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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五章 城生活と小期間の旅
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「そういうことでトルメリリン……いや、正確にはワイバーンの谷に向かう。暫くは戻れないからよろしく頼む」

「…………いえ、まあ、私は良いのだけど。クラムベルト君、怒ったでしょうね」

「ああ。まあ……しかたないかな」

「あまり気にしなくてもいいよ。キミヤ君が動く限りでは特に問題にならないだろうしね。それよりも、ワイバーンの谷で得られる素材を採ってきてもらえると嬉しい」

「今回は難しいかもな。そもそもその素材が枯れている危険もある……現状どうなっているのかわからないし」


 ロムニルは安易に素材の回収を、と言っているが今回の場合素材を得るのは難しいかもしれない。今回の異変はワイバーンの谷全体に起きている異変であり、その異変の結果様々な物に影響が起きている。ワイバーンだけでなく動植物にもいろいろな悪影響が起きているとオーガンは語っていた。なので素材の回収はできない可能性がある……まあ多少は入手できるかもしれないが。


「キイ様、私ついていきたいのだけど!」

「……ヴィラにはここを守ってもらいたい。少なくともこの城の守りが充実するまでは」

「結界が守ってくれるのに……」

「向こうに行くとヴィラが危険な状況になるかもしれないからな。守りきれる保証もない……ワイバーン相手ならヴィラの能力も効くだろうけど、絶対的な効果があるわけでもない」

「……納得いかないけど、キイ様が言うなら私は受け入れます。ここで、お待ちしてますから」

「ああ、頼む」


 今回もヴィローサはお留守番、最近彼女は公也と一緒に入れず不満たらたらな状態である。しかし、まあ公也の言うことならば仕方ないと彼女は受け入れる……ヴィローサに関しては公也に従順なのでどんなに理不尽で従うのは本当は嫌だが従わざるを得ない命令をしたとしても問題はないだろう。だがまあ、彼女の精神的な物を考えるなら後でケアする方がいい。


「今回は俺も駄目っすか……」

「そもそもワイバーンで移動するんだ。乗れる人間は俺かヴィローサくらいだぞ」

「あ、それもそうっすね。俺はいつも通り魔物退治をやっていればいいっすか……」

「食料もいるだろうからな……まあ、今は植物成長の魔法もあるからそこまでではないかもしれないが」

「雇い主様ー。お出かけですかー?」

「……雪奈? それにペティエットも」

「……城に宿ができた。でも狭い。大きくしてほしい」

「ああ、うん、ペティエットのそれはまた後でな……」

「宿ができました! でも、狭いです! 城のもっと広い区画使いたいですけど他の人が使ってるのでできません! 雇い主様何とかしてー!」

「ああ、うん、雪奈のそれもまた後でな……」

「……まあ、頑張ってくるっすよ師匠」

「ああ」


 ペティエットと雪奈に頼まれ城に関することをやらざるを得ない……今からワイバーンの谷に向かおうとしている公也に話すべき内容ではない気がするが、まあ気にしないでおいたほうがいいだろう。公也に頼みごとをしている二人を妙に見開いた眼でヴィローサが見ているが気にしないほうがいいだろう。


「………………」

「リルフィ? なんでここにいるんだ?」

「あ、その……一応皆様がお見送りしていますので私もお見送りをしたほうがいいかなと……」

「別に必要はないが……まあ、そう行動してくれたのは感謝する」

「いえ……」


 アリルフィーラは本来表に出ないほうがいいのでむしろ見送りには来ないほうがいいのだが。まあ見送りに来たと言うこと自体には公也も感謝の意を示す。その心遣いに対して。


「……………………私だけすることがない……役立たず…………」

「リルフィは大人しくしておいてもらえるか? 色々な意味で勝手に出られると困るから」

「……そうですね。しかたありませんね」


 微妙に寂しそうに………………しかしどこか嬉しそうにアリルフィーラはつぶやく。


「役立たずは大人しく閉じ込められています。わかりました」

「………………」


 アリルフィーラの発言で微妙に周囲に沈黙が降りる。もっとも彼女はこれを悪い意味で言ったわけではないのだが。まあ、どういう意味、どういう意図でそういったのかは本人にしかわからないことである。ヴィローサは一応この言葉に毒が含まれていないことが理解できた。だから嫌味を言っているわけではないようなのでそこまで反応はしていない。

 そしてその発言の後アリルフィーラはアンデルク城の内部に戻った。


「…………後でフォローしておくわね」

「いや、必要はないと思うが」

「え? でも……」

「あまり気にするな。リルフィはそこまで気にしていないと思うから」

「そうなの?」


 アリルフィーラの抱えるものに関しては公也もよくはわかっていないが、悪意があるかどうかに関しては公也はなんとなく察している。リルフィがどことなく嬉しそうに…………公也が何度か見た歪みが見える喜悦を見せていたのがわかったからである。何がそんな彼女の琴線に触れるのか。アリルフィーラに関してもまた後で色々と考えて対応しなければならないなと公也は思った。




「とりあえず行きましょう」

「ああ……っていうかワイバーンに乗れたのか」

「まあワイバーン乗りと言えるほどの強さはありませんがね。彼らに頼って、力を貸してもらってようやく乗れるくらいですが」


 オーガンは公也が一般人というくらいに実際に力がない。戦闘能力という点ではほぼ無害に等しい。一応ワイバーンに乗る程度の身体能力は持っているがその程度である。まあそれでもワイバーンを含む多くの動物や魔物と戯れて耐えきれるだけの身体能力はある。というよりそれだけはどうにか鍛えないとここまでやってこれなかったのだから仕方がない。


「ワイバーンの谷……原因はどのあたりだ?」

「それがわかれば苦労はしませんよ……ただ、状況から想定はできる可能性はあります。影響範囲が推定できれば」

「……できるか?」

「わかりません。とりあえず行ってみないと……」

「そうだな。とりあえずまずはワイバーンの谷に向かい色々見て回って原因を特定しないと…………ただ、原因に心当たりになるような事象となるとなんだろうな」


 周囲一帯に影響を与えるような何か。一番考えられるのは魔物か、あるいは何らかの特殊能力を持つ生物の発生。しかしそれでもやはり考えられない事態である。魔法を使うにしても少々異常に思える。


「ああ、そうだ」

「どうした?」

「ワイバーンの谷についたら恐らくワイバーンが襲ってくると思いますが……殺さないでくださいね」

「…………無茶を言う」

「アンデール様ならできるでしょう」

「まあ、恐らくな」


 むしろオーガンがトルメリリンではなく公也を頼ったのはそこに理由があるのかもしれない。オーガンが公也に出会った時公也はワイバーンに囲まれていた。そのワイバーンを殺しもしていないし、公也は襲われて殺されてもいなかった。少なくともワイバーンに対して脅威になる能力があるのは間違いないく、またワイバーンをむやみに殺すような性格でもない……であれば公也がワイバーンを生かしたまま残してくれることを期待できる。まあ、それも確実なものではないが……下手にワイバーンに対抗できないトルメリリンを頼るよりははるかにましな選択だったのだろう。


※他国の姫さん拾ってくるわ他国の土地で起きた問題解決に出向くわそもそもいるべき城から旅したいわーって飛び立っていくわ……クラムベルトさんの心労がマッハ。

※主人公もやることが多いうえに無茶振りされているような気がしないでもない。

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