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 アンデールの国のある地は広い山である。しかしその地脈はそこそこ強く、城魔が生まれるほどである。城魔は地脈の関係で山をある種支配下に置き、何となくだが侵入者などもわかる……というのは城魔自身の特殊な要件による成長も含め、様々な要因があってのものでそうなってはいるが。ともかく、城魔、ペティエットはある程度山の中にいる侵入者を感知できる。まあ感知できると言っても実のところそこまで強いものではない。小さな蟻を人間はあまり意識できないように、強さ、存在の格、そういったものが強くなければ判断はできないだろう。例えばメルシーネとか公也とか。魔力の保持量なども判断要因だろうから恐らくはミディナリシェなどもわかるだろうし、邪神の力を持つクシェントラなどもわかることだろう。

 そういった感知能力を持つのはペティエットに限らず、ある程度以上の強さを持っていればわかる。メルシーネや公也などもこの山、アンデルク山、アンデール内の一定以上の侵入者がいればなんとなくそれを把握できる。普段いるような魔物などのレベルではない、それこそ伝説に残るような竜、カイドランみたいな圧倒的強者であればではあるが。あとはヴィローサもわかるが、ヴィローサはその範囲が流石に山全域をカバーするほどのものではない。

 ともかく、そんな感知能力を何人かは持っている……それは、強大な存在が己の領域に、感知できる範囲に入り込めばわかる。


「っ!?」


「………………」


「……やばいのが来たのです?」


 わかった。





「ご主人様、やばいのが来たのですよ」

「……何かとんでもない気配が山の中に入ったのは何となくわかったが」

「私も感じた。この山に入り込んでいる。マスター、かなり危険な存在、少なくともその強さだけで見て恐らく危険な存在の可能性がある存在」

「なのですね。というより、この気配は恐らく……」

「恐らく?」

「魔物とかそういう存在ではないのです。恐らく人でもないのです」

「そこまではわからない。でも、確かに人でも魔物でもないような気配はあると思う。恐らく近いのは、マスターやクシェントラ」

「………………俺やクシェントラか」

「そうなるとたぶん、結構どころではなくやばい存在になるのです」

「…………神、それに関わるか近い存在とかそういうことになりそうだな」


 公也やクシェントラが大きく関わりを持つ存在は神。公也の知る邪神とクシェントラの知る邪神は別物であるし、そもそも存在として別の神と呼ばれるような存在であるため厳密には同じ感じでもないのだが、それでも神と呼ばれる存在であり、強さとしては根源的根本的には他と隔絶した圧倒的強さであることには違いがない。別に神は邪神と呼ばれる存在だけではなく、普通に様々な神が存在する。いわゆる世界を作り上げるような総精神、あるいは世界を管理するような管理神、多くの神話に存在するような人の上位にある力ある存在としての神、様々である。

 まあ、何にしても神と言う存在は強大で時に危険な存在である。ましてやこの世界は知り得る限り本来神が存在せず管理されていない世界である。つまりそこに存在する神と言うのは異常、異端、あり得ない存在。


「……放っておいていいと思うか?」

「いいわけないのです。それだけ力のある存在が来ること自体大きな問題なのですよ。神だろうと何だろうと相手は魔物だと思ってみた方が安全なのです」

「魔物」

「そうなのです。神だから善良とは限らないのです。というよりご主人様は神がいい存在ではないというのは分かってると思うのです。そちらの神話においても、であった邪神や神の力を持つ存在のことを考えても」

「……まだまともなのはメルくらいか?」

「わたしのは厳密には神のそれでもないのですけどね」


 公也のあった邪神、それに限らず彼の住んでいた世界における神話では神は多くの場合人に厳しい、横暴なところのある神であることが多い。良い神とされる場合でも結構あれというか、神話にもよるが人に対して容赦がないというか。公也のいた世界では実在の神が存在し認識するということはなく、多くの場合神とは自然現象の体現、例えば公也のいた国では川を龍に見立てるものがあり、川の被害によるものを龍によるものとして見る神話の類がある。龍はある種神に通ずるもの、竜のような魔、悪魔的な存在とはまた違い竜は神よりの物として見られるもの。そもそもその神話における神も色々ととんでもないところがある。他国の神話においてある神話では神の性的な行為に関わる部分であまりにも酷いものがあったりとか。それ以外の神話でも神は自然の化身のような厳しい物が多く……人にとって良いもの、人を助けるものではない事が多いように見える。敬い仰げば、信仰を抱けば恩恵を貰うことはあっても、それは決して助けとは言えないだろう。まあ人によっては助けと思えるかもしれないが。対価、等価交換……と見ると人と神が対等に見えるから少し違う、敢えて言うなら信仰者、自分の下につく者に対してそれを維持させるための要素……というと信仰される神の側の方が弱いようにも見えるだろうか。この辺りの話は複雑だが、ともかく神は基本的に人にとって良い、善良なものではない。

 いや、それもまた語弊があるだろう。神はその役割に則り在る、というべきか。自然の化身たる神であれば自然そのもの、厳しい自然の脅威を与えるという点で人に厳しいと見るべきだろう。公也のあった邪神も邪なる神として神の対等な相手、敵対存在、向かい合うもの、二元の片方、そういうものとして悪たる、邪たる神としてあるもの。世界を管理する神もまた世界を管理するという役割を持つものであり、人は世界に存在するものであるだけで世界そのものを維持するもの、管理するものとしては決して助ける必要のある存在でぇあんかう、その点で厳しいと見るべきなのだろう。

 さて、そういう意味では本来この世界には存在しないはずの神がなぜかこの地に存在している、世界を放浪する神と言うのはどういう存在か。世界から世界に移る神はそういった管理などの特定世界に関わる役割を持たない。であればどういう役割を持つものか。それはわからない。しかし、決してそれがいいものであるかどうかは……怪しいところである。


「とりあえず会いに行ってみるべきか」

「気をつけて行くのです。警戒するべき相手なのですよ」

「気を付けて」

「ああ」



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