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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五章 城生活と小期間の旅
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 一体何事か、具体的な内容に関して公也はリーリェからの連絡を受け知った。まあ、大体何があったのかということと公也の裁量が必要になる案件であると言うこと、公也を求めての来客であると言うことなどを聞いただけでやはりその内容に関してはまた別の話である。それに関しては公也が来てからアンデルク城に来た来客本人から話してもらうと言うことになった。


「とりあえず帰還の魔法を……ワイバーンをしまわないとな」

「雇い主様ー。どうするんですかー?」

「ああ、雪奈。とりあえず今すぐ俺の拠点に戻る。帰還の魔法を使うから戻ると言っても一瞬だが」

「ほほーう? それはとても便利ですね! 今すぐ行きましょう!」

「……わかった。まずワイバーンを別の空間にしまっておくから、少し待て」


 帰還の魔法は一種の空間に穴をあける魔法なのでワイバーンは入らない。そのため異空間にワイバーンを入れる手間がある。まあその程度の手間で済むのでかなり便利ではある。雪奈は魔物、しかも空間を作る能力を持つので空間魔法に引っかかる可能性は……という考えもあるが、別の空間魔法が引っかからないので大丈夫だろう。仮に雪奈の作った建物内部で帰還の魔法を使おうとした場合どうなるのかは少々気になる点ではある……まあ、それは後でも検証できる。アンデルク城自体ある種のアンデルク城という存在の空間内でかなり特殊な空間であるとか細かい話をするととても複雑になってくるので気にしたら負けだ。いや、今後アンデルク城に宿を作るつもりだがその宿とアンデルク城とそこに帰還の魔法や空間魔法が関わるとさらに空間構造的に複雑になるのではないか……とかいろいろと公也の求める知識的に面白そうな考えはあるが、それは今はさておくとしよう。




「あ、戻ってきたわね……って、また誰か拾ってきたの? しかもまた女性を……獣人かしら? キミヤ君、実は結構好き者なわけ?」

「言っておくが一切手を出してないからな? 俺が連れてきたリルフィにも手を出してないし、こっちにも手を出してない」

「ふーん…………まあ私からは言わないでおくけど。初めまして……私はリーリェ・ギールセス。あなたは?」

「私は雪奈です。雇い主様に雇われてこちらで宿の経営を行うつもりですので……雇い主様の部下ですか? それともご友人? あ、それとも夫婦とか」

「夫婦は違うわ。私は夫がいるから。キミヤ君とは……そうね、同僚? あるいは友人? そのあたりかしら」

「あ、はい、ごめんなさい! 失礼しました!」


 男女関係の勘違い、思い込みはいろいろな意味で危ないのでリーリェは即刻訂正した……と言うより、公也と夫婦関係であるかもしれないと言われて怒ったのだろう。別に公也のことが嫌いというわけではなく、ロムニルという夫がいるのにそういうことが言われるのが嫌なだけだ。たとえ勘違いでも。だから雪奈がすぐに謝るくらいに怒りが見えていた。雪奈も宿を経営する人間としてあまり個人の事情……と言うほどでもないが、むやみに相手に踏み込まないほうがいいのはわかっているはずなのに迂闊である。


「リーリェ。雪奈はこう見えても魔物だ……獣人じゃない」

「え? 魔物……ああ、ペティちゃんみたいなものかしら。人間と対話できる魔物は別にいないわけじゃないものね」

「ああ。雪奈は宿を経営していてな。その場所がとんでもない山奥で放置しておくのももったいないと思って連れてきたんだ。ここで宿の経営をしてもらうために雇った形で」

「………………何処から突っ込めばいいのかしら」


 公也の語る内容はいろいろな意味でツッコミどころがある。魔物が宿を経営していると言うのもそうだがその魔物を雇い連れてきたと言うのもそうだ。はっきり言ってそういうことをする人間は普通はいないだろう。まあそもそも公也が宿にたどり着けたこと自体ワイバーンなしでは無理、その場所に行くこと自体かなり珍しいと言う話。そのうえで魔物が理性的であり人間に友好的であり公也の話を受け入れる事が必要……様々な複雑な要因が絡み合いようやく成立するようなことだ。


「宿の経営って言っても、ここ人が来ないわよ?」

「今は、だ。少なくとも雪奈がここに来る前に経営していた場所よりは可能性がある。それに、もし客人が来た時雪奈の宿による接待ができるなら悪くないだろう? はっきり言って今のアンデルク城は人手不足……仮に何か偉い人間がこの城に来た時接待は誰がする? ペティか? それともリーリェか? 別に女性にしなければならないと言うわけでもないが、そもそもそういうことをできる人間がどれほどいるか……」

「……確かにそうね。今まではこの城にお客が来るなんてこと自体考えたこともなかった。あら? でもそういうのってキミヤ君の仕事でしょう? あるいはキミヤ君の代行をしている彼の。私が関与することではないでしょう」

「…………ああ、確かにそうだな。いつの間にかリーリェを城の仕事をしている人間だと考えてしまってたか」

「間違いではないけど、あくまでこちらは魔法使いとしてここにきていることを忘れないでね」

「ああ、わかった」


 いつの間にかリーリェはアンデルク城に関わる事柄に結構深くかかわってきている。一応リーリェは魔法使いの一員としてこの城に来ている。客人というわけでもないがこの城に努めているともまた言い難い微妙な立ち位置だ。ロムニルも含め彼女らはここで研究できていればそれでいい、といった感じだがリーリェはこの城においていろいろな仕事に参加している。まあ彼女としてもずっと魔法の研究ばかりやっているのもちょっと気疲れするしたまには息抜きしたいし自分の周囲の環境を良くしたいと言うのもある。ロムニルと違って彼女はそのあたり社交的だ。


「まあ、その子に関しては後にしましょう。それよりも……」

「わざわざ遠話してきた、この城に来た誰かさんのことか」

「ええ。ワイバーンに乗ってきたトルメリリン人……まあ、別に敵意があってきた様じゃないみたいだけど」

「案内してもらおう。直接話を聞く」

「ええ。こっちよ」


 公也がリーリェに案内されてついていこうとする……前に雪奈がそれを止める。


「や、雇い主様ー! 私はどうすればいいですかー! 連れてきて放置っていうのはあんまりですよ!」

「ああ……リーリェ、俺のあとに彼女を……そうだな、ペティの所に。あと雪奈のことに関してペティと話し合って色々と仮決めしてもらいたいんだが」

「あのね……私この城について取り決めるような仕事をしているわけじゃないのよ? なぜかキミヤ君のせいで色々関わってたりするけど、本来は私がやることじゃないのよ? わかってる?」

「クラムベルトに任せるわけにはいかない……いろいろな意味で」

「まあ、そうね……魔物とか魔法とか関わるとだめよね、それは。はあ………………その分私たちに対しての優遇をしっかりしてもらうわよ?」

「ああ」


 結局いろいろな意味でリーリェだよりになってしまっている公也である……もうちょっとちゃんとした人員を雇い任せるべきだが、現在のアンデルク城においてそれは難しいだろう。そもそも公也の下についている人間は完璧に信頼できるものでもない。信用はしてもいいが信頼は難しい……まあ、信用でも十分だが。それとは別に魔法や魔物という面でも、遠慮なく受け入れられるかと言えばまた話は違う。そういう点でも難しい。ゆえに今まで結構な親交のあるリーリェを頼らざるを得ない……彼女が有用なのも理由だろう。悪いことではないが、リーリェの負担が上がることは彼女にとっては良くない。ヴィローサでもペティエットでもいいから少しは使える人材を作るべきだろう。


※どうでもいいけど、いや案外良くないけど。雪奈の名前は漢字表記だが他キャラからユキナという呼び名はされない……ように書いているはず。一方主人公は公也表記であるがキミヤと呼ばれるように七得る。この違いは何なのだろう?

※著しい人員不足。

※宿ができるまでの間は雪奈が使っている部屋が仮の宿となる。内部拡張もできるらしいがさすがに狭すぎなので一人二人を泊めるくらいが限度。

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