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「ぐっ、お前何なんだ!!」


 一人の冒険者が一人の男性に襲われている。彼からすれば全く襲われる理由に思い当たるものではない、本当に唐突なものである。いうなれば辻斬りのようなものだろう。完全にいきなり、どことも知れない適当な場所を歩いていたらいきなりである。なぜか周りに人はいないし、色々と音がしているのにだれも来る気配がない、さらに言えば逃げても追いつかれるどころか、人のいるところに出ることもできずなぜか同じような場所に戻ってくる。訳が分からないとしか言えない。そもそも今彼がいる場所は本来人がいる場所だ。なのにいない、時間的な問題でもなく、場所的な問題でもなく、理由もわからず人がいない。襲われたその時からまるで別の場所にいるかのようだった。


「くそっ! はあああああっ!!」


 風が斬撃となり飛ぶ。魔法ではない、技……多くの場合上位の冒険者が持つものである。飛ぶ斬撃、近づかずとも攻撃できるその技は対人間相手では魔物相手に使うよりも有利だろう。もっとも彼を襲う相手は特に気にした様子はない。持っている剣を振るい、飛んできた斬撃に触れ……パシンとその斬撃を消した。


「なにっ!?」


 技を消す、というのは普通考えられない。一応技をかき消すみたいなことはできなくもないが、それは大きな波で小さな波を消すようなもの。大きな力、別の技で技を消し飛ばすみたいな形であり、今回みたいに彼が使ったような技を無に帰す、無効化するみたいなことは少々特殊が過ぎる……いや、あえて言うならほぼあり得ないだろう技術である、と言う話になる。

 まあできなくもないが、かなり超人的な技術、そして魔法や技を扱う能力を持たなければならず、よほどの天才的超人的な才能が必要となるだろう。それだけの才を持つ存在が襲ってくるというのもなかなかの脅威だ。


「くっ!」


 剣と剣が打ち合う。力も技も、速度も何もかも、全く彼が勝つ要素がない。


「お前は誰だ! 何なんだ! 冒険者なのか!? 冒険者じゃないのか!?」


 少なくとも冒険者にこれほどの実力がある存在がいると彼は知り得ていない。もちろん上位の冒険者の存在はしっているが、それを考慮したうえで目の前の人物はそれらには恐らく該当しないだろうという推測になる。上位の冒険者は見た目に関しては多くの場合知られないが、その能力は知られているし活動地も大体の場合は自国となり、他国に出向くようなことはほとんどない。あるにしても何らかの大きな出来事に対して出向く、みたいな形となる。そして大体自分たちが活動している場所の上位の冒険者のことは冒険者なら多くの場合は知っている……そもそも彼も一応は技を使える程度の上位の冒険者、Bランク以上の冒険者だ。それなりに上位の冒険者とのつながりもあるし、同じ活動の場に出たこともある。ゆえに目の前の相手が冒険者であるとは彼は思えない。

 そもそも見た目からして冒険者っぽくはない。一番表現するのに正しいのは旅人だが、それにしては見た目が綺麗と言うか……なんというか、あまり旅をしているような感じがしない。いや、そもそも生活感が薄いというか、綺麗すぎる……まるで新品であるかのような綺麗さだ。どう考えてもちゃんと着ている、使っているはずなのに剣も服も、また沿ってきた相手自身も汚くはない……埃も何もない、あまりにも綺麗な感じな状況にある。冒険者らしくない、そもそも真っ当な人間らしくもない、妙な雰囲気、見た目、そして異様な強さ。ただ、魔物とも考えづらい相手だろう。だからこそいろいろな意味で彼も戸惑っている。


「煩いな」

「なに!」

「それなりに強者だと思って戦ってみたが、本当にそれなりでしかない。戦いの中相手に問いかける、それが悪いとは言わないがあまりにもお粗末だ。もう少し考えて問え、語彙を増やせ」

「いきなり襲ってきたやつが何を言う!!」


 襲ってきた男性が襲ってる相手に妙なことを言っている。上から目線で相手にダメ出しをしている。なんとも妙な襲撃相手だ。そして男性はそれなりに強者である、と襲った相手のことを評価した。彼も一回の冒険者として決して弱くはない、というよりこの世界ではそこそこ上位な方だ。それをそれなりの強者と言うのはなかなか難しい。しかし実際それなりの強者という評価はある意味では間違いない。この世界における強さの段階と言う点で冒険者の上位の方、最上位に比べれば全然であるし世界全体、多くの種族の強者、強い存在と比べるとやはりそれなりの強者と言う扱いにはなるだろう。そもそも冒険者としての強さに関しては冒険者個人よりそのチーム、パーティーであるからこそ成立する強さが基本で個人で絶対的に強いというのは結構な特例的な存在である。


「所詮この程度か、色々と噂を聞き強者と戦いたかったのだが。上位の冒険者でこの程度では楽しめそうにないな」

「何を言っている!」

「ああ、もういい」


 振られた剣が、あっさりと冒険者の剣と体を断ち切る。なぜ、ありえない、そんな言葉を発する間もなく冒険者の方は絶命した。


「やれやれ。これで何人目かな。冒険者と言うのがこの世界では強い存在と言う話だが。これならその辺にいた魔物とやらの方が強いんじゃないか? 仮にも今のでも上位の冒険者だろう。それがこの程度か。まあ上位と言っても平均的な感覚で上位とする場合どうしても多少上位にいる程度では弱いのは仕方がない。上が図抜けて強いことはよくあることだからな」


 上位の冒険者という話を男性は聞いていた。噂、冒険者ギルドでの情報、あまり個人の情報を出すような組織でもないが情報収集の手段は人によっては色々とある。男性は少なくとも上位の冒険者の情報を得ることのできる情報収集手段を持っていた、そういう話だ。そして上位の冒険者という情報を得たが、その強さはそれほどでもなかった……もっともそういうことは珍しくもない。上位と言っても全体での上位、順位的な見方で見て上から百番目くらいまでという感じに見ることができる。百位から九十位くらいが大体強さとして二百から三百、と言う感じだったとして、最上位は一万やら十万やらが見える……上位と一言に行ってもピンからキリまで、上の方と下の方では桁が違う強さであることは決して珍しくもない。そういう点で上位と言ってもそこまで強くなくとも期待したものではなかったと残念に思う程度で済む。


「さて……本命はこの先にいるだろう、なんていったかな。アンデールの王とやら。キミヤだったか?」


 彼の目的は冒険者と戦う、いや、正確には強者と戦う。戦い倒し、自分の前にひれ伏せさせる。ただの娯楽、享楽。それで襲ってこられるのも少々困る話だが、それが彼の理由。つまりはただの遊び……とてもいろいろな意味で面倒な、厄介な存在、目的と理由である。




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