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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十九章 雲中城
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15




「人間どもが侵入している。すぐに排除しなければな」


 そう言って入ってきた男性は部屋の中にある魔法道具の操作に向かう。


「やれやれ。今のうちに逃げた方がいい。この中に存在する防衛システムを動かし、君たちを襲う様々なものが出てくることになる。別に私は君たちが死んだところで気にはしないが死にたくはないだろう?」

「まあ、そうだな」

「止めることはできませんか?」

「私には無理だね。そもそも本来君たちはこの場所に侵入してきた存在で敵だから」

「それじゃあ逃げましょう。既にこの城の、この場所のことは知ったわけですし」

「……そうだな」

「ああ、逃げるのは構わないが設備の破壊や防衛機構の破壊はしないでくれよ? 直すのも大変だしね」

「無理なことを言うなあ」


 公也たちは防衛機構が動かされる前に逃げる、あるいは動かされてもそれを突破して逃げるつもりである。一番いいのは大人しく帰還させてくれるところだがこの城の住人である彼らの仲間のうちの一人が公也たちを見つけどうしてもそれを阻止することが難しい。やろうと思えばおそらく不可能ではない。魔法だろうと何だろうと色々とある。ただ、その結果相手を無事で済ませるのは果たしてできるかどうか怪しいところだ。これは防衛機構に対してもそうで逃げる最中に襲ってくる相手に手加減して対処できるかという話になってくる。無理なこと、無茶なこと、無謀なこと。流石に厳しいと言わざるを得ないことである。不可能とは言えないかもしれないが。


「とりあえず今のうちに部屋の外に行こう。来た道を戻れば外に出られるはずだ」

「ああ、それはあまりお勧めできないかな」

「…………何故だ?」

「入り口からここまでの道にいくつも防衛機構があるに決まっているだろう? 案内した道の防衛機構は僕が制御して停止させていたから問題ないが、それが元に戻った今真っすぐ戻るのはお勧めしない。危険だと思うからね」


 公也たちが来た道には当然いくつもの防衛機構が存在しそれを案内した彼が制御して押さえていたため問題はなかったが、流石にそれが戻った場合……厳しい。そもそも最短ルートを通るようにしたこともありその間の防衛機構がなんであるか、どういうものかを考慮していない。安全なルートもあるにはあるが彼がそれを教える理由もない。公也たちが知っている道が多少危険な場面も多い、くらいしか彼は把握していないだろう。他のルートを憶える理由もないのだし。


「……まあいい。さっさと行こう。アディリシアが真ん中で俺が前、ウィルハルトは後方を警戒してくれ」

「わかりました。戦闘面では彼女はあまりいいとは言えませんからね」

「そんなことない……とは言えないですけど。でも多少の防御の機能はこれにありますよ?」


 アディリシアの服は十分な防御の機能がある。もっとも攻撃の機能は薄いし反撃も厳しく、そもそもアディリシア自身の戦闘能力の低さがあるため一番危険のある前、何かが来るかもしれない後ろを任せるわけにはいかないという話である。そのためある意味戦闘に長けた公也が前に、能力の高い全般的に強いウィルハルトが後方ということになる。まあそれでもこの場所でどうできるか、また言われたように防衛機構を壊さず済ませられるかどうかはまた話が違ってくるのだが。







「っと! 流石にこいつらを壊さず止めろと言われても困る!」

「侵入者は排除します」

「侵入者を排除します」


 現在公也は女性に襲われている。もちろんそれは普通の人間とは思えない表情を変えない防衛機構の一部……公也の知る限りで言えばメイド人形のような類だと思われる存在である。この大陸でも人形の魔法道具は確認できているしこの城に来るまでの道中でも格落ちは見ているし案内をしてくれたのも同じ存在。防衛機構として動いているそれは案内してくれた存在は案内してくれた部屋から出ていないためそれが相手になることはないのはまだマシなところだろう。

 メイド人形と呼ばれる存在は強さという点では人間より上とはいえ、魔法道具としての機能は主に人の代わりとなっている。戦闘能力がそこまで高くはない。ただ、この地では魔法道具がたくさん存在しそれが使われるのが主流の動きとなっている。彼女らメイド人形の類もそういった魔法道具を使って戦っているため決して簡単に会い出来るほど簡単ではない。


「風よ閉じ込め束縛せよ!」

「っ!」

「くっ! 突破……できません!」

「魔法を破壊……破壊できていません」

「今のうちに行くぞ」


 もっとも公也にとっては魔法で多少無理なこと無茶なこともできる。とはいえ魔法道具の類が存在するこの地、この城においては魔法による束縛などをしていても突破される可能性が高い。人形の魔法道具である彼女たちも決して特殊な力がないわけでもないゆえに。


「結構出てきますね」

「今のところ追ってこれていない。しかしすぐに来る可能性は高い。急ごう」

「突破してきたのと会ったりもしてるからな……しかし、最初の順路を使えないのが厳しい」


 公也たちが最初にこの城に入った場所には既に出れない。無理に突破しようと思えば行けただろうが途中の隔壁であるだろう遮蔽が下ろされていたり魔法道具の人形、メイド人形のような存在が多く配置されていたりしたため大人しく突破できないと考え別の道を進んでいる。その道も先に何があるかはわかっていないためなかなか進むのは簡単ではない。


「外に出るにはどこに行けばいいんだろうな」

「もと来た道は塞がれ進むことはできなかった以上別の道を進むしかないでしょう」

「壁をぶち抜けば一直線で行けばいいだけだと思いますけど……」

「流石にそれはなあ。言われたから守れ、とも言わないが実際侵入してきたのはこちらだし無理に破壊していくのもどうかと思う」

「確かに。もともと敵対的だとしても無意味に敵対するのもどうかと思うのであまり無理なことはしないほうがいいでしょう」


 現状とりあえず行けるところを進んでいる感じである。流石に騒動中だからか他の元人間だろう存在には出会わない。まあ彼らに関してはそもそもその総数はおそらく少ないだろうという点もある。魔法道具の人形も決してそこまで多く遭遇しているわけではない。この城における人的存在の数はそこまで多くはないと思われる。


「……行き止まりか」

「いえ、この部屋の向こうに道があるかもしれませんが」

「でもなかったらここで止まりになってしまいますよね」


 公也たちは分かれ道の先で扉にぶつかる。そこに部屋があるのは確かだがそこからどこかに行ける保証がない。分かれ道も結構前なので戻るのも少し大変だ。


「とりあえず中に入れば一時的に隠れられる可能性はある……かな?」

「わかりません。しかし袋小路になるところに入るのは……」

「興味ありますし行ってみません?」

「行ってみよう」




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