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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十八章 未管理地域
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24.5




 五十一日

おおよそ過ごす場所の確保はできた。規模としては村程度だが今のところ我らが暮らすのに問題はない。

将来的に大きくすることを考えたが、そもそもこの地で我らがいつまで過ごすかもわからない。

いや、我らはこの地で一生過ごす可能性が高い。果たして未管理地域の外に戻れるか、あるいは誰か外から人が来るか。

はっきり言えば人が来ることはないだろう。ここに車で潤沢な魔石と魔法道具を持ち込み、魔法使いも十人動員している。

兵士の数の代償はこの際あまり関係ない。魔法使いの数の方がよほど重大だ。その数をまた同じだけ投入する? ありえない。

一人も戻ってくることなく、誰も帰ってくることなく未管理地域の調査は成功しなかった。このまま行けばそう結果づけられるだろう。

また誰かが来ることはあり得ない。あっても頭のおかしい人間が遠征してくることがあるくらい、来ても数人程度だろう。

その数人でも我らにとってはありがたいだろうが。

不幸中の幸いというべきだが私の魔法により魔石はそれなりに確保できている。多い、余るとは言えないが足りてはいる。

それだけの数の魔石がある限りは大丈夫だろう。しかしこの地にそれだけの魔力があるのも謎だ。

いや、魔力があるからこそ未管理地域として人の手の及ばぬ場所になるのだろうか。


 六十八日

魔法道具の開発を行うことにした。現在我らの持つ魔法道具はそれなりの数がある。しかしこれらは大半が戦闘に関わるものだ。

戦闘は今でも起こる。全ての兵士、魔法使いがこの地で過ごすため戦わざるを得ず、怪我をする場面もある。

治療するための魔法道具、防衛のための魔法道具、攻撃するための魔法道具、そういったものは遠征、調査に必要だった故に持ってきている。

今でも壊れる可能性もあるし数が足りないこともある。まだまだ作る必要はあるだろう。簡単ではないが。

だがそれ以上に生活のための魔法道具、開拓のための魔法道具も必要だ。

今はまだ村程度の規模だが将来的にもっと大きく安全でしっかりした街を作りたい。

大きくすることが重要ではなく、安全で頑丈、防衛設備のしっかりした街だ。もしかしたら来るかもしれない誰かも街があれば来るかもしれない。

それだけの資材を用意できるかはわからないが、いつかは作っておきたいだろう。

さて、魔法道具の開発だ。しばらくは生きるだけで精いっぱいだろう。すぐに何もかもを作れるわけではないが、まずは生きやすくするものを優先する。


 百七十五日

兵士に死亡者が出た。この地の過酷な環境である以上仕方がないだろう。遺体は埋葬する。ただ、持ち帰ることも考えればあまり深くは埋めない。

十四名。未だ生き残っている人間はこれだけだ。たった一人でも欠けるのは大きな問題である。

しかし死んでしまうことはどうあがいても防ぐことはできないだろう。それだけこの地の魔物は厄介だ。

またこの地で生活するだけでも結構大変なものだ。食料の不足、水の確保の難しさ、病気もある。

魔法道具の作成を急ぎたいがたった四人、魔石づくりも考えれば我の魔法があろうとなかなか厳しい。

そもそも魔法道具の作成も我らの発想でどこまで作れるか。


    日

今が何日か、ここに来て何日目か。わからない。日付を記すような魔法道具があればわかるのだが。

ある程度村は形となり、住める場所も作られ生活はちゃんとできるようになった。

魔法道具も充実し周囲の魔物も倒すことはできずとも追い払う程度は問題なくできる。

生きるだけならある程度は問題ないだろう。

だが   だがこれでいいのだろうか。

このままここで生きていく。それでいいのだろうか。こんな場所で我らは生きて死ぬ。

外に戻ることもできず。そんなことを認めるか?

よくない。少なくとも我はそれを受け入れるつもりはない。

この地にいる我らでもまだ外に出る希望を抱くものは多い。だが諦めている者もいる。

いや、そもそも希望を抱けるのは我を含め少数だ。生きることができるだけでも儲けもの、幸運と思う方が多いだろう。

魔法使いであれば、魔法使いあればまだ戦える、外に出る希望を抱ける、それが可能な道具を作れるかもしれない。

だが普通の兵士では無理だ。当然だろう。彼らは魔法道具を使えても作ることはできない。

我らが作った魔法道具も魔石なしでは使えず、それは我らが用意するしかない。結局彼らはここから逃げ出すことはできない。

我らが一緒であれば抜け出すこともできる、そう期待しても人数の問題がある。

魔法使い十人でようやくここに来れたのだ。四人の現在どうやって戻ることができるものか。

抜け出すことが絶望的ならここで過ごすしかない。だからこそ、だからこそ希望を、何か目的、未来を、見出さなければ。

ただ生きるだけなら死んでいても変わらない。我らがいなくなったとき、ここに残るのは村の名残だけとなるだろう。


    日

魔法使いの仲間の一人が死んだ。病気だ。

どうしても人が死ぬことは止められない。ここに残った十五人はもう既に一桁になってしまっている。

それでも魔法使いがまだ三人残っているのは救いと言えるだろう。魔石の確保は我がいる限り大きな問題はない。

魔法道具の作成も三人いればそこまで問題はない。もっともやはり四人のうち一人がいなくなるのは大きいだろう。

人数不足、この村において大きな問題である。人でばかりは今この地にいる人間で増やすのはできない。

何より女性がいないのだ。最初にいた兵士のなかに、魔法使いにわずかにいたがここに来るまでに死んでしまっている。

そもそも戦闘要員ともなる人員に女性はなかなか含まれない。流石に侍従の類を連れて行くわけにもいかないので女性の数ばかりは仕方がないだろう。

つまりこの地には男性しかいないため人は増えない。ずっと、ずっと、ずっと。となると減っていくばかりだ。


    日

人が少なくなる、その事実に対して我は一つ決めた。

人に代わるものを作り上げる。我らのできることから考えればそれは魔法道具となるだろう。

この大陸に存在する魔法道具でそのようなものは聞いたことがないが、人形の魔法道具であれば人に代わるものになるかもしれない。

もちろん誰も作ったことはない。我もないし、どうやって作るかなんて知るものではない。

だが作るしかないだろう。それ以上に我ができることはない。


    日

人形作りはまあまあ上手くいった。もっとも一つ作るのに何日かかるかわからないが。

しかし作ることさえできればあとは彼らを使えば色々とできることが増える。

減っていくしかない人間の数、それが増えるのだ。人の代わりになるということがどれほど役に立つことか。

魔法道具も使わせることができる。まあ彼らが魔法道具であることを考えれば魔法道具を埋め込むのでもいいが。

農作業をさせてもいい、水汲みや裁縫などをさせてもいい。戦闘や魔法道具作りは流石に厳しい。そちらはこちらの仕事だろう。


作っていて思ったことだが。残しているものがもしかしたら役に立つかもしれない。

これは我もあまりやっていいこととは思っていない。もし誰かに相談しても受け入れてもらえないだろう。

だがこれはもしかしたら、とてもいい考えなのかもしれない。受け入れることはできずとも。

恐らくこれはばれることはないだろう。そこまで念入りに調べるものもいない。

使えずともいい。使えれば運がいい、という程度だ。もしかしたら魔法使いのそれは良い結果をもたらすこともあるかもしれない。

まあ、人形作りを急ぎ数を増やしてから、慣れ上手くなってからだ。




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