表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五十章 呪いの地
1610/1638

18






「あれが……大本でいいんですか?」

「うむ」

「そうだね。なんかすっごく嫌な雰囲気と言うか……」

「モスマンたちの発生源、モスマンを生み出す力の源。そうみていいだろう」


 ヴァンデールとモミジは突き刺さった巨大な爪らしきものに対してモスマンたちの根源であると断言する。


「カシス、ヴィラ」

「言っていることは間違いないと思います。これほどの呪い……あれは確実にまともなものではありません。仮にモスマンとやらとの関連性がなくとも、この地を侵す強大な呪いの源です。放っておくわけにもいかないと思います」

「とんでもないものだってのは間違いないですわ。この世を侵す毒、危険すぎるものです。っていうかあれ、私もちょっと支配できない、干渉しきれない……すごく危険なものだよ」


 カシスとヴィローサも呪いと毒の観点から巨大な爪らしきものから危険だと断言する。そもそもカシスとヴィローサは呪いと毒のエキスパート、あるいはプロフェッショナルと言ってもいいそれらに対する絶対に近い力を持つ。もちろん完全完璧ではないが、ただの呪いやただの毒、有しているだけ保持しているだけ程度であれば好きに支配を奪い操れる。多少支配するだけの能力があっても、例えば毒を持つ生物の毒をその生物の制御下から取り上げる、呪いを誰かにかけているとかそういうものに対しても彼女たちは能力を使い干渉できる。

 しかしそれができないほどに強大で支配力も強い、極めて特殊な呪物と言える。モスマンと言う一種族、特殊な生命を発生させるほど強力な呪いである以上間違いなく強力な代物だ。そしてそれを放置しておくのは危険である。


「とりあえず……破壊するか」

「うむ。そうしよう」


 公也とヴァンデールの意見があい、巨大な爪らしきものを破壊しに広場を進む。爪か牙か、厳密には断言できないがとりあえず巨大な爪らしきものとして表現するべきそれを破壊するため真っすぐ進もうとする。しかしそれは何らかの意識があるのか、あるいは何か防衛機能でも存在するのか。その力を解放する。


「っ!」

「む!」


「っと」

「危ないですね。流石に死ぬようなことはないにしても確実に体調は悪くなるでしょう」


 巨大な爪らしきものはぶわっそのエネルギー、内包する呪いらしきものを放つ。それは特に指向性方向性もなく、仮にその呪いの力を受けたとしても体調が悪くなる程度で済むだろう。ただ、体調が悪くなると言ってもちょっと気分が悪い程度ではなく、その場に倒れ伏してしまうかもしれないくらいに強力なものだ。しかし流石にそれは危険だろうとカシス、そして公也に悪影響が及ぶだろうとヴィローサも毒の操作の力で干渉し防ぐ。爪らしきものそのものに対しての干渉はできないがそれから放たれ制御から離れた力には干渉できるようだ。


「危ないな……」

「最後の抵抗というやつだろう。我輩であればあの程度何ともならぬがな」

「……そうなのか?」

「ちょっと不快なだけだ、あの程度ならばな」

「そうか」


 ゆっくり近づく公也とヴァンデール。距離的には結構あるらしく、少し歩く程度では近づけない。


「……あれ?」

「遅いぞ。何をやっている」

「いや、近づけない……?」


 しかし途中から公也とヴァンデールの距離が離れ始める。歩いているのに、公也は巨大な爪に近づけない。ヴァンデールは近づくことができるが公也は歩いているのにまるで壁があるかのように先に進めない。意図的にそういう動きをしているわけではなく、なにか空間的に固定されているような、壁があるような、それとも違う場所を変えられない状況にあるような極めて特殊な状況である。


「ふむ……あれの干渉か」


 ヴァンデールは爪を見る。呪いの力を持つそれはこの地への空間そのものに対して呪いを介し特殊な干渉を可能とする。世界を呪うというほどの特殊なことができるほど強い力、それほどまでの呪いの力を秘めている。


「あれの破壊は我輩に任せよ」

「そういうわけにもいかないと思うんだが」

「もともとあれは我ら、我輩のような存在が壊すべきもの、我が宿命と言える。部外者に頼るのもおかしな話よ」


 情報ばかりはどうしようもないが、実物を前にすれば流石に彼も自身のやるべきこと、できることは分かる。感覚的な超常的な、そんな手段での情報を得ることができないだけで己が宿命はわかるもの。


「むしろあれよりも我が眷属の方を任せたい」

「……モミジのことか?」

「向こうを確認すればわかる」

「……っ、モスマンたちか」

「ついてきたのか、それとも先ほどの波動を機に活動を再開したのかはわからぬ。しかしこの地下に現れ我らの脅威とならんとしていることは間違いない。我輩が倒しても別に構わぬが……あれをそのままにするのも良くないだろう。あれを破壊するのは我が仕事であるし、ここで暴れるのは我輩の力では危険すぎる。崩落しては我輩はともかく他の者は死にかねんだろう。それはよくなかろう」

「……そうだな」


 モスマンの地下への襲撃、後方にいたセージたちはその攻撃を受けている。わらわらと地上から下に降りた公也たちを追いかけたのか、あるいはこの地下に何らかの形で眠っていたのか。それはわからないが、現在モスマンが地下に来ていることは目に見えて確実なことである。セージたちも相手をできなくはないがリリエルの特殊な力を使える森の中ならともかく緑のない地下では明らかに不利、開けた場所であるこの場所では彼らも数の不利でかなり負ける危険が高い状況である。その状況を放置はできない。ヴァンデールは爪の方に破壊を目的に向かうつもりなので公也に任せる、と言うことになった状況だ。まあ公也はその場所に近づこうとしても近づけない。であればセージたちの助けとなるのは別に悪いことではないだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ