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「唯人変わらずの者が二人に増えたところで」


 男性の動きは変わらず徐々に公也たちを押していく。公也自身はある程度相手に合わせて力を上げているがメルシーネはそこまで強さを上げるということはできない。そこまで器用と言うわけではないし、そもそも彼女の場合は力を抑えるというほどのものではない。<桜>の力を持ち竜の力を振るえるとしても結局のところ彼女はこの世界の魔物の一体である。世界を滅ぼし得るような魔物はこの世界でも発生し得るが、メルシーネはそういった系列の存在ではない。あくまで<桜>の力を持ち、地脈の力を吸い上げて生まれただけの特殊な<仕え魔>と呼ばれる存在であるというだけ……一般的な世界の規模、その世界の範疇のレベルであればそれで十分ではある。しかし男性のような神と呼ばれる存在、世界に匹敵するほどではないが生物、存在として格が上の存在には流石に及ぼない。そもそも男性ほどの強さのレベルとなるとこの世界の多くの存在は全く匹敵することがないだろう。

 とはいえ、公也が相手の強さに合わせるのに一手相手の手を遅らせる、護ることはできる。防衛、防御、真に戦うことを目的とするのでなければ多少は何とでもできる。それができる程度にメルシーネは強い……もっとも、やはりそこまでと言わざるを得ないが。


「周りへの被害がひどくなっていくな」

「相手の強さが上がっているのです。ご主人様はまだいけるですけど、私は流石に厳しいのです」


 相手の一撃の強さも上がっており、その余波で周囲がひどい状態になる。斬撃で周りの樹ごと周囲が斬られたり、剣戟の余波で大地が抉れたり。一応これでも相手は本気ではない……そもそも神が本気で戦えば周辺が吹き飛びかねない大破壊を引き起こす。手加減と言うよりはこの世界の人間、そのレベルに合わせて小上昇ばかりをしているからこの規模なのだろうが、その程度でも結構なレベルの強さ……公也がいざというときにつけられるランクであるSランクに匹敵するような魔物、その強さと同程度なほどの強さであるとみられる。

 はっきり言ってこの強さを相手にまともに戦えるのはこの世界でほぼいないと言っていい。まあ、一応相手の男性はその攻撃手段を剣に限定していることもあり対応することは不可能ではないだろう。ただ、やはり直接戦うとなるとその強さに対応できる存在は減る。


「ふうっ!」

「ふん。ブレスは厄介だが準備もなしにできる程度など」

「はっ!」

「攻撃を合わせても所詮弱者の一撃。払うなど容易い」


 メルシーネの竜のブレス、公也の攻撃、さらにそこに簡易的に目くらましや多少障害になるような、影響力のあるような魔法の使い方をしたりなどしつつ、男性の動きを阻害している。しかし多少の小細工、相手の防御を完全に突破できない攻撃などどれほどの意味を成すか。そもそも相手が妙な感じに纏っている力、存在的に隔てる格と言ってもいい力の差がある限り、メルシーネのブレス、竜のブレスであってもダメージなど到底与えられない。せいぜいしても軽い火傷程度、となるとほぼ通用しないと言っていい。というか仮にも神たる存在、自己の治癒、存在の補填や修正による治療などもできるだろう。

 そして軽い攻撃ではただ軽く払う程度で無効化できてしまう。そのあたりはやはり根本的に相手が強いから、の差だろう。


「やはりこの程度か。強さとしてはまだまだ、少しは楽しませてくれているが及ばぬよ」

「………………」


 このままでは結局メルシーネの加勢する前と変わらない。多少メルシーネが無理をして相手を抑える、攻撃を増やし対応しようとするがメルシーネの怪我の比率、ダメージが増えている問題もありあまり無理、無茶をするのも厳しい現状にある。

 しかし下手にこの戦いに参加できる存在はいない。多少無理無茶しても問題のないリーン辺りは参加できるかもしれないし、魔女なども参加できるかもしれないが、やはり強さ的にこの二人が参加しても厳しいという部分はあるかもしれない。地力の差、そもそも扱える力の性質、強さの差が存在するゆえに。






「これはなかなか危険な存在」

「マスターのことが心配。今のところ対応できているみたいだけど」

「確かにそう。でも……流石にメルが手を貸しているとはいえ、公也でも厳しいと思う」

「どうする? 私はマスターのところに行けないし、手を貸すにもこの城の内はともかく外は無理」

「この監視状態の維持さえしてくれているのであればいい。手を貸すことは私が行う……アディリシアにも連絡を。色々と起動させてほしい魔法道具がある」

「わかった」

「………………力の差があるのは確実。でも、だからこそ試しようはある。私の願い、目的、先にあるのは世界を超える、天と底の世界に届くこと。それだけの力は震えるかどうか、少し試させてもらう」







「くっ」

「ちょっとやばいのですね……」


 メルシーネも大きな怪我を受けつつ、公也もそこそこダメージがありつつ。それでもまだ戦える状況、それが維持されている状態ではある。もっとも今後維持するのは厳しい……というより、メルシーネが離脱しかねない状況にある。最悪メルシーネが死ぬ危険すらある。公也だけであれば男性相手に如何様にもまだ戦えるというか、最悪殺されても死なずに終われるだろう状況だが、ともかく不利な状況、劣勢であることには変わりない。


「大人しく死ぬが良い」


 男性が剣を振るい、公也を斬ろうとする。メルシーネが守りに入ろともするし、公也も防ごうとする。間に合いはするがまたダメージは増える……そんな状況になる、と思う前に、一つの攻撃が男性を襲う。


「むっ! 魔法だと! この程度!」


 降り注ぐ流星の様は魔法の弾丸の雨。力を放出し吹き飛ばす、剣を振り大きな斬撃として振り払う。


「小細工を」

「……今のは」

「ご主人様ではないのですね。どこから……」

「ふん……おおっ!?」


 どごん、と大地が隆起……槍のように地表を穿ち吹き飛ばしながら男性を襲う。風の渦、刃が男性を飲み込むように襲う。


「くっ、うおっ!?」


 炎の雨霰。氷の柱も降り注ぐ。吹きすさぶ吹雪、冷気と雪、多くの氷の切片、様々な魔法が男性を襲う。流石にその程度では倒せない、殺せない。そもそもこの程度の魔法でダメージを与えることもできない。ただ、物事は通じればいい、ダメージがあればいいというわけでもない。見えなくなる、そもそも吹きさす部風に巻き込まれる、それだけでも影響は大きい。


「邪魔な! くっ、お前たちの仕業か!」

「いや、違うが……」

「この間に攻撃を……できるですかね?」

「できなくもないが、この魔法は通用するような攻撃にはなってない。攻勢に移る、強めるのは厳しいかもしれない」


 男性は魔法により翻弄はされているものの、決して油断できる相手ではない。ダメージはない、多少意識を魔法の方に向けさせられているが決して公也たちを見ていないわけではない。本気になれば小細工に近いような魔法くらい全力で防ぎ戦闘に移れるだろう。まあ、この小細工のような魔法と男性が感じているのは全然小細工ではない、一般的にこの世界の人間にとっては結構強力な魔法と見られてしかるべきものだろうが。



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