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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五十章 呪いの地
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「数が多いなあ」

「わたしここだとあんまり戦えないよー」

「森の中だと樹々が邪魔で矢はあんまり撃てないね。私は全然平気だけど」

「俺も微妙だなあ。セージなんて槍だからやり辛いだろ」

「槍だけに?」

「寒っ!」

「リリエルは魔法が主……魔法かな?」

「魔法っぽいけど違うような違わないような……」


 妖精の子とも呼ばれる特殊な生まれのリリエルは特殊な力を持つ。妖精のような自然に関わる力、そんな特殊な力が魔法に近いものとして作用している。というか彼女のそれは植物に関わるものである。自然豊かの特に森の中などのような植物の多い場所では存分に力を発揮できる。自然に関わる妖精や精霊に近い力であることもあり、その力は特殊で強い。もっとも自然に依る力であるためあまり大きな変化をもたらす力にはならないが。

 それでも森の中では植物から情報を得ることができるし、また森であるがゆえに植物は多く力を発揮しやすい。相手がモスマン、仲間が長物や射撃武具であって微妙に戦いづらい状況でも彼女がいるだけで大きな有利になり得る。


「とりあえずモスマンたちを抑えてくれる?」

「はーい!」


 リリエルが森の中にいるモスマンを樹々を操作して抑え、数を少なくして自分たちに有利にする。樹々の操作はサフラが矢を放つのに問題がない様にするようにもされ、またセージやセイメイの戦闘にも影響が少なくなるように調節されている。それでも戦闘に有利になるというだけでモスマン相手は少々厳しいところはあるが。







「気配が濃い。ここにいるモスマンすべてを退治すればそれだけで大きな成果となるな」


 ヴァンデールは森の中、モスマンたちの気配を感じて笑みを浮かべている。


「しかし、なぜこの場にいるのか。そこまでは現状わからん。モスマン共の気配はちゃんと感じるのだが、それ以外がよくわからんことになっとるな。我輩これでもカンは鋭い方なのだが……前もあったな。モスマンの集落を発見した時、あの時はそこがモスマンどもの巣であったとはわからんかった。なんとなく全部滅ぼすべきだと思い村ごと消滅させたが、あれでよかったのかも未だにわかっておらん。その時と同じように感じる……占いでもモスマンどもを見つけられないように我輩にはわからぬようになっておるのやもしれんなあ」


 モスマンの気配を察知することはできるものの、それ以外の情報はヴァンデールにはない。というより、その情報以外の情報をヴァンデールはなぜか会得できない状況にある、という問題が起きている。これまでもヴァンデールはずっとそうだったのだが、モスマンの情報を直接その勘や占い、感覚的に会得するということができないでいる。こればかりはそういうもの、と思うしかないものでどうしようもない。彼自身は分からないのは仕方がないとあきらめている。万能で超然的な存在ではあるが不可能なこと、できないこと、世界の仕組みで無理なことはある。


「まあいい。彼らが向かう先に行けばいいのだ。件の像とやらに行けば何かわかるだろう。ふむ、しかしこのモスマンどもを先にどうにかせんとな。数ばかりは多い。まるでゴキブリか何かだな」


 わさわさと森の中からヴァンデールを殺そうと集まってくるモスマンたち。モミジの方にも幾分か数は行っているが何よりもヴァンデールの方がモスマンたちにとっても極めて脅威である。それゆえに何を賭してでもヴァンデールを殺す、そんな目的で向かってきてはいるが。どれだけ数を出そうともヴァンデールを殺すには足りないだろう。


「しかしこれだけ相手にするのも面倒だ。森の中でなければ吹き飛ばすのだがな」


 流石に森ごとモスマンを吹き飛ばすという荒業を行うことは現状できない。森を破壊するのもあれだし、またセージたちや公也たちが別行動しているからである。それを巻き込みかねないため、多少手加減して周りを破壊するレベルの荒業に抑えられてしまう……それはそれで結構なものだが。







「凄い毒ねえ。でもまあ、キイ様に近づくなら全部始末するけど」

「それは当然ですね。私の方でも近づけないように呪いを撒いておいています」

「あー、それはわかる、凄くわかるー、干渉し合いそうでやなんだけど」

「私の呪いにも干渉できるのですか?」

「呪いも毒だから。でも私でも完璧に干渉しきれない部分はあるね。流石キイ様が連れて来ただけはある、ということなのかしら」

「……呪いも毒ですか。そう言っていましたが、まさか干渉できるほどとは想像の外ですよ」


 公也はカシスとヴィローサを連れて歩いている。現在彼らはモスマンを上手く避けている……というか、近づくのはヴィローサが毒で倒し、カシスもそもそも近づいてくることがない様に呪いを撒き遠ざけているため、ほとんど問題なく進むことができている。


「とりあえずあいつらが来ないのはいいが……この先は厳しそうだな」

「集まってるね」

「……あの像、明らかにおかしいのですが」

「やはり何か呪いが?」

「はい……あれそのものと言うよりは、あれが蓋になっているような感じでしょうか」

「蓋……」

「確かに何かやばいのが漏れてる感じかな? っていうか、多分地下……」

「地下か」

「はい。地上や像も呪いが溢れ蔓延しているような状況にあり、あのモスマンとやらもその呪いの作用を受けているのは間違いないでしょう。ですが大本はおそらく……」

「地下にあると」


 像のあった場所、森の中にある開けた場所の近くまで来て流石にこれ以上はすぐに近づけないと一時的に公也たちは立ち止まる。そしてヴィローサとカシスは呪いに関して自分たちが感じたことについて述べた。公也が見つけた像は確かに呪いに関して何かあるものではあったが、別にそれ自体が重要なものではなく、その地下の方がよほど重要な代物であるようだ。というより像が蓋の役割をしているのではないか、と言う感じに見られている。


「……とりあえず周りのモスマンをどうにかするのが先か」


 像を取り囲むモスマンたち。それは像を守るようにしているようにも見える。この地、この場所は彼らにとっても重要なのかもしれない。少なくとも大人しく調べさせてくれるようなことはないだろう。



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