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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五十章 呪いの地
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「消し炭にしてもまだ復活するか……」

「どこから湧いてきたんでしょう。これだけの数、外にもいなかったような」

「いた可能性はあるが……原因があれだと考えれば、あれが何かすれば勝手に発生するとか、あるいはどこかに眠っているとか隠されているとかもあるかもしれない。ここに来る同中に発見できなかったが。まあ復活することを考えれば何らかの形で置かれていたとかもあり得るかもしれないが」


 モスマンたちは公也が魔法によって焼き尽くしてもまだ復活する。粉砕して肉片にしようと、欠片しか残らない程度に圧縮しようと、どのような形にしようともモスマンたちは復活する。呪いによってそんなことができるのか、と言うのはかなり疑問があるのだが実際目の前ではそのようなことが起きている。こればかりはもしかしたらモスマン特有のもの、あるいはここからも見える地下に刺さっている爪の影響があるからなのか。

 ともかくモスマンたちは復活して公也たちを襲っている。公也は一切問題なく相手でき、セージたちも公也の助け合ってなんとでもなるが、やはり数が来ると面倒くさいというのがある。それも制限がなく襲ってくるのだから厄介だ。公也も魔法は多少の使用で魔力が切れるようなことはないが、手間もかかるし苦労もある。精神的疲労ばかりは無くすこともできない。


「しかし、あの爪もよく頑張るもんだ」

「頑張るとかそういう物でもないでしょう。ただの爪ですよね?」

「ただの爪があんな風に生物を発生してきたり、それにヴァンデールが苦労するわけもないだろう。そもそもまともに近づけない時点でおかしすぎる。近づけるのはヴァンデールくらいなんじゃないか?」

「多分私も近づけると思うけど」

「……つまりヴァンデールの関係者じゃないと無理なんじゃないかと思う」


 爪の持つ呪い、それによる作用で近づけない。しかしヴァンデールは近づける、ヴァンデールの強さは下手をすれば公也以上ともいえるほどこの世界では異質の強さである。強さ的に爪をどうにかするだろうという信頼はある。そもそもの目的、モスマン関連への敵対意識なども考えれば確実になんとかするだろうというものでもあるだろう。


「まあ、こちらはこのモスマンたちをどうにかするしかないな」

「でも倒しても倒しても復活するんじゃ正直……」

「それは分かる。カシスで多少呪いの除去はしているが、追加で入ってくるから限界があるな」


 カシスによって呪いへの対処はしているが、そもそもモスマンの含有する呪いは爪と比べるとまだ干渉はできるがそもそも干渉しづらいものであり、さらには爪が何度も波動として送ってくることもあり際限がなく、一時的対処にしかならない。そもそも復活してしまえば呪いを消してもある程度は動いてくることもあり呪いに干渉しても若干厳しい面はある。まあそこにはヴィローサが毒を与えることで行動不可能にできる。カシスの呪い除去とヴィローサの毒の付与で動き自体を止めることは可能、といったところだろう。

 もっともそれでもやはり際限がないというのが大変な事実である。


「ヴァンデールには早く何とかしてもらわないと」


 最悪公也が<暴食>を使い対処する必要があるかもしれない、などとも考えている。まあこれは公也としては微妙に感じるところであり、ヴァンデールに不満を持たれる可能性と呪いを食らうことによる悪影響があまり好ましくない事実となり得る。流石に邪神相手にした時とは違ってくるのだろうが、それでもいい物でないだろう。特にモスマンはかなり特殊なもの。流石にこの力を公也に供した存在のこともあってこの程度なら問題はないと思われるが、それでもいいとは思えない。結局ヴァンデールに任せるのが一番だろうと公也は考えている。







 そしてヴァンデールの方は身を削りモスマンを生み出している爪の本当に間近にまで近づくことができた。


「ふむ。ここまできてようやくか。モスマンどもを排除するのは大変だったぞ?」


 誰に言うでもなく……いや、爪に対して言っているのだろう。爪に意思があるのかないのかは不明だが、意図的にモスマンを生み出していることから少なくともヴァンデールに対する認識はあるのだろう。そして近づいてきたヴァンデールを認識し、モスマンたちを生み出し……はせずに今度は爪自身がぶるりと震えた。


「む?」


 爪は解けるように小さくなっていく。


「シイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「ほう」


 爪はモスマンの姿を取った。広い地下空間に遠くからでも巨大に見える爪、それが縮小した。一般的に生物は巨大な方が強い。ただ、基本的にこの世界においては縮小すると少し話が違う。肉の圧縮、密度、一転に力を凝縮するそれは大きいことよりも強いことがある。全体に分散している十の力を一点に集めれば当然強大な力となる、ふわふわした綿あめとその元であるザラメではザラメの方が硬い、みたいなものだろう。大きければいいというわけでもない。ただ、大きければその分広範囲を攻撃できるという利点はあるし、一派的には巨大な方が生物的には肉体的に強い。そもそも生物の肉体を圧縮し肉体の密度を高めるというのは一般的な生物では無理だろう。生物の強さを決めるのはどちらかというと存在の格であるとかセイメイエネルギーなどの要素であり質量的なもの、肉体の密度などではないだろう。

 しかし、今回の場合はやはり物質的な密度がそのまま強さに繋がる。小さくなることで大質量を圧縮し、肉体的な格を高める。また肉体の全域に分布するエネルギーを一か所に集めるというのも要素的には大きいだろう。


「ふむ。先ほどのように突き刺さった大きな爪では破壊するのは少々面倒だったがな」

「シィィ!」

「しかし、小さくなったのであれば」


 モスマンとなった爪があっさり粉砕される。ヴァンデール相手に大きい小さいは一切関係ない。そもそも大きかろうと小さかろうとヴァンデールの方が格上である。まあヴァンデールの場合大きなものを破壊するのはそれ全部を破壊する動きをしないといけないためちょっと面倒くさい、という気持ちはあった。しかしその程度、破壊するのであればどちらにしても大した苦労はない。小さい方が破壊はしやすいだろう。ただ、小さい今の状態だと動くことができるという点で厄介さはあった。今回モスマンとなった爪が果たすべき道筋は逃げることだっただろう。もっとも逃げ切れるかどうかは怪しい。そもそも爪の状況から変化したことで呪いの状況が大きく変化した。どうしようもない状況にある。


「ふむ。弱い弱い。なんだ、まだ滅びぬか。ならば滅びるまで……」

「シイイイアアアアアアアアアアアアアア!!」

「やってやろうではないか」



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