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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五十章 呪いの地
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「…………凄い数ですね」

「こっちは王様やったのかな。おじいちゃんが倒したのは森に転がってたけど」

「肉片でな。ありゃ凄いわ」

「ほんと」

「みんな強いー……」


 公也たちとヴァンデールがセージたちに合流し、地下への階段のあるモスマン像の前に来る。それまでの道中、セージたちの周りにはセージたちが倒したモスマンたちが。幾つかばらけているがヴァンデールが倒しただろうぐしゃぐしゃになっている死体や肉片が。そしてモスマン像の前には公也たちが倒した死体が。成果だけで見ればわかりやすいのは公也、結果状況だけで見ればヴァンデールが成果としては大きいだろう。セージたちも頑張っているが人数的にむしろ他二組よりも多い数を倒すべきだが、そうはできていない。そのため若干気落ちしている。

 まあ、彼らの実力と公也やヴァンデールは本来比べられるようなものでもない。モスマンたちを相手に抑えて優勢に戦えるというだけでも優秀な冒険者たちと言える。この点に関してはそもそも公也とヴァンデールが異常なだけだ。


「しかし、確か人間の像だって言ってたと思うんですけど」

「ああ……そこに転がっているガワが人間の像だったものだ」

「え? 破壊したんですか?」

「像あるけどどういうことー?」

「どういうことなんです?」

「像の中に像があった」

「像の中に?」

「へー。なんか変な感じがするな?」


 像の中に像がある、箱の中に箱があるみたいな感じであまり大きな意味がないのではと思うようなものだ。例えば像の中に何かを隠すということはありえなくもないだろう。薬とか財宝とかそういう類のものを隠し保管する、あるいは禁制であるため運搬のために隠すなどの意図がある。今回においてはモスマンの像があったという点でモスマンの像を隠したい、また地下への階段を隠したいという意図はあるかもしれない。どう考えてもモスマンの像や地下への階段は怪しい代物だ。またヴィローサとカシスの把握している呪いの発生源、溢れる道筋として階段、地下への道がある。地下に呪いの何かがある、と考えればそれを隠している像は怪しいと言える。

 もっとも隠しているという点では怪しいが、蓋をしているという見方をすれば必ずしも怪しいとは言い切れないところがある。呪いが溢れないように人の像を置いて蓋をしたとして見るなら像はどちらかというといい役割をしていたのかもしれない。もっとも像の中にわざわざモスマンの像を置いていたモスマンの在り方に似せている点や、そもそも地下への階段を隠す意図も不明、また呪い自体は像を置いても溢れてきているし、そもそも呪い自体をどうにかせずに蓋だけをする意味はあるだろうか。呪いをどうにかできないから責めて蓋をする、ということはあるにしても、やはりモスマンの像を隠すように置く意味は薄いかもしれない。そもそもこの場所をモスマンたちが守っているという点でいろいろ怪しいだろう。記録もない、近くに村もあるわけではない何があるかもわからない場所に存在している。やはり怪しい、怪しすぎる。


「とりあえず中に行ってみよう」

「確かに外であれこれ考えても仕方あるまい。明らかに嫌な空気の出てくる亜の階段の奥に向かうべきだろう……しかし、ここには虫が多いな」

「虫?」

「……うん、多いね」


 ヴァンデールとモミジは気づいているが、この場所には虫が多い。周りの樹々や草花、そもそも人など気にすることもなく、ヴィローサの毒の影響すら受けていない謎の虫。それらが飛び交っており、公也たちにとりつこうとしている。ただ、それらは公也たちに近づくことはできていない。


「それらは全て近づけないようにしていますので問題はありませんよ」

「ほう。あれらに気づくか」

「あれだけ呪いそのものと言えるような存在を察知できないわけがありません。皆様に埋め込まれた呪いもすでに除去しています」

「あー、流石に戦闘中だったら無理だったかなあ?」

「我輩はあれらに対処できるが我が眷属には流石に難しいか」

「戦闘中じゃなければできるよ!」

「何の話を……?」

「なに、モスマンが生まれるには相応に理由、原因があるということだ。それが虫どもなのだ。モスマンとは違う小さな羽虫どもよ」


 モスマンが生まれるには公也たちは詳しく知らないが虫による感染、それに近い物が必要となる。この地にカシスが呪いの気配を感じるのは当然、その呪いを媒介する特殊な存在、ヴァンデールやモミジの言う虫の存在がモスマンの発生のきっかけに必要になる。


「あまり気にするな。それよりもこの下へと向かおう」

「ああ、そうだな……」







「……深い」

「かなり進んできたのは間違いない。こんな近く深くまで続く階段は……怪しすぎるな」


 かなり深くまで階段を下りていく公也。内部は明かりもない人工の洞窟、その中を進んでいた。魔法で簡易に辺りを照らし先を進む。旧く像による蓋がされていた洞窟内は古びてはいるが決して崩れたり壊れたりしておらず、人の手も入っていないのに安定した状態を維持されている。空気も悪くない。


「………………」

「………………」


 何も起きておらず、特に語ることもなく。この場にいる者たちは先に進む。そして階段の終わり、その先に存在する広い場所へと公也たちは進んだ。


「……これは」

「凄まじいな。そしてこれか……これが原因か」


 大地に突き刺さった巨大な爪……もしくは巨大な牙。なぜそれが原因であるのか、モスマンたちとのかかわりは何なのか、そこは不明であるが、それが呪いの源であるということは公也達には一目でわかった。それほどまでに、それは禍々しく、大地を穿ちそこに存在していた。



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