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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五章 城生活と小期間の旅
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 アンデルク城において公也はいろいろと業務をした。業務と言っても現状のアンデルク城においてやるべきことはそれほど多くない。ある程度自給の目途が立ったと言ってもアンデルク城付近ではどうにも不安は多い。そもそもアンデルク城付近は山地である。結構な高地にあるゆえに環境的な問題が多い。一応育てることのできる植物の目途はついているとはいえ、多種多様と言えるほどではない。その問題の解決をしたいところではある。


「……周囲の環境に関与するのは無理か」

「無理。流石にそこまで大規模、広範囲は恐らく私の力があっても難しい」


 現在公也はペティエットと相談をしている。この高地においては空気、気温、気圧、それ以外にも様々な環境的な苦難がある。慣れればある程度は問題ないがやはりある程度は問題のない環境を作っておきたいところである。なので公也はペティエットに対して帰還の魔法のように魔法陣を刻むことで周囲の環境を改善することができないか、という提案をした。もっともできないと断言されたが。そもそも改善というよりは改変、本来あるべき正しい環境を自分たちの都合で改変するのである。それが悪いこととは言わないがそれだけの改変を行うと言うことは影響が大きく、またそれを行うの必要な力の大きさの問題もある。ペティエット、アンデルク城となっている城魔はそれなりに大きな力を持つが城魔としてはそこまで大きな城というわけでもない。


「でも、もしかしたらできる可能性はないわけじゃない。少なくとも城の内部はある程度いい環境を維持できる。外に干渉するのは私が城である以上難しい」

「……そうか。魔法陣の手助けがあっても?」

「外側への干渉は厳しい。ある程度はできるかもしれない。でも、今の私……この城では難しい。城が大きくなれば私、城魔は育つ。大きくなれば私自身の規模が上がり成長する。そうなれば……少しはなんとかできるかもしれない」

「……城の成長か。また難しい。まあ、考慮はしておくよ」

「お願い」


 城魔、アンデルク城とペティエットは公也の所有物、使い魔のようなもの。それを大きく成長させるのは主たる公也の仕事と言える。特に城魔は城が大きくなることが成長の要因であり、それは決して自然に起こり得ることではなく城を持つ者の手で行われなければいけない。いや、別に城を持つ者が直接行わなければならないわけではないのだが、まあともかく城魔が勝手に成長するのではなく誰かが城に直接干渉して増築しなければならないと言うことである。そして城を改築する、増築すると言うのは簡単にできることではない。物資予算労働力、少なくとも公也が用意するのには結構な時間がかかるだろう。特に労働力は。

 とはいえ、魔法陣を利用した環境改善および現在の城から大きくすることによる建物の状況改善など、また城魔であるペティエットの能力を高めると言う点でも将来的に城を大きくするのは悪いことではない。そのことに関して今からどうするかを考えておくのは重要である。ゆえに公也はどうにかして城を育てる手段を考える……もっともいますぐどうこうできることでもないが。






 と、そんなことを相談していたりもしていたが公也はクラムベルトに少し旅に出ると告げ勝手にアンデルク城を出て行った。アリルフィーラを残して行ったりしているため文句を言われたものの、公也の行動を制限するには至らない。基本的に冒険者でもある公也は自由である。そもそも公也の代わりに仕事をするために派遣されているのがクラムベルトであるともいえるのだから。


「さて……とりあえず山脈沿いに向かうが。何があるとも言えないからな。地図を作るついで、と考えておくか」


 公也はアンデルク城にいる際にこういった場面、どこかに旅を出る際にその経路を地図化し周辺の地図を作れるように地図作成の魔法を作った。まあ地図作成の魔法と言ってもそのまま見たままを地図として紙に記し作り出す、という便利なものではないが。現状はあくまで移動経過で見た大地の様子を記憶した外部記憶領域を作る魔法、といったところか。それはそれで割と魔法としては出鱈目だが、現象として可能であれば魔法としては実現できる……まあ魔法は存在しない現象でもやろうと思えばできるので不可思議なそれでも可能ではあるのかもしれないが。ただ魔力消費という点においてはかなりのものであまり長時間使うのは公也程の魔力量が大きい人間でもあまり望ましくはないものである。しかしそれでもやはり地図を作成することができるというのは価値としては大きいものであるのかもしれないが。

 まあ、魔法の価値に関してはともかく。公也はワイバーンに乗って山沿いを移動中。基本的に山というものに見るべきものはない。今の所公也がワイバーンを駆って街の上などを飛ぶと騒ぎになりかねない、特にトルメリリンやキアラート方面は面倒が多そうなので今のところは控え中ということで山の上を飛んでいるがそちらでは見るべきものがない。アンデルク城みたいな山の上に存在する建築物というのはほとんどの場合ないのである。

 一方で地上に降り山の中を探索、というのもあまり見るべきものがない。基本的に山の中にいるのは魔物や獣、あるものも山菜野草などでたまに珍しい植物などがあるかもしれないといったぐらいだろう。まあ公也の場合それだけでも十分価値はあるしロムニルやリーリェに持っていけば魔法薬などの材料になる。それはそれで意味のあるものだろう。またワイバーンの餌ということで獣や魔物を用意する必要があるので適度に降りる必要はある。もっともそういった目的以外ではあまり下りない。地上を移動するのとワイバーンで空を飛ぶのでは移動速度が違う。ワイバーンの方も歩いて移動されると困るだろう。


「っと……そろそろ暗くなるか」


 流石に夜間の移動は公也がいたとしてもワイバーンにとっては大変である。そもそも休みなしで飛ぶのは無理だ。そういうことで適度に休みはいる。夜間の飛行はそもそも難しいし危ない。そういうことでそろそろ降りようとしていた…………ところに、遠目にうっすらと明かりのようなものが見えた。


「………………人工の灯?」


 公也は山の中でもアンデルク城という場所に住んでいるゆえに比較的見かけるものだが、通常このような山の中で人里の光、人工的な灯というものを見かけるようなことはない。魔物や獣のいる場所においてその危険を避けつつ過ごすと言うのは結構な難事だからだ。アンデルク城に行くのもワイバーンでなければいけないのは道の整備もされておらず山の獣や魔物の危機が存在するからだ。

 つまり普通ではありえないものがあった、ということになるのである。公也はそちらに興味が惹かれる。なぜそこにいるのか。また単純に山の中で野宿するよりは家など安全な場所で過ごせるほうがいい。仮に個人の邸宅でも話をして軒下でも貸してもらえるなら話は違うし野宿するにしても近くの方が比較的安全だろう。そういうことで気になったのでそちらに向かう。


「………………いくらなんでもこれはちょっと奇妙に思えるな」


 そこにあったのは人里でもなく、山の中に住む奇妙な個人の家というわけでもなく。平屋で少し大きめな少々和風な建物……それも看板まで付けられてい小奇麗な印象を与える、旅館というのが一番近いと思える建物であった。


「……寝夢の宿?」


 看板に書かれていたのは寝夢の宿、という内容。つまりこの場所は山の中に存在する宿ということである。


「いったいだれが何のためにこんなところに……道も整備されていないのに」


 客も恐らくいないだろう秘境の宿……いや、どちらかというと魔境の宿の方がふさわしいかもしれない。その傍にワイバーンで降り立ち、待機させて公也は宿の方へと向かった。色々と湧いた疑問を聞くために。また、休息をとることができるのならば休むために。


※城魔は自己成長しない。城魔の意思も本来なら動けないので成長させることはできない。城魔の成長手段は城そのものを増築すること。それゆえに城の主を必要とする……のかもしれない。

※旅のついでの地図作り。世界全体のマップを埋めるのです……

※誰も来ない誰もいないはずの山の中にぽつんと建っている謎の宿……御伽噺的な存在である。

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