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 フレーテ・ルリア・ルビィ・ローラ・ゼーメスト・ロゼッタ


「ゼーメストが他所に行く……ってこと?」

「らしいですね。正直私たちもこの大陸を巡り歌などで人々の助けになるように務めてきました。私たちの守り、安全の確保を彼と彼についている女性、その戦力を頼りにして活動し続けるのもどうなのかと思うところはありましたが、結果としてまあまあいい感じではありました。しかし彼らが次の目的地にする場所にしか行けませんし、多少意見は組んでくれていても限度はあります。そもそも私たちの活動に関しても限度があった……いつまでこの仕事を、旅を続けるのか、そう思うところではありました。彼がこの大陸から別の大陸へと移る……彼の友人のところへ行くつもりだという話はある意味ちょうどいい区切りだったのだと私は思います」

「ちょっと? ルビィ?」

「言っておきますが私だけの意見ではありません。ルリアもローラも同じです……フレーテ、あなたはどうなのです? このまま旅を続ける、それを選んでいて果たして良い結果になったと、そう思いますか」

「……それは」


 ロラロンナ楽団のフレーテ、ルリア、ルビィ、ローラの四人は歌や踊りを人々に見せ楽しませる……公也の住んでいた世界においていわゆる路上ライブ、アイドル活動みたいな感じのことをして生活していた。この世界ではアイドル、歌手、そういった類の興行はあまり広まってはいない。吟遊詩人的な存在はいるし、劇団みたいなものもないわけではないがそれはそこまで広い範囲で広まっているわけでもなく、一部の上位階級がそれらを楽しむにとどまっている。

 それをロラロンナ楽団の四人は大衆に広める、あるいは大衆を楽しませる目的で活動していた。報酬、えられる金銭などは二の次で楽しませること、希望となることを目的としたもの。活動する最中貴族などからの誘いもあったりしたがそれを受けずただ四人で頑張って活動してきていた。いろいろな危険はありつつも、ゼーメストと出会いその力を借りる、ゼーメストの強さを守りに旅をしながら活動してきた。まあゼーメストの力を借りる点に関しては楽団のリーダーといっていいフレーテの意見、意思もあったが。ただルビィなども同意はしていた。無料で絶対的に近い強さ、力を借りれるのは大きい。ゼーメストの行く先について行く形でなければ移動はできなかったがそれでもゼーメストを頼れるのは大きかったのだろう。

 しかしそれも限界が来た。ゼーメストがこちらの大陸で十分活動したため別の大陸に行く……知り合いというか友人と言うかライバルと言うか、そんな相手である公也のいるところに行くつもりだということだ。そしてその後はアンデールを拠点……とするかはわからないが公也のところに通いつつ、向こうの大陸を旅する。こちらほどではないにしても大陸の様々な場所で色々見て回り楽しみつつ、そしてまた終わればどこかに。公也の力を借りることもあるだろうが、なんだかんだ色々と移動することには変わりない。そして恐らくロラロンナ楽団はそれについて行けないだろう。今でもついてくのが精いっぱい、同じ大陸でそれだ。そもそも、今はまだ彼女たちも若いからついて行けるが……流石に何年も活動を続けて四人にもある程度限界が見えている。活動自体の限界、自分たちの歌唱や表現の能力の限界、そして女性としての……いい方は微妙だが今期の限界とかそういう点を考えても、四人はもうこれ以上旅を続けて音楽活動をと言うわけにはいかない状況にある、と自分たち自身で感じている形である。


「でもどうするのよ。確かにゼーメストがいなくなるのなら旅は難しくなる。となるとこちらで故郷に帰る選択でもするの?」

「そうですね……そのあたりの話は難しいです。そもそもフレーテは彼について行きたいのでは?」

「…………」

「仮に私たち三人がこちらに残り活動を続ける選択をしたとしても、フレーテは違うでしょう? 彼について行きたい、そうなのではないですか?」

「……そうよ。悪いかしら?」

「いえ。あなたのことに関してはもうわかっていることなので……」


 フレーテはゼーメストに対して好意を抱いている。これはこれまでの過程、そもそもゼーメストを同行者とする、護衛に選んだ時からおよそ推定できていたことである。まあ誰も深くは突っ込まない。別にロラロンナ楽団は恋愛禁止というわけでもない。恋愛するにはあちこち旅をする都合できないというだけで。


「それはいいんです。どうせ私たちもそれぞれの道を進むことが決まっています……正直ルリアはどうするかまだ判断しきれてはいないようですが」

「どういうこと?」

「まずフレーテには話は言っていないのですが、アンデール……以前あったゼーメストさんの友人、その人の住む、いえ治める国にて私たちのことを教師、あるいは講師として招きたいという話が来ています」

「聞いていないんだけど……」

「その話の打診は私に来ました。考えてはいますが、返答はまだです。フレーテにだけ話していなかったのは申し訳なく思いますが、今回のようにこれから先どうしよう、という感じにならないと話を考えることはなかったでしょう?」

「……そうね。私たちのやるべきこと、楽団として活動することを続けていたでしょうね」

「ですので話は聞いていましたが保留、内容に関してある程度伝えてはおきましたが返答はいずれ……と返しています。向こうも別に急ぎではなかったようです。将来的に私たちのしている仕事、活動の保護が目的の一環であったとか」

「保護?」

「歌うこと、踊ること……私たち以外でもこれらの活動をしている者はいますが私たちのこれとは些か雰囲気が違うようで。私たちの特有の物であるから保護をして次の世代に伝える、この活動をできる新しい人材を作りたい、ということらしく」


 公也が彼女たちに教師や講師の打診をしたのはロラロンナ楽団の活動の保護、またその活動を後世に残す、伝えることが目的である。簡単に言えば公也は彼女たちの活動が路上ライブ、アイドル活動に近いことを理解している。音楽活動と一言に行っても色々だ。音楽にもクラシック、ロック、演歌、さまざまなジャンルはあり、また活動形態もいろいろ、演奏スタイルやら何やら様々なものがある。

 ロラロンナ楽団の活動はこの世界では比較的珍しいスタイルだ。だからこそ公也も興味を持つしそれを保護する意思がある。また、公也のいるアンデールはそういった娯楽方面は発展していない。唯一その手の活動をしている知り合いでもあったからこそ、ゼーメストと言う友人的なつながりのある人物の近いところにいたからこそ話が言ったという感じである。


「これに関してローラは肯定的です」

「そう……ローラがね」

「教えること、伝えること、残すこと、彼女にとっては自分たちのしてきたことが無駄にならないのがうれしいようで」

「……そうね。これまで活動してきて、これで終わりで何もかもなくなるのは確かに寂しいかも」

「私も同意するところはあります。私も受けるつもりではありますが、他の可能性を検討したうえで判断します。それでも可能性は高いでしょう。ルリアは迷っていますが、行く当てもないですし特に大きな理由もなければ多分来ます」


 三人はアンデールに行く可能性が高い。ただ、こちらに残る、どこか別のところに行く可能性は一切ないわけではい。なんだかんだ長期的に旅をする形で活動していたため各地とのつながり、縁は結構ある。貴族からの誘いがあったように今もまだ一切打診がないわけではない。もちろん誘いと言っても個人では厳しい面があるし、強く求めてのものではない。離散したことで名声的な強みは無いし、そこまでの強い求めでの欲しさというわけではなかっただろう。いろいろ都合がいい、などの理由はあった。ただ、それを理解したうえで受け入れる、と言う選択もあるにはある。四人の中で一番ふつうよりのルリアからすればたとえ側室や妾みたいな立場でも上場な感覚かもしれない。まあ、結局どうなるかはわからない。最終的な選択次第だ。


「それで、フレーテはどうしますか?」

「…………そう簡単には決まらないわ。すぐに決断はできないかもしれない」


 フレーテもまだ迷っている。ただ……ゼーメストと言う存在が彼女にとって重要なもの。彼女が判断できずともゼーメスト次第では結局彼女の意見は決めざるを得ないだろう。時間は待ってくれない。確実に決断する時は来る。


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