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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五十章 呪いの地
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「おっと! 流石に、この数は、きつい!」

「いやいやいや!? 多すぎんだろ!?」

「矢尽きるって! 多すぎ!」

「絶対抑えきれないから! っていうかなんとかできない!?」

「頑張れー!」

「リリエルここじゃ戦力なんないもんなあ!」

「森の中だとすっごく活躍してたんだけどね!」

「仕方ないよー!!」


 大量のモスマン相手にセージ、セイメイ、モミジ、サフラが頑張って戦っている。リリエルは戦えないわけではないとはいえ、彼女の特殊能力頼りなところが多く基本的にこの地下では戦闘は厳しい。自然、植物のないこの場所ではまずどうしようもないだろう。そして外ではそれらを用いて戦った結果多くのモスマン相手でも戦えたが、流石にこの場所では開けていることもあって相手の数が多い状況、戦闘はセージたちにとって極めて不利な状況になっている。


「私が幾らか抑えはしますが」

「ありがとうございます!」


 カシスが呪いの力にてモスマンたちに幾らかの悪影響を与える。もっとも相手がもともと呪いによって発生した相手だからか、効果自体は薄い。そしてそもそもの戦力が五人、一人減って四人なうえに強力な戦力と言うのが少ない。技を使うにしてもセージとセイメイが技を使える数と言うのもあまり多いわけではない。そしてサフラの技は威力が絶大だが本人が使い物にならなくなるため、現状で使うわけにもいかないだろうと思われる。


「ですが流石にこの数は……」

「私は手伝わないよ」

「ヴィローサ。ですが公也様にとって彼らの喪失は大きな損失ですよ?」

「む」

「無意味に何もしないのは心象的にも良くないですし……」

「わかったわよ。はいはい」


 カシスの呪いでも相手の数が数なので厳しいが、ヴィローサも参加すればかなり有利になる。というかヴィローサの力は自然寄りの力で特に何か力を消費するとか制御に負担があるようなものでもない。カシスのような方向性の付加、様々な対象に選択して与えるみたいなことも面倒くさい。ヴィローサの場合も毒の発生は色々とあるし、毒を操るにしてもそもそも持っていないとダメとかあるが、慣れと把握とその力の性質上かなり有利にその力を使い毒を操作することができる。

 毒の操作、発生の速さ、そしてそもそも肉体を持つ相手に有効な毒は多く、ヴィローサも使い慣れているためモスマン相手でも問題なく発生できる。もともと呪いから生まれているが故に呪いに耐性があるためカシスの呪いの操作の影響が薄れたとしても毒に関しては話が別、ヴィローサの力によってあっさりバタバタと倒れ始めるモスマンたち。


「うわ。俺たち苦戦してたんだけど」

「……やっぱりちょっと反則だよね、こういうのは」


 倒れたモスマンに止めを刺す仕事……地下に降りる前に公也がやっていたようにヴィローサが一人いるだけであっさりモスマンでも相手ができる。しかし、そんな風に始末をつけようとしているところにまた爪の方から呪いの波動が放たれた。


「危ない……いえ、これは」

「あん?」


 毒で倒れたモスマンが起き上がる。毒は消えていないはずなのにモスマンは立ち上がった。それが起きたのが今の呪いの波動が通り抜けたところ。つまりこの呪いが何らかの作用を起こしたと考えることができる。カシスもそれに関しての把握が早い点から呪いが関連しているのが推測できるだろう。


「起きた。しかもこいつら毒回ってるはずだけど」

「……呪いの力で動かしているようです」

「へー。あれ、私でも干渉が難しいんだけど」

「私もです。呪いも毒、ということで呪いに干渉できるヴィローサでも、呪いの力を持つ私にも干渉できない恐ろしいまでの呪いの力……あの突き刺さっていたやつの力と同室の異質な代物ですね」


 倒れたモスマンたちを動かすのは呪い。肉体に毒による作用が起きようとも、呪いそのものがその肉体を操作する。肉体機能は一切関係なく、呪いの力のみで干渉し動かしている状態だ。そしてその呪いの力に対してヴィローサもカシスもあまり干渉できない。一切干渉できないわけではないが、呪いの力は変質し干渉自体を無効化する。さらに言えば満ちる呪いの力、さらなる波動、繰り返し波動が放たれれば無意味になり一時的な影響をもたらす程度にしかならないだろう。


「とりあえず干渉します」

「え? 私もやらなきゃだめ?」

「呪いも毒なのでしょう? であれば呪いにも干渉できるはずです」

「はいはーい……」


 毒の操作と干渉、呪いの操作と干渉、完全に支配を奪えないし、更新されると元に戻るがそれでも一時的にでも干渉でき、相手の動きを鈍らせることができればそれだけでもいいだろう。


「大分マシにはなったけど!」

「流石に大変だ。そもそも地力の差が……」

「私だけでも頑張らなきゃダメかなっ!」

「矢がー! 尽きるー!」

「外でも戦ってたから足りないね」


 流石に数の利でモスマン側が有利である。呪いや毒の干渉で多少動きを阻害しても、それでも相手方の方が有利。そもそものモスマンの強さが上であり数もかなりの数存在しているためどうしてもそうなってしまうのは仕方がない。とはいえ、多少モミジが動きの鈍ったモスマンたちを相手にしつつ頑張っている。武器や技などを使用しない素手のモミジは肉体一つでいいためかなり戦いやすくはあるだろう。


「矢! 足りないから! 最後技行くよっ!!」

「仕方ない! 頼むよ!」

「逃げろーっ!」

「わーっ!」


 サフラが矢を上に放つ。地下がかなり広いため上に矢を撃っても天井に当たることがない。刺さった爪の大きさを考えれば矢を頭上に撃っても問題ないくらいの広さとなっている。そして上に放った矢が、地上に落ちる。高威力のその矢は相手を確殺する威力、モスマンを確実に貫く。一体しか穿つことのできない矢……というわけでもなく、彼女の放つその矢は雷の如く。地上に落ちて爆砕するような破壊を引き起こす。ある程度まとまっていたモスマンたちが爆砕するモスマンや地面によって、吹き飛んできたそれらによってダメージを受ける。どうせなら相手の近くで技を使えば雷の花の形の防御でダメージを与えることもできたと思われるが、流石に放った後行動不能になることもあってそうするわけにもいかなかっただろう。

 ともかく、少々ダメージを与えることはできたがやはり数の時点相手が有利でなかなか厄介な状況である。矢が尽きたため戦力に加算することはできないサフラ、能力の性質ゆえにほぼ戦力になりにくいリリエルは二人で下がり、モミジとセージにセイメイがまた前に出る。カシスとヴィローサは後方の二人よりも後ろにいる。そこから能力で関わっているが、やはりなかなかそれだけでは状況はあまり変わらない。


「うわっ!?」

「何か飛んで……」

「誰!」


 苦戦しているところに斬撃が飛んできてモスマンたちを斬り飛ばす。全てではないが前の方にいたモスマン数体が斬られその体を零れさせる。


「俺だ」

「王様! やるじゃん!」

「向こうは良いですか?」

「ヴァンデールがなんとかするらしい」

「おじいちゃんが?」

「そもそも俺はなんか近づけないようだからな。それよりも……どんどん増えてくるこいつらを優先する方がいいだろう」


 呪いで近づけない公也はセージたちに合流し溢れるように地下に現れ向かってくるモスマンたちを倒し始める。カシスやヴィローサの手助けもあり相手の動きは鈍り、また公也であれば倒すのに剣も魔法も能力も使い放題、相手の数が多かろうともなんとでもなる。しかし、相手の数もまた特殊、際限がないように見える。ただ倒されただけでは先ほどヴィローサが毒で倒した時と同じで呪いで再度動けるようにされる……どころか、斬ってバラバラになった状態のモスマンですら呪いで接合して動いてくる。粉砕されようとも肉体が残っていれば動いてくる。またそうできずとも、まるで取り込むかのように他のモスマンに集まり動くようになってくる。意外と結構厄介なものである。




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