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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
六章 竜谷異変
179/1638

3



「グラアッ!」

「グルウッ!」

「グオオオオッ!」

「ああ、ほら、落ち着いて! 落ち着くんだ! 大丈夫だから! 問題ないから!」


 暴走していたワイバーンたちを宥めようとオーガンが手を尽くしている。もちろん公也による魔法の効果で彼らは自由な行動ができず大地に拘束された状態になっているため多少外部から自分たちに友好的な様子を見せる存在であったとしても流石に大人しく言うことを聞くのは難しいだろう。そもそも暴走状態にある彼らは元々話を聞くようなことがないため、拘束されていれば余計に話を聞くことはなくなるだろう。

 オーガンが多少宥めたところでワイバーンたちには効果がない。そもそもワイバーンが暴走する原因は何なのか、それをどうにかしなければ宥めたところで暴走が収まることはないだろう。先に根本的な原因を解決するべきである。


「この者たちに影響を与えるものを遮断せよ」


 曖昧な詠唱、内容は多少明確なものであるがかなり大雑把な詠唱である公也の魔法、かなりの魔力を消費し作り上げた外部からの影響を遮断する結界……仮にワイバーンたちが何者かの外部からの干渉により暴走状態にされているのであればこれである程度は緩和できるのではないかと思っている。まあ絶対にそうできるとは限らない。公也の使う魔法が厳密な意味で成功しているかも不明であるし、公也の魔法による防御を抜けて影響を与えてくる可能性もある。しかし、仮に外部からの影響があるのならば、多少意味を持つ。

 しかし、そういった魔法を使ってからオーガンが宥めたところでワイバーンたちに影響がでていない。そもそも影響を受けていたのは暴走していたワイバーンたちだけではない。体調の悪いワイバーン、周囲に存在する動植物、オーガン、ワイバーンだけに影響を与えるものではない。そもそも範囲で見ればワイバーンの谷全体に影響を与えている。それだけの大規模に干渉するような影響力のある魔法を行使したのならばそれだけで魔法を使える人間ならある程度影響を感知できるだろうしそれだけのことをする魔力がどれほど必要にあるかを考えればまずこれだけの規模の物事を魔法で行おうとするのは不可能であると魔法使いならば断言するだろう。少なくとも公也のやっているような詠唱での魔法行使では恐らく不可能、そもそも公也程の魔力があってもこの規模の影響を与える魔法は長く使えないし使えてもそこまで大きな影響を与えることはでき奈だろう。つまり魔法ではない、魔法ではありえない、それくらいの大規模に対しての大きな影響のある干渉なのである。


「ダメか」

「ダメみたいです……しかし、やはり一体なぜこのようなことに……」

「それがすぐにわかればいいんだが。影響範囲に関してはどんな感じになっている?」

「判断基準がありません。まず最初にどこからどこまでが今回のことの影響にあるのかを調べたほうがいいでしょう」


 そもそも大雑把にワイバーンの谷全体に影響が及んでいる、と公也とオーガンは考えたがそうではないかもしれない。ワイバーンの谷全体ではなくどこからどこまでと範囲が決まっている可能性があるだろう。仮にそうであれば中心地点を特定できるかもしれない。

 そう考えてワイバーンの谷を公也たちは探索する。またまだ暴れているワイバーンの動きを封じたりしながら他のワイバーン、あるいは動植物などへの影響も確認する。影響を受けているのはワイバーンだけでないのならばワイバーンのような暴走状態に対して他の動植物も陥っている可能性がある……まあ植物の場合は影響受けたところで特に気になるものではないだろう。

 そうして確認してみたところ、動植物に対する影響はそこまでではない。影響の規模でいえば、ワイバーンが強く影響を受けその次で植物、一般的な動物に対しての影響はそこまででもない。まあワイバーンの谷にはそこまで動物の類は多く生息していないため簡単に判断できるものでもないが。


「……どうだ?」

「弱っています。なんというか、力を失ったようなそんな感じに見えますね。少なくとも病気によるものではないでしょうが……」

「…………」


 弱っているワイバーンはただ疲労したかのように、虚弱な状態になって動く力がないと言った感じに見える。病気と言った何らかの影響によるものではなく自然にそうなったかのようだ。しかしこのワイバーンの谷でそこまで疲労して動けなくなるようなことはあまりない。ワイバーンたちも無駄に動き回り体力を消費するようなことをしない。このワイバーンの谷はワイバーンが住みやすいような環境である、といった感じであるようにワイバーンにとっては居心地がよく体力消費などもある程度は自然に回復する。これは普通に休んで回復するものとはまた少し違う。この谷特有のワイバーンへの良い影響力である。

 だからこそワイバーンの谷にはワイバーンが住んでいるのだろう。しかしその影響力が無くなっている。自然な回復すらしない。いや、むしろ流れて行っている、と言った方がいいのかもしれない。今暴れているワイバーンたちはそういった影響を感じているためあらがってのものか、あるいはその影響にあり暴走するに至ったか。直ぐに体力のすべてを失うほどではなかったゆえに。


「何故ここまで弱った?」

「それがわかれば苦労しませんよ。少なくとも普通はこのようにはなりません」

「少なくとも他の暴走しているワイバーンたちの影響と同じ何かによるものか……個体差があるのはなんでだろうか」

「気性の差、あるいは素質の問題……とか?」

「個々のワイバーンの差によるもの、か。ありえなくもないだろうけど……そもそも何が原因なのか。とりあえずこの影響の大小である程度範囲は絞れるかんじではあるが……」


 現状のワイバーン、あるいは植物に対しての影響によってこの影響の大本の場所に関してある程度の範囲に特定することはできている。ただそれでもやはり大雑把な範囲だ。そもそもワイバーンの谷全体を渡り歩くには流石に範囲が広いし高低差も複雑、暴れるワイバーンたちもいてオーガンが一緒の状況ではなかなか大変である。まあ、それでも一応の特定はできたので公也はそちらに向かいその近辺の探索で原因を確認するつもりである。


「……しかし、あそこを登るのか」

「あそこですか……あのあたりはワイバーンですら近づかない場所なのですが」

「…………絶対それって何かあるよな?」

「まあ、恐らくあるでしょう。ないはずがないと思います……ワイバーンすら近づかない何かがある、そういうことですよね」

「それが原因だったら……どうするべきだろうな」


 公也たちが原因のある場所として特定出来た場所。それはワイバーンの谷の中でもワイバーンたちですら近づかないような特殊な場所。谷と呼ばれる中で山としての形を作っている場所。その頂上付近……影響範囲から推定された原因のある場所はその地点付近ということになった。その場所に公也たち……いや、公也は向かう。流石にオーガンはいろいろな意味で連れて行きづらいゆえに。



※影響度合いはワイバーン>他の植物>他の動物>人間


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