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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五十章 呪いの地
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 どこか遠くの森の中。モスマンたちが集まっている。


「シィィィ……」

「シィアァアァ……」


 モスマンたちが集まっている場所は地脈の巡りの強い場所。大地の力の大きな場所である。世界を巡る大地の魔力、それを元に様々な方向性に力を向ける……モスマンの場合はその力を自分たちの呪い、モスマンを生み出す呪いの力として扱うようになっている。モスマンたちが地脈の流れのある場所に良く現れるのはそれを目的にしている……流石に彼ら自身がその力を使うわけではないが、その力を使うための起点となる地点を求め探している。今回公也たちが遭遇した爪みたいな代物を設置するための場所として。

 そして今、爪が破壊されたためその力逃げたモスマンたちがその候補となる地点……単純に地脈の巡りだけではなく、周囲に危険がない場所や人間などが派遣しにくい場所として見られる地点に集まり、爪のようなものを設置するために活動している。


「シアアアアアアア」


 モスマンの一体が大きな声を上げる。モスマンたちをまとめるようなリーダー、若干の特殊な個体であるそのモスマンは大地にその手を撃ちつける。地面に刺さる爪、それは少し、様子を変化させる。

 ヴァンデールが破壊したモスマンの爪、厳密にはモスマンへと変化した爪であるが、それほど大きくはないにしてもある程度の大きさのある爪……もともとのモスマンの大きさがそのまま爪のみになったような大きさで変化している。


「シィィ」

「シィァア」

「シゥゥ」

「シュィァアア」


 そして大きくなった大地に刺さった爪に対しモスマンたちが集う。わらわらと爪に集まり……その姿は消えていく。厳密に言えば、爪にモスマンたちが触れ、モスマンたちの嵩が減っていくかのように消えて行っている。そしてそれに比例するように刺さった爪が大きくなっていく。流石に地下にあった爪ほどの大きさにはならないが、ある程度の大きさにはなる。圧倒的に量は減っても呪いは宿る。モスマンたちに宿る呪い、それが一つの爪に集まり強大な呪具となる。それがまた次モスマンを生み、そして呪いを増やし強大な呪具となっていく。

 結局のところモスマンが生き残っている限りなかなかモスマンたちの発生起源、原因となる呪いが消滅することはない。モスマンたちを消し飛ばし、その大元の呪具を破壊しなければ根本の解決にはならないだろう。しかし今回ヴァンデールたちはモスマンの総数を大きく減らし、また強大な呪具である刺さっていたモスマンの爪を破壊出来た。もちろんまだまだモスマン関連の代物はあるし、こちらの大陸以外の大陸にも散らばっていることは確実で、さらに言えばモスマン自体もなんとかしないと解決はできない。

 だがこうして大きく力を削げたのは大きなことだろう。またあの地下のような発見の難しいような厳しい物とくらべればただ刺さっているだけの爪であれば発見しやすいことだろう。もっとも今回は公也たちが見つけたようなモスマンの像を内包した人の像のような奇妙なものはないため、意外と発見は難しいかもしれない。その点では決して簡単とは言えないかもしれない。







「しばらくここにいるんだ?」

「うむ。我輩もどこに行けばいいのか今のところ特に指標もないのでな。我が占いもどこに行けなどと言う感じの情報補は無いし眷属もいる。どうせなら少し遊んだところで罰は当たらんだろう」

「そっか。まあ、おじいちゃんがどこかに行っても行かなくてもあんまり変わんないんだけど」

「それはそれで寂しいいんですけど!?」


 どうやらヴァンデールは暫くアンデールにいるようだ。モミジがいる、などの理由はあるがそもそも彼もモスマン退治に出向く以外の目的がなく、モスマン退治に関しては情報がなければ動けない。今回その情報を公也が持っているからアンデールに来たわけであるが、そういったモスマン関連の情報がどこにあるのかあっさり見つけられるわけでもない。まあ彼の占いは超高性能でなんとなくここにいけばいいな、と言うのがわかるため実際のところそこまで一か所にとどまるようなことはないだろう。しかし彼はアンデールにとどまることを選んだ。

 理由の一端である眷属に関しての話もある。ただ、そこは眷属関連だけではもちろんなく、アンデールにいるのが自分にとっていいことである、あるいは何か都合がいいことがあるから、ということでもある。何の指標もなく出歩くよりは大人しくして情報が入ってくるのを待つ方がいい……彼の移動能力であればどこかに行くのも苦労するものではないのだが、その移動能力、情報収集能力を考えても、である。


「それは都合がいいかな」

「特訓になるもんな」


 セージとセイメイにとってもモミジと言う彼の眷属の仲間であることから色々と教えを請う、鍛えてもらえるため悪くない。


「私も勝てるようになりたいなあ……!」


 そして戦い負けを経験しているリーンにとってもアンデールに残ってくれるのは戦える回数が増えるので都合がいい。その他にも彼の存在は決して悪いものとして認識されてはおらず、だいたいは好意的に受け入れられている。




「しかし、あのような存在があるのはまた大変なものですね」

「そういえばアンデールにも出てきたことがあるみたいなんだよなあ……」

「一応この地への侵入はある程度探知できます。ですがあまりこの地……この城の領域から離れると把握しきることは難しいですね」

「地脈関連の話になる。城周辺は地脈の流れ、ペティエットの関係で力が集中しそういう存在、その力を求める存在が現れやすいこともある。そのモスマンと言うのがそういった特殊な存在であればアンデールに現れる可能性は決して珍しくない」


 モスマンはかつてアンデールにセージたちがモミジを仲間にしたころに現れている。今回の件でモスマンと言う存在の危険性、脅威を改めて認識しその存在について語る。呪いの存在であるそれは呪いの源となる力さえあればその力を強めたり増やしたりもできる。アンデールはその危険性のある地域である。だからこそ現れたわけである。呪いの力を持つ観点よりは、魔法的な観点での方がその方面の知識に関して話ができる。そういうことで夢見花がその危険、内容に関して触れた。


「面倒だな」

「感知のための結界、調査の魔法陣、対策はある。それにカシスやヴィローサで発見できるのであれば探るのは難しくないし、そういった存在を除ける手段もある。ただ、あまり広い範囲、遠い場所に間では届けられないとは思う」

「少々厄介ですね」

「まあ……多分そういうのが来ればモミジやヴァンデールがわかるだろう。ヴァンデールはともかくモミジはアンデールの冒険者だからモスマン対策は何とでもなると思う」

「それならいいけど」

「……しかし放っておいていい相手ではありませんね。今回公也様が赴いた地であれほどの数、そして危険な代物がありました。私やヴィローサでも手の届かない脅威です」

「カシスやヴィローサでも手が届かないというのは厄介。積極的に探すとまではいかずとも見つけやすいようにすることや情報収集を可能とする手段を考えておくのはいいことかもしれない」


 今すぐやらなければいけないというわけでもないし、そもそもどこかに行ってモスマン関連の代物に遭遇するとも限らない。しかし何かあった時対処できるように、あるいは何かあると見つけられるように。幾らかの対応手段と情報収集はしておかなければいけないだろう。それが決して必要であるというわけでもないが……あれば都合がいいというか、便利というか。場合によってはヴァンデールやモミジに伝え色々とできることもあるかもしれない。まあ、結局は今すぐできるわけでもないが。



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