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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十九章 雲中城
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3






 空を通じての移動は速い。多少見られてしまうことによる弊害を考えるも、そのため時間をかけてしまってはと思うところはあるし馬車が飛んでいてもこの大陸では魔法道具で実現しているとか、あるいはもしかしたら何か特異な魔物がそう見えただけ、と思われるだけだろう。魔物の場合はそれはそれで問題ではあるだろうが。そもそも空を駆ける馬車をはっきり見れるほどこの大陸の人間の強者は多くないし、街の近くでは地面に下りればそこまで問題にはならない。旅人は多くはない。ゆえに見られる機会は少ない。街の近くで下りなければいけない点においてはそもそも休憩をできれば街でとりたいという点で下りるようになっているため別に問題はない。


「あれは……」

「大きな街……いえ、都市ですか?」

「ああ、あれは王都ですね」

「……王都。あまり近づくのは良くないと言われたが」

「このまま空を飛んで近づくのは絶対良くないですね。素通りするか、あるいは行くならばどこか離れたところで下りてからでしょう」

「入っても大丈夫か?」

「…………私がいるので別に大きな問題にはならないようにできます。なので大丈夫でしょう」


 ウィルハルトはこの国における仕え騎士という存在。それゆえにウィルハルトが口利きすれば大抵のことは問題なくやっていける。公也たちだけではいろいろ問題があったかもしれない王都訪問も一応はなんとかなる。とはいえ、休む一時での滞在はともかくフィリアからすれば長居は絶対に厳禁と言ってくるだろう。それに多くの街でそこまで大きな差はない。魔法道具関連もどこもそれほど極端に変わるわけでもなし、街の生活もそこまで変化はない。王都ともなれば色々と物資が集まりかなり様相は変わってくるかもしれないが、結局のところそれは他の街の延長のようなものでしかないだろう。


「なんで王都はこんなところにあるんだろう」

「こんなところとは何ですか」

「いや……俺たちは山の方に向かっているわけだが、大分山に近いところだ。ある程度十分離れてはいるけど」

「山に近い、というよりは海や川から離れた場所に作られただけでしょう。海や川に近いよりも山に近い方がよほど安全です」


 王都は結構山に近い。この理由は一つはこの大陸の多くの街における問題である獣や魔物の豊富な場所に近いことで食料確保を確実にすること。王都は下の方は問題なく普通に森で獣も魔物も多く自然豊富な環境である山に近くした、というところがある。一応他所からも食料を集めてはいるが、やはり自給できる方が都合は良い。まあこちらの問題は王都でも普通に畑などの栽培を頑張っているためそこまで重要なものではないだろう。やはり一番は海や川から離れたいというところだ。


「海と川から離れる、か」

「海も川も強力な魔物が多い。気紛れに陸に上がり近隣を襲うこともある。王都のような人が多く国の中心である場所が襲われるのは問題です」

「理由としては納得できますね」

「過去に何度か実例があり、伝えられています」

「しかし普通に川の近くにも街があるが」

「近くと言ってもあまり魔物を刺激しない程度の近さでしょう。それでも稀に現れる魔物で被害が及ぶことはあります」

「近づいた何者かのせいでとかですか?」

「…………」


 それをやりかけたのが公也である。人が近くにいればそれによって来る可能性はもちろんあるし、そうでなくとも陸に上がれるような魔物は水から離れても生きて行けるようなタイプである可能性が高く、川や海から離れて行動する場合も多い。もちろんそれだの魔物が陸地に適性があっても陸地で過ごし続ける可能性は微妙であり、自然も少ない食料も少ない平地、街や村などの近くで過ごすことは基本的にない。森に行くか、川や海に戻るかとなるだろう。


「人のせいで、ということはあるのかないのか。少なくともそれを判断することは難しい」

「……刺激して現れた魔物に殺されているからか」

「そういうこともあるかもしれませんし、そもそも誰かが行ったことを知らなければ言わなければわからない。責任を取りたくなくて黙っていることもあり得る」

「…………そういうものでしょうね」

「気にしても仕方ないですよ。でもそんな魔物が出てくることもあるなんて大変ですよね」

「倒せばいいと思いますけど。魔法道具で」

「……まあ、それは不可能ではないのだが。しかし簡単な話でもない。この国の王が有している特殊な魔法道具でもなければ街を滅ぼすような魔物は倒せないだろう」

「そんなものがあるのか」

「そんなものがあるんですか!?」


 この国の王族が有する魔法道具……それに関して公也とアディリシアが興味を見せる。魔法道具は極端なことを言えば魔法を仕組んだものである。魔法道具で強大な魔物を倒せるということはそれだけ強力な魔法が仕組まれているということ。そうでなくともそれだけの魔法を刻み込めるような素材、魔法道具の仕組みはアディリシアの興味を惹く。公也は単に未知なものだから気になる程度である。


「あるみたいですね」

「ぜひ見てみたいところですが……」

「無理に決まっているでしょう」

「………………流石に手の届く範囲じゃないですし、仕方ないですね」


 流石に王族所有の魔法道具に興味があるからと言って見に行くとか貸してほしいとか調査するとかそんなことはできない。というかアディリシアの場合最悪解体しかねない。一般的な魔法道具ならともかくそれだけ強大な魔法の使えるような魔法道具は果たして再構築できるのか。たぶんできないだろう。公也もいれば魔法自体をどうにかすることはできるかもしれないが、そもそも魔法道具としてうまく作れるかどうかもまた別の話。




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