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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五十章 呪いの地
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「本当に強いなあ……」

「やばいくらい強いよな。でもなんかすごく的確に助言してくれるのはありがてーよ」

「そうだねー……でも流石に自信無くすかも。一発も当てられてないし」

「凄いよね。私も全力だしてるけど全然効いてないし」

「ぶっちゃけおじいちゃん自分でも言ってるけど最強ってくらい強いよ? 私だって何度遊ばれたうえで負けてるし。あの王様でも追いきれないって言ってたしね」


 現在セージたちは暇をしているヴァンデールと模擬戦、鍛錬を行っている。単純な強さで言えばヴァンデールは公也に匹敵する。それこそ最初に出会った時公也が追いきれなかったくらいなのだから。ただ、ヴァンデールの方は出鱈目な訳の分からない強さであり、公也の方は膨大なエネルギー、生命力などの存在を取り込んだことによる総量ゆえの強さ、そういう点では大分その性質に差はあり、本質的な能力の差もありヴァンデールの方が実質的には若干不利と言えるだろう。まあそのあたりの強さ談義はしたところであまり意味はない。結局強さに関してはその時の状況など様々な要素が影響する。

 重要なのはヴァンデールが出鱈目な強さを有する、とんでもなく強いということ。多少出鱈目ゆえにわけのわからない強さ、理解できない部分も見られるが、強者相手の戦いはいい経験になる。まあ冒険者の相手をする多くの魔物の類などを考えると人間の姿、大きさで強い相手は経験としてはそこまで役立つものではないかもしれない。しかしやっぱりいい経験にはなるだろう。

 そしてヴァンデールは公也との最大の違いとしてきちんと相手に対して改善点を教えてくれる。このあたりは年の功というか、根本的な強さの形の違いもあるだろう。公也の膨大な存在を取り込んで総量を増やし強くなったのと違いヴァンデールは歴戦の猛者、これまでの数百年の積み重ねがあるが故の強さ……まあ根本的な種族の強さゆえなども理由にはあるだろうが、ともかく強さの性質、在り方が違う。それがゆえにヴァンデールは他者に対してどうすればいいのかとある程度教えることもできる。

 もっとも、実際にそれらの教えができるのはヴァンデールの場合は直感的な部分からの発想、知識であったりする部分もあるが、大部分は占いに近い天啓ともいえるような知識の流入である。この天啓は本人がこのアンデールに来るときの切っ掛けのように、本人にとって必要なことを教えてくれるものである。


「うむ。確かに我輩は強いな。まあ、我輩はいろいろと見るだけで相手のことがわかるのだ」

「へえ……」

「何でもは流石にわからん。しかし色々とわかるのだ。占いに近いものでな」

「そういえばそういうこと言ってたっけ。ここに来るのもそれが理由だったよね」

「うむ。この地に奴らの情報あり、とな」

「……気になったんだけど、なんでそれでモスマンだっけ? それらの大本を探したりしないの?」

「そういえばそうだよな。なんでなんだ?」


 一つ気になったこととして、モスマンに関する情報を何故その情報を持つ人物、その人物がいる場所を占いで指定するという形にしているのかがよくわからないということが出てくる。今回で言えば公也、公也がいる場所としてアンデールを占いで見つけてきたわけだが、そもそもモスマンたちがいる場所、そのモスマン発生の原因となる場所、という内容を占いで指定し調べればいい。そうせず間に情報を挟むの何故そんな必要があるのか、という話になる。


「我輩もそれがなぜかは分からん。奴らのことを我輩が知ろうとするとなぜか知ることができないのだ」

「……でも色々と知ってますよね?」

「うむ。だがそれはあくまで我輩が奴らを直接見て、戦い経験したうえで情報を得て知っているにすぎぬ。我輩の持つ占い、すなわち我輩が知らぬことでもなぜか知ることができる特別なり力をもってしてそれを知ることはできないということだ」

「……普通はそれ自体がおかしな話なんだけど」

「でも魔女さんのこともあるし、そういうものがあってもおかしくはない……よね?」

「それはそうだけど……」


 ヴァンデールの持つ占いは夜明けの魔女の持っている物探しの力みたいな、魔法とは違う特殊な力に近い。魔女のそれは一応魔法寄りだが特殊な能力寄りだろう。まあ特殊な能力と言ってもリーンの持つ<不屈>だったりとかそういう特殊な能力ともまた違うが。ヴァンデールのそれはそういった特殊能力のことを考えても一線を画している異端異常な力。そもそもヴァンデール自体がいろいろと出鱈目なのだが、そのうえでそんな出鱈目な特殊能力まで持つのは相当とんでもない話である。

 しかしそんな特殊能力でもモスマンのことを知ることはできない。いや、そもそもヴァンデールの能力は特殊で便利なところはあるが、決して何でも分かるものではない。ただ、それでも何かわかってもおかしくはないだろう。しかしわからない、モスマンに繋がる情報を持っている存在は分かってもモスマンそのものの情報は分からない……それだけがわからないものである。


「知ることの出来ぬのは奴らの事だけだ。それ以外は何でもではないが知ることができる。だがどう頑張っても奴らのことを占いに出すことは出来ぬ」

「でも王様のことは出たよね?」

「直接出すことは出来んと言うだけだ。それに関して知っているとかどこに行けば情報源に会えるか、とかそういうのはなぜかわかるんだよねえ……」


 なぜそうなるのか、と言う点はヴァンデールもよくわかっていない。ただ、自身がモスマンを求める、滅ぼす目的を持っていることも理由というか要因にあるのではないかとは考えている。そもそもヴァンデールがモスマンを殲滅する目的を持つのは具体的な理由のない衝動、本能、生存目的、それに近い。そこに具体的な理由はなく、ただそうするべきというものでしかない。

 彼にとってモスマンとの対決、殲滅するというそれは宿命、運命に近い世界的な対立構造、ある種の勇者と魔王のそれに近い絶対的な仕組み。もちろんそういう者とも少し違うが、ともかくそういう対立構造となり得るが故の代物であるため、直接その情報を得る、あっさりと決着をつけることを許さない。ヴァンデールの持つ占いで彼らのことを情報として得ることができないのはそれが要因となっている。


「まあ、今回情報を得られた。そろそろ我輩がその情報をもとに奴らのことを知ることができる場所へと出向くことになるだろう」


 そしてそういったモスマン自体の情報は得られないがそういうものではない情報は得られる。ヴァンデールは占いに近い感覚で公也がそろそろアンデールを出ることができる、自分をモスマンたちの気配が公也に移った場所に案内することができるだろうということがわかった。彼にとってモスマンたちのことを知ることができないことは面倒ではあるが重要なことではない。今わかっていること、できることだけでも十分である。



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