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アリルフィーラ・ハルティーア・ペルシア



「ペルシアの様子はどうでした?」

「大分精神的に参ってるわね。正直私もいろいろ不満があるわ……あの子に関しての扱いは流石にあり得ないと思うのよ」

「……私は気にしていないのですけど」

「リルフィはそれでいいのかものね。でも私やペルシアは元々政略結婚……祖国とアンデール、キミヤとの関わりを求められてのものよ。結婚だけではなくその後の子供、誰が次の王に付くかも重要なこと。アンデールへの影響力を自国が強く持ちたい、そういう気持ちもあるの。まあ私やペルシア自身はある程度祖国との縁は切れているのだけど。それでも全く気にしないでいられるものじゃないわ。特にペルシアはよりその想いが強い。自分自身の立場、求められる要求、そういった部分でどうしてもね」


 アリルフィーラたちは王女、公也という他国の王に嫁ぐのは基本的に恋愛的な関係で嫁ぐわけではない。もちろんすべてがそうであるというわけでもないだろう。公也とアリルフィーラは恋愛婚ではないが一般的な王族としてのそれともまた少し違う、お互いの関係性あってのものである。しかしハルティーアとペルシアは違う。公也との関係、アンデールとの繋がり、影響力などを求められての婚姻である。当人の感情は関係のない婚姻……まあ現在ではちゃんと普通の人並に相手に対しての想いはある。ちゃんと恋愛関係というか、愛情はある。

 だがそれでも、いや、だからこそというのはあるのだろう。公也のこれまでやってきたいろいろなことがあり、何とも言えない思いを二人は抱いている。アリルフィーラは割と公也のことを全肯定するきらいがあるため何とも言えないが、ハルティーアとペルシアの方は結構公也に苦労や不満を抱くようなことをされている……別に意図的にやっているわけでもないのだが、公也のしていることが結果的に二人の負担や不満なるようなことになっている、と言う話である。

 今までも色々とあったのだが、一番は……いや、今回ペルシアが参るような要因となったのはちょっと前にアンデールに来た一人の人物が原因である。


「まさか養子という形をとるなんてね」

「……私たちに子供ができていませんから、将来のこと思うと今のうちに次に王位を継げる人材を、と考えたのではないでしょうか」

「だからって養子はないでしょ。そもそも通常次の王位を継ぐのは王の子供、血を引いている人間じゃないといけないわ。仮に養子にするにしてももうちょっと誰を選ぶかはしっかりしていないと……いきなり連れてきた子供を選ぶのもおかしな話でしょ」

「それは……わからなくもないですね」

「何処との関係もないから悪くはないのかもしれないけど……」


 養子、子供のできないアリルフィーラたちの現状を考えると次の王となる人物、王位継承を行う人物の存在は重要となる。これは三人の問題ではなく公也の問題、存在的、神としての立場や扱いの関係で子供を作れないという事情を持つこともあって子供ができずアンデールの王となる存在が生まれない。国として次の王の座が決まっていない状態は国としては安定しない、不安を抱えた状態となるだろう。それゆえに養子でも子供を迎えるのは判断としては間違ってはいない……根本的に子供が生まれない状態がそれぞれの立場としては間違っている気がするところではあるが。

 ただ、その相手として選ばれたのがクシェントラというのが問題である。いや、そもそもどこの誰とも知れない相手を迎えるということ自体が問題だが、彼女の場合はさらに公也との対立、敵対的な関係、心情、意思があるのが問題の一つと言える。アリルフィーラたちとの関係もない、どういう相手かもわからない相手を子に迎えるというのも母親の立場になる彼女たちには難しいだろう。どう頑張っても、そもそもこの状況が問題でどういう形であれ真っ当に子ができない限りは問題を抱えることになる。

 そしてそういった諸々の問題は三人……特に三人の中で一番精神的に脆いペルシアに多大な影響を与えている。アリルフィーラはその辺り全く気にしないので彼女は問題ないが、ハルティーアは色々と複雑な思いをペルシアほどではないが抱えている。ただ、ハルティーアはなんだかんだ政治的な部分への関わりも深いしいろいろな面での覚悟、強固な石は存在するためまだ大丈夫だ。ペルシアは三人の中では一番真っ当でふつうの女性であり、公也との関係も愛情はあるが同時に対立的な心情、恨みと言うか憎しみと言うかよくわからないが黒い感情、心情が存在することもあり、どうしても養子の存在を受け入れづらい……真っ当に、普通に成立する状況以外の異常な状況を彼女はとても受け入れづらい。それゆえにもう精神的に参り、城の奥、自分の住む場所に閉じこもっている。もともと外に出てくることも珍しい彼女だが、完全に公也との関係に亀裂が入ったというか、深い溝ができたような状況になった。

 これに関してクシェントラの方は受け入れてはいる……別に王になることがどうこうとか、公也との縁や関わりが同行とかそういう細かいところはどうでもよく、とりあえず自分の状況を良くしたいということでの受け入れだ。後々のことを考えて……となるとそもそも公也の場合は寿命的にいなくならないという部分もある。クシェントラも将来どうなるかわからないところもあるし、何とも言えない部分も多い。ただ、アンデールの運営、環境を維持する、継続するという点ではクシェントラが次の代でも問題はない。だから誰でもよく、クシェントラが完全に一人、孤立していることもあり受け入れやすいというのもあったのだろう。


「でも公也様が決めた事ですから」

「私や周りの人間との相談なしに勝手に決めないでほしいわ。キミヤももうちょっとお互いの立場とか、仕事の事とかさあ……」


 ペルシアは公也に対して拒絶的な反応をするのに対し、ハルティーアは今回の件で公也に対する不満、愚痴を話して対処している。その内容を聞くのは公也本人かハルティーアの手伝いをすることも多いアリルフィーラ、また秘書的な立場のノエルだったりといろいろあるが、今回はアリルフィーラが聞いている。立場的にもハルティーアに近いし、素直に話を聞き同調しやすいのが大きいだろう。今回の件に限らず、割と公也がしていることに対しての文句をハルティーアが持っていて結構聞く機会は多いようだ。


「それにしても、人ばかり増えるけど……これ以上は増えないわよね?」

「別に人が増えるのは悪くないと思いますけど」

「ああ、別にこの国に人が増えるのは良いの……ここアンデルク城に、なんというか女性ばかり増えているでしょう? まあ女性しか増えないわけでもないけど。大体が何というかキミヤが連れてきているというか」「

「……まあ、そうですね。ちょっと公也様の女性関係は複雑ですよね」

「そうなのよ……変に王妃としての立場の女性が増えることはない、側室すら増えるようなことはないのは良いんだけど、なんと言うべきなのかしらねえ……」


 公也の女性関係は少々複雑と言うか……別に複雑ではないが、ちょっと一人の男性が関わる数としては多いのではないかと思うところである。いや、そもそも一般的な社会倫理、男女の付き合いの事情を考えればそもそも一対一以外は普通ではない、多いと認識するところだが。貴族や王族ともなれば複数の女性を妻とする、妾を持つということはあるから決して公也のそれはおかしな話ではない……ただ、それでもちょっと多いというか、迎える女性が扱いとして複雑と言うか面倒というかそういうことが多い。

 今回養子にすることにしたクシェントラを見ればよく分かる。邪神の力を持つかつて公也と敵対し殺し合った関係の女性、生まれ変わったに近い状況にあるとはいえ、それでも決して受け入れづらいはずなのに受け入れている。そのほかも魔物だとか攫ってきたに近しい他国の王女だとか、別大陸の魔法道具を制作している女性とか、ともかくその女性の立場や関係性は複雑で厄介、面倒くさいところが多いものだろう。しかも女性との関係は恋愛的でないことの方が多い……真っ当に公也を想う気持ちがあるのは王妃三人、この城そのものであるペティエットや最初の方からいるヴィローサ、別大陸で縁を持ったシーヴェなど。ミディナリシェやアディリシア、夢見花や雪奈など関わりの浅い女性も深い女性は多いが恋愛感情を抱いているとなると現状はそこまででもない……いや、関わりのある女性のおよそ半数ほどと考えれば多いのだろうか。いや、そもそも複数人いる時点で多いとはいえるが。


「私は別に気にしてはいませんけどね」

「いや、リルフィが一番気にするべきでしょう……」

「公也様の味方が増える分にはいいことだと思いますよ?」

「恋愛的観点で見てよ……」

「私は公也様とお互い想い合うだけで十分ですから」

「はあ……私が気にしすぎなのかしら…………?」


 ハルティーアの方が一般的な観点と言えるだろう。アリルフィーラは本人の性癖もあって自分が一番でなければならないとか、そういうことはなくむしろ少々蔑ろにされる方が嬉しいというか興奮する部分もある。もちろん決して捨てられていいというわけではなく、ちゃんと想い合う状況であることが維持されているのが前提だ。まあその点に関しては彼女は公也にとっては特別……唯一互いに想い合う切っ掛けがあるというか、流れでそういう繋がりができた相手ではない、お互いの想いから今の状態になっているという点では特別である人物なので問題はないだろう。他がそうではない、と言うと若干違うが、なんというか最初に恋愛的な繋がりや切っ掛けがあってそうなっているわけではない。まあその点でいるとアリルフィーラも厳密には違うが、公也の抱いたアリルフィーラへの興味が最終的に恋愛的な心情へと変化しているような形なのでその点ではアリルフィーラが唯一特別であると言える。

 もっとも、そもそも公也は恋愛的感情を抱くような精神性をしていないのではという疑いがある。本人の性質は邪心に与えられるほどの力である<暴食>、それに由来するかあるいはそれを得るに由来する精神性や本質を持つもの。公也は受け入れる、自身に取り込み吸収する……食らい取り込む性質が強く、それゆえに恋愛的なそれとは若干違う考え、精神性をしている。相手の気持ちを受け入れる……ゆえに公也が想っているとは限らない。相手としては不満を抱く部分、要素かもしれないが、そのあたりは個々の価値観や考え方によるものなので何とも言えないところである。


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