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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十八章 未管理地域
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「……流石に衛兵の配置はそのままか」

「昼間と同じ、ですけどね。ずっとここに立ちっぱなしはありえない」

「明日も同じ顔だったならやっぱり人形の魔法道具で確定でいいか」

「…………それを考えるなら昼間に街にいる人も確認しておけば確実だったと思います。流石にわからないですよね?」

「全部を確実に覚えているわけじゃないが……確かに見覚えがある、と思う人物もいたかもな」


 魔法道具作成の施設に関して、入り口に衛兵らしき人影がありその人影は昼間と変わりない人物であったというのが現時点で判明している。昼間からずっと、もしかしたら朝からずっとかもしれないそれは明らかに一般的な人の生活とは言えないだろう。これだけ見ても少なくとも彼は人形の可能性が高く、もし次の日も同じ人物だったならばほぼ確定と見ていいのではないかと思うところである。

 そしてアディリシアから昼間の街中を行き来する人々もそうなのではないか……同じ人物ではないか、と聞かれ、公也としてはそこまで詳しく覚えていないため微妙なところだがはっきりとは言えないにしてもなんとなく同じ人物だったかもしれない、と思えるような感じではあるようだ。仮に連日街の中を見て同じ人が毎日同じルートを歩いていた場合……公也がもしかしたらと言っていた住人の人形説は確定となる、かもしれない。断言できるかは微妙なところ、まあ大体あってるとは思われるが。


「さて……どう入るか」

「やっぱり入るんですか?」

「ああ、そのつもりだ……しかし入るところが微妙にない」

「そもそもけっこ狭いですし……ここで魔法道具を作ってるのか、って思っちゃいますよ」


 魔法道具を作るのは素材が必要だったり魔法の処理が必要だったり、その他いろいろと作業的にやるべきこともある……アディリシアの作っていた魔法道具の中にも大きな物とかあったわけであるし、そういった大きな物を作ったり、作った魔法道具を置く場所が必要だったり。倉庫的なものがなければなかなか厳しい面があり、普通は結構大規模なものとなる。

 しかしこの街の魔法道具作成を行っている施設は小さい。大きければ逆に守りきれない監視しきれないというか、侵入の余地がある場所が多くなるが小さいとなかなか入れなくなる。現状でも見えている衛兵が守っている入り口以外ではあまり入るところがない。天井側から入るとか、裏口側から入るとかそういうのも難しい場所である。

 だが入れないということ、施設が小さいという事実は逆にこの施設の怪しさを示す。一般的な魔法道具作成場所とは違うという点でもしかしたら別に魔法道具作成施設があるとも考えられる。まあアディリシアの家みたいに狭いながらも雑多に置いたり、施設を扱う人数が圧倒的に少ない……例えば一人だったならばそこまで広い場所を必要としない場合はある。もっともそれは逆にこの街の魔法道具作成に関わる人間の少なさを示し、街に存在する人形の作成や修繕などの問題、またそもそも街にいる人間の少なさを考えればそこで人が少ないという点でも人口の数の圧倒的少なさを考えられる。


「とりあえず隠蔽の魔法……アディリシアの魔法的効果の遮断の魔法道具を参考に……」

「これも万能なものではなくて簡単なものなんですが」

「機構や仕組み、魔法の構造は置いておく。魔法で無理やり押し通すことはできるはず……魔力量があるからな」


 魔法で無理やり感知を無視する、見えなくするなどの視線による監視を無視するなどできる。それを超えて感知してくるような危険はあり得るものの、大体は公也の魔力量であれば無理やり隠蔽、感知を阻害する魔法で無理やり入るということはできなくもない。アディリシアの魔法道具に……服の方に仕込まれている仕組みの中には魔法の影響を遮断する機能はあるが、これはそこまで高いものではなく自身の言語に関する影響を多少無視する、その程度のものである。


「……ん?」


 そこで公也は一つのことに気づく。


「……この街の住人の言語」

「……魔法的な影響を受けていない普通の言葉遣いでしたね」


 この大陸の人間はその血筋で言葉が変化する魔法的な影響を受ける。アディリシアも魔法の影響を遮断していなければ言葉遣いは変化してします。血筋、この大陸における貴族の血筋であればその影響を逃れられる。だが……この未管理地域にその血筋の人間がどれほどいることだろう。魔法使いは多少その血筋に連なることが多いものの、一般的に未管理地域に逃げてくるような魔法使いは貴族の血筋ではないことの方が多い。魔法使いは優遇されるがゆえに残りやすく、貴族の血筋ともなればその恩恵、重要さ、家としての役割など重大な役目を担うとして意識が高いことが多い。教育の面でもその重要さ、逃げられない逃げ出さないように教育されているのもある。


「流石に全員が貴族やその血筋の線は薄い」

「この地に来た人々が全員貴族であればその限りではありません……でもそれは流石に現実的な考えじゃないですよ」

「であれば、貴族ではないだろう人間すべてが普通の言葉遣いなのはおかしい」

「魔法的影響を退ける効果が街内にある……そだったらおがしごとねげ……というわけでもないみたいですね」

「つまり人ではないから魔法の影響を受けないと考えられる」

「人形説ですね……魔法による操作で他の影響を受けない、は流石にちょっと厳しいですし、そもそも考えとしてもそのやり口は難しいですし……人形、魔法道具であるという可能性の方がまだ高いですか」


 言葉遣いが変化しないのは魔法の影響を受けないから。すなわち人に対する言語への影響を引き起こす魔法の対象ではない、人ではないものであるということ。魔法道具の人形であるという可能性が高い……まあ断言できるものではないが、その可能性を高める要素ではある。他の可能性は流石に遠いというか難しいゆえにそれでほぼ確定として見てもいいくらいなのかもしれない。


「まあ、何にしても、入ってみればわかることだと思う」

「魔法で隠蔽できるにしても……確実ではないのが怖いところですね」

「何かあったら一生懸命逃げるしかないだろ」

「それはそれでわかることもあるかもしれませんが……私はそういうの嫌だなあ」


 そんなことを話しながら公也が魔力で隠蔽と魔法効果の遮断をする魔法をゴリ押しして発動する。結局すべてを判断するには中に入るしか方法はない。果たして侵入が成功するかどうかはわからないし、中に何か情報があるかどうかもわからないところだが……とりあえずはやってみるだけやってみるしかないだろう。



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