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シーヴェ・ノエル



「へー? シーヴェちゃん上手くいったんだ」

「まあ、一応……なんかあまり結果としていいのかはわからんないですけど」

「いいに決まってるじゃん。ずーっと好きだったでしょ? 傍から見ててもわかるのにそれを抱えたまま過ごしてるのやきもきしてたし」

「そう?」


 シーヴェと公也の仲に関してはお互い……というわけではないが、少なくともシーヴェが公也を強く想っている事実は他の多くの人物が把握している。特に公也廻りの女性であったり、あるいはシーヴェと仲のいい人物であったり。ノエルやリリファはアンデールにおける数少ない獣人、そのため色々大変なところがある。なお男性獣人であるフーマルの方がよほど数が少ないが彼は彼で結構気楽に過ごせている……まあ、それ以上にいろいろ苦労することも多いが。

 そしてその大変さゆえに獣人の女子三人はよく色々と話している。今回リリファはいないが、大体はリリファが色々と二人の相談に乗ることの方が多いだろう。特に年齢的な面、精神的な面、環境的な面で色々とリリファの方が相談できる。何よりもリリファは既婚者であるというのが大きい。恋愛面、生活面、その他アンデールでの生活においてもシーヴェやノエルよりも先に過ごしていることもあり、また彼女の元々の仕事が暗殺関連でふつうではなかったというのもあるだろう。そもそも世間慣れしておらずアンデールに来てからアリルフィーラ付きになり特殊すぎる生活をしているシーヴェに、もともと村で半ば引きこもりのような感じで外に出ることなく過ごしていたノエル。ちょっと二人ともまともな生活をしていない、ということもありやっぱりまだ普通の生活に慣れているリリファの方が相談される側になり得るだろう。

 そういうこともありリリファは恰好の相談相手である。まあ、そんな話はともかく。シーヴェと公也の関係はうまくいった……一度神渡りにより四島に行った時、アリルフィーラの助けもあってかなり仲良く、関係を勧められたのが大きいだろう。もともと悪いわけではないがやはり彼女自身アリルフィーラに対する遠慮があったり、そもそも城だとヴィローサだとか他の人もいるし、アリルフィーラ以外に対する遠慮、特にほかの二人の王妃に対して遠慮する面もあったりするしとまあ、公也と仲良くするには障害が多すぎるのである。それを気にしないヴィローサ他、精神が図太いか立場的に強いか、あるいは他者を一切気にしないとか色々とあって誰がいようが平気なのだがシーヴェは一般的な気質寄りなのでどうしてもそういうことを気にしてしまう。そのため今までなかなか関係が進まずにいた。それが今回、というかちょっと前に進み、そのことをノエルが知ったということである。そして素直に彼女はそれを嬉しく思っている。なんだかんだ知り合い、友人が良い状況にあるのは嬉しいだろう。


「あーあ、それにしてもこれで独り身は私だけかー」

「……ノエルはいい相手とかいないの?」

「え? 私? うーん、そもそも私そういうの興味ないかなあ。シーヴェちゃんはさ、あれ、えっと、キミヤ様? あの人が好きなわけでしょ。でも普通って獣人は獣人と結婚するじゃん? ここだと獣人はフーマルさんしかいないわけで。まあ、そもそも私ここに来るときそのフーマルさんについてくるという形で来たわけなんだけど」


 ノエルがアンデールに来る切っ掛けはフーマルの存在がある。フーマルが外からきてそれに無理やりついて行く……そうすることで親を振り切って村を出る、のが目的だった。ずっと閉じ込められたままで生活するのは嫌だったからである。そういうことでフーマルを好きだというわけではない。また特に好きになった、好きになるという理由もない。


「私が一番好きなのってたぶんハルティーアさんなんだよね」

「……え? それって、えっと、そのー」

「わかってるわかってる。なんていうか、個人的に男性相手に恋愛とかあまり考えられないっていうか。そもそも特定の誰かはあまり考えてないっていうか。そのうえで一番好きって言うか、男性よりもどっちかっていうと女性が好きだなーって自分でも思ってるし。なんだかんだ一番付き合いが長くて一番一緒にいて、楽しいとかがんばろって気になるのはハルティーアさんなんだなーって自分では思ってるからたぶん一番好きなのはハルティーアさんだって自分では結論付けてる」

「え、ええっと……」


 シーヴェも流石にノエルの爆弾発言には困惑するしかない。別に女性が好き、と言う点で大きな問題はない。同性愛は多少困惑や苦手意識はあっても基本的に世界全体では一応受け入れられるものとして見られている。もちろん一般的ではないという点やそれを受け入れることのできない人物、また他者同士はともかく自分を対象にするのはちょっといやだというものや個々の恋愛面ではなく子孫繁栄の点で子を残せないという点で受け入れられないというものもいる。まあ、魔物と人との恋愛すら、アンデッドと人との恋愛すらあるこの世界、特殊環境すぎるアンデール……アンデルク城では比較的受け入れられやすいのではないだろうか。

 ただし、それはあくまで互いに想い合う場合であること、またそもそもお互いに特定の相手との付き合い……まあ、つまりは婚姻や恋愛関係にある相手が否と言うことが条件に当てはまってくるだろう。ハルティーアはそういう相手ではない。既婚、それも王と結婚している王妃と言う立場である。そんな相手に懸想するというのはどう考えてもいいことではない……というか絶対に良くないことだろう。少なくとも真っ当に恋愛が成立するとは思えないし、仮にしたとしてそうなった場合お互いに危ないことになる。


「つまり……略奪愛?」

「あはは、好きだとは思ってるけど恋愛とかそういう方面かな? 自分でもちょっとそのあたりはわかんない」

「そう……」

「それにハルティーアさん、キミヤ様のこと好きじゃん? 私もハルティーアさんに嫌われているわけじゃないけど、そういう方面での好きじゃないと思ってる。っていうか、ぶっちゃけハルティーアさんに話してみたこともあるんだよね」

「えっ!?」

「立場的にダメ、とかキミヤ様が好きだからとか、まあいろんな理由でダメだと言われたね。気持ちは嬉しいけど、って」

「…………まあ、そうなるよねえ」


 決して成立することのない恋、あるいは愛……当人はそこまで想っているわけでもないが、恐らくは一番の気持ちは彼女に向いている……というより、ノエルの場合ハルティーアと疑似的な契約に近い関係性が作られている。そうであるがゆえに、ノエルの立場は結構特殊だ。もっとも本人は気づいていないが。


「あ、でも場合によっては受け入れられる可能性はないわけではない、って言ってたね」

「え!?」

「キミヤ様の許可とか、あるいはキミヤ様との繋がりが必要だとか」

「……もしかしてノエルもライバルに!?」

「あははははは。まっさかー。私はあまりキミヤ様相手とか考えてはないかなー。ま、他に特別相手が見つからないとかでじゃあキミヤ様でいっかー、とかそんな感じになったら考えるかもね」

「…………そ、そうなんだ」


 ノエルはそんなことはないだろう、と考えているしシーヴェもそうなればということならいろいろ恋愛方面の世話を焼くことを考えよう、などと考えている。ただ、将来的にどうなるかは本当にわからない。これはノエルに限った話ではなく……特殊な環境であるアンデール、アンデルク城、そしてそれらを治める公也と言う存在。それらがどう動くのか、どうこれから形作っていくのか。それ次第と言える部分も多い。



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