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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五十章 呪いの地
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「ふむ。モスマンどもについてか」

「ああ。ヴァンデールがモスマンたちを追っているのはわかっているがそれ以外はこちらはほとんど不明だ。モミジが敵視している、ヴァンデールが敵視している、そんな感じのことは把握していてもそもそもその存在がどういう物か厳密には把握していない。戦ったことはあるんだが」


 公也は直接ヴァンデールにモスマンのことについてを訊ねに来た。戦っている以上、相手の根絶を目的としている以上、確実に何かを知っているのは間違いないだろう。結局のところ公也がそこまで関わる相手ではないのであんまり無理にあれこれ知る必要はないものであるが、呪いの気配とモスマンの気配のこともあったし、公也としても知的好奇心、興味があるという点で情報収集はいる。また今後何か問題解決、対策をするにあたり情報は多い方がいいというのもあるだろう。そういうことでヴァンデールに訊いている。


「何が知りたい? 我輩も長い間相対し屠ってきたが、全てを知っているわけでもない」

「まず……そうだな、呪いとの関係性か」

「呪い?」

「モスマン除け歯が俺にある、みたいなことを言っていたがそれと呪いの気配が何か関係があるのではないかと」

「呪いと言われても我輩にあまり心当たりはないな。しかし呪い、呪いか。気になる話じゃな。そうじゃな、あいつらの発生に関して話しておくとするか」

「発生?」

「うむ。発生だ。あいつらは基本的に生殖で生まれるような普通の生物ではない。それはわかっているか?」

「……はっきりとはわかってない。というかであった回数も僅かで詳しく知っているわけじゃないからな」

「そうか。まあ、そんな事情があるからこそ根絶は難しい。仮に生きているモスマンどもを殲滅したとしても、そもそも子孫を残すような生き物ではなく突如発生する何かであるがゆえに何もない状況から発生し得る」

「…………それはまた、大変なことだ」


 モスマンは一般的な生物ではない。それがヴァンデールにとってモスマンの根絶、完全なこの世界からの消滅、それがうまくいかないようになっている。もともとモスマンたちはどこからともなく現れるものでありその発生は不思議が多い。

 ただ、ヴァンデールもある程度分かっていることがある。例えばモスマンの現れやすい場所は地脈の流れ、その集中している場所だとか、モスマンは発生する場合恐らく人の中から発生する可能性が高いということなど。前者は経験的にそういった場所に多いことはわかっている。モミジが今のパーティーに会ったのも地脈の流れ、集まりのあるアンデールに近い場所だったとか、あるいは公也たちが別の大陸で出会った時は夜明けの魔女の住んでいた森だったとか、そういう点で確定的だとは言えないが可能性が高いものではあるだろう。

 そして後者、人から発生し得ることはモスマンの気配を内に内包する人間をヴァンデールは発見していたり、その人間を観察した結果その人間からモスマンが発生したことがあるなどで把握している。ヴァンデールもバカではない。何百年も相手と戦い続ければその内実、不思議な様々な物事を調査しそちらから攻めることを考えるのはおかしな話ではないだろう。ただ、それでもそもそもヴァンデールは研究者の類、その性質や思考、能力を持っているわけではないので大体は経験則や観察によるものでしかない。


「ふむ、確かキミヤでいいか?」

「ああ」

「お前にモスマンの気配を感じお前に警戒したのはモスマンの気配がするやつはその中、お前の中にモスマンがいることになるのが普通だからだ」

「……中に? 憑依とかそういう?」

「いや。奴らは人間に巣くう。そうさな、奴らは見た目の通り虫のような奴らよ。人間は蛹なのだ。その蛹の中からモスマン共は孵る」

「……孵る、か」

「羽化でもいいかもしれんが孵るの方がそれっぽい感じがするな。ともかく、奴らは人間の中に存在できる。よくわからんが、人間の中にいるやつらが時を経て人間の中から現れて暴れまわるのだ。なぜ人間の中にいるのか、何をきっかけに現れるのか、中に入るのかは不明だがな」

「……なんともそれは厄介な」


 どうやってモスマンがその中に入るのか、そもそも何がきっかけで発生するのか。それはヴァンデールにもわからない。あくまで気配と観察でわかっている範囲の物でしかない。しかし公也の話、呪いの話を聞けば想定は一応できる。


「だが呪いの話があるのならば……何か呪いによる影響でモスマンが発生する、と言う可能性も想定できるのではないか」

「ふむ……でも呪いってそこまで万能なものだろうか」

「確かに万能かと問われれば万能ではないような気もする。だが……そのものの変質、新たな何かの発生、それらを考えるならばあり得なくもあるまい」

「……呪いで生物を発生させられるだろうか」

「わからん。しかし……モスマンは果たして生物と言えるか? まともな生殖、発生をしていないあれらが普通の生物と同じとは言えんじゃろう」

「……それは確かに」


 モスマンは普通の生物ではないというのはわかっている。であれば呪いによる生物の発生という出来事が起こり得るかもしれない……カシスのような例もある。物理的に生物を発生させるのは特殊すぎで不明だが、例えば呪いそのものと言える生物を発生させるようなことができる、ということもあるかもしれない。生物を変質させ呪いに見合った、呪いの性質を備えた生物、生物と言うよりは特定の挙動をする存在を生み出す、みたいな形。もちろんそれがあり得るかと言われると不明である。


「まあ、結局のところ奴らに関してはよくわからんと言わざるを得んな」

「……しかし生物ではない、呪いであれば確かに突然の発生はあるのか」

「うむ……だがその場合呪いが何故モスマンを発生させるのか、いや、そもそもそのモスマンを発生させる呪いは何なのかという問題もある」

「確かに。その呪いが何故人に……何が呪いの原因か」


 呪いであるとしてもそもそもその呪いが何なのか、何が呪いの媒介となるのか。カシスのような例であっても呪いは結局それを維持するための要素、力が必要である。すなわち呪うのであれば呪いを行うなにか、その存在がなければいけない。それが不明であるため結局何も断言できない。あくまで今のところ話し合えているのはこうではないかという可能性の問題でしかない。




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