てるかと言われれば難しいと答えざるを得ないだろう。とはいえ、公也も決して弱いわけではない。竜相手に真っ向から戦い勝てない道理もない。


「風を纏え!」


 剣に魔法による補助を加え切れ味を上げる。竜の鱗相手に些細な効果でしかなさそうだがそれでも何もしないよりましだろう。


「キュラアアアッ!」

「うおっ、とっ! 以外に機敏な!」


 竜が公也に対して飛び掛かってくる。大地をかけての突進ではなく一気に飛びついてきたものだ。竜は蜥蜴ではない。基本的に竜の体というのはあまりスマートな体つきではないものである。もっともこの竜に関しては若干太った感じがないものの、手足に対して体の方が若干大きく感じるものであるだろう。少なくとも蜥蜴のような機敏さは出せない。しかし実際に公也に襲い掛かる様子はかなり機敏だ。


「キュルル……キュラッ!」

「っと。方向転換は遅い……飛び掛かるのだけは機敏だな。翼が動いてる……足で跳びかかっているわけじゃないのか」


 竜の動きはその翼による補助があってのもの。竜の飛行は通常の生物の飛行とはまた別物である。竜の飛行はワイバーンもそうだが、その翼による特殊能力だ。翼に魔力を宿しその力を発揮し飛行する。浮かぶともまた違い飛行する力だ。それゆえに翼を破壊されれば竜は飛行能力を損なう。ある程度は残るし翼も自然回復するが、それでも一時的には動くことができるだろう。


「翼を切り落とす……できるか? 飛膜あたりはどうとでもなりそうだが……根元から切り落とすのはいい、か?」


 竜の翼を切り落とす。それに関して公也はどうするか迷う。もっともそもそも切り落とすことができるかどうかはまた別の話なのだが、斬り落とせば飛び掛かる動きの機敏さが損なわれかなり戦いやすくなるだろう。仮に竜をどう扱うにしても斬り落として起きる問題は恐らくない。


「はっ!」

「キュウウウッ!!」


 公也が剣を振り、纏う風を開放し斬撃を飛ばす……器用な魔法の応用の一つ……なのかもしれないが、その一撃は翼に傷を与える程度で斬り落とすには至らない。もっともそれだけでも十分飛行を阻害する効果はある。痛みを感じ竜が悲鳴を上げ、怒りを眼に宿す。元々敵対的だったが余計に敵対的になった。


「先に攻撃してきたのは、そっちだろ! さすがに鱗はそう簡単に抜けないか!」


 公也が剣を振るい竜に切りかかる。しかし鱗に弾かれ攻撃は通らない。隙間を狙うのは公也はできなくもないものの、この竜の鱗の隙間はかなり細く狭い。意図的に相手がそうして鱗による守りを上げている……生えている鱗の操作ができる竜のようだ。まあ、そういう種ももしかしたらいるのかもしれない。


「大地よ隆起し彼の者を突き上げよ!」

「キュラアアッ!?」


 どんっ、と地面が突きあがり竜が吹き飛ぶ。しかし相手に対してのダメージはない。


「腹ならどうだっ!」

「キュルウウウウウウウウッ!!」


 残念ながら公也の攻撃は鱗の防御力が低い腹に放っても通用しなかった。中々に竜の肉体は強靭、鱗の守りの弱い部分もかなりの防御力を持つらしい。もっとも、腹は流石に竜も痛みを感じるくらいの威力として感じたらしい。またも悲鳴を上げている。


「キュウウウウウウウウウウウウウウウウラアアアアアアアアッ!!!」

「風よ空気の流れを逸らせっ!」


 吹き飛んだ竜は飛行し空中で行動を制御する。そして炎を吐いてきた。多くの竜はブレスを吐くことができる。一応ワイバーンも空気弾を放つことはできるが、竜の放つブレスとはまた別物に扱われる。竜と呼ばれるような存在……いわゆるドラゴンの類だが、竜、ドラゴン、龍はそれぞれ別の存在として扱われる。もっともそれを認識できる存在はそれほど多くない。そもそもほとんどの世界において竜とドラゴンは同種として扱われるだろう。龍は一応形態が違うし生物というよりは神のような扱いの世界もあるのでそちらはまた厳密にはどうかはわからない。まあ、そのあたりはともかく、ワイバーンはドラゴン、この竜は竜である。それはブレスの性質の違いによるものだ。それができるからこそ竜は竜と呼ばれる、あるいは竜と呼ばれる存在の特殊能力がそれである、ともいえる。竜種はそういった特殊能力が他の種よりも多く、強靭な肉体に高い耐性を誇る鱗、そして場合によっては膨大な魔力を持つ。それゆえに生物において最強の種として扱われることが多かったりする。

 この竜は特に他の竜よりもさらに強大な存在である。なにせ生まれたばかりでこれだけの戦闘能力を持ち、そもそも生まれるまでにワイバーンの谷の生命から力を奪い地脈の力ごと吸収している。その力は公也をもってしても簡単に倒しきることができないくらいのもの。

 もっとも生まれたばかりというのは竜にとっては最大の弱点だ。戦闘経験もなく、本能的な戦いしかできない。また成長する時間がなく、生まれた時点の力の身で戦っている。ゆえに公也に一方的にやられている。少なくとも拮抗以上に戦える力を持っているのに、そうなってしまう。


「キュラアアアアアアアッ!」

「……はあああああああっ!」

「キュルッ!?」


 威圧。竜種はその強さゆえに多くの生物相手に恐怖を与えることができる。それは多くの場合方向に乗せて放たれる。もっとも公也に対して使ったそれは公也には通用しない。格下、竜よりも実力がかなり下ならば通じるが竜に匹敵する者にそれは有効にならない。さまざまな手段による攻撃を竜が放っているが公也は逆に威圧し返し、竜が怯む形となった。


「キュルル……」

「どうした? その程度か?」

「キュラアアアアアッ!」


 未だに竜は負けを認めるつもりはないようだ。公也が少し煽ると少々見せていた怯えを消し敵意をむき出しにする。


「キュルルルウ!」

「……なんだ?」


 そして変化が訪れる。このままではどうにも如何し難いと感じたか、竜が特殊な変化を見せた。ぎしりぎしりとその肉体が変貌していく。


「……人化? いや、完璧に人の姿になったわけじゃない? っていうか雌かこいつ」


 人の姿。竜種の中には人以上の高度な知能を持ち、時には人に交じり人の社会で生きる竜もいる。そんな竜のように人の形をこの竜がとった。もっとも、それは完璧なものではなく。竜の特徴を幾らか残した人化形態であった。



※主人公の根本的な力の総量、ベースとなる大本は相当なものである。しかしそれを発揮する規格、肉体ベースは人間のもの。発揮できる力はその規格に基本的には合わせられる。もっとも規格以上の力を発揮できないわけではない。

※私の作品における竜のブレスは集束と放出の性質を持つもの。風のブレスは空気を集め放つ、炎のブレスは塵と熱を集め塵を燃やして炎のようにして放つ、あるいは熱線や光線を放つなど。氷のブレスは集める力で熱を集めることで自身の能力射線上の熱量を奪うことで低温にすることによるもの。毒のブレスなどは毒を体内で発生する竜などによるものでちょっと別枠。雷のブレスなども電気を発生し集め放つとかそういうもの。一応そういう設定が私の作品の竜のブレスであり、そうしたブレスを放てない存在は竜ではなくドラゴンという呼称になる、という設定。ただしそれを厳密に設定している世界はあまりない。

※通常の竜は人の姿に変化することはできない。特定の竜種の特殊能力ならば無理ではない。今回の相手に関してはその竜種の特殊能力というよりはこの相手の特殊能力。そもそもこの世界ではこの相手以外に同じ種の存在はいない。

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