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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十八章 未管理地域
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「……同じ店に同じ人物が何度も入っている、か」


 公也の観察の結果、街にある商店……すべての商店というわけではないが、一定の商店に一定の人物が入ってすぐに出る、それを繰り返している。よく見ていれば店に限らず同じ人物が同じ場所を常に歩いているのも確認できる。一定の範囲、同じ場所を周回しずっと同じところばかりにいる。ずっと……一日中、ずっとである。


「…………トイレに行くわけでもなく、食事に行くわけでもなく。さらに言えばずっと同じ道を、同じ経路を通り続ける……こっちがじっと見つめても反応もしない。どう考えても普通の人間っぽくないな」


 ずっと同じところを、全く同じように……各店に入る様子も一定周期で時間がほぼ同一。流石に公也が声をかけるようなことがあれば反応はあるが、その後すぐに元の巡回路に戻る。その変化の分だけ遅くはなるようだが同じ経路を進み同じことをし続ける。


「……操作、いや機械……にしては俺たちが来た時の反応からすればそこまで機械的ではない? いや、人工知能でもある程度の反応はできるかもしれない……というかこの世界だと機械は流石にないか。一番考えられるのは魔法道具……人形、そうだ、メイド人形みたいな……ああいうタイプの魔法道具であれば反応が人間っぽくてもおかしくない。問題はその魔法道具がどこにあったかとか、そもそもそれだけの魔法道具を動かすだけのエネルギー源はどうなのか、という点か。というかこの大陸だとあれだけの魔法道具を作れてもおかしくはないよなあ……もっともこんな場所でそれだけのことができるのかという疑問は結局ある。それにエネルギー源も……まあエネルギーに関してはメイド人形たちも動力的なそれはないしな。ただ、魔法陣とか仕組みに外部からの収集供給はあるわけだし、こちらのそれも……そう考えると宿にあるのとかこの地の建物にある魔法道具もそういう仕組みがあると思うべきか? まあ人が本当に人じゃない、魔法道具である、というのはわからない……もしかしたら何か魔法的な効果による洗脳や精神操作とかかもしれないし。まあ……それだとちょっと怪しいか? 何にしても多分こうじゃないかっていう推測は伝えるべきか。観察内容、状況に関しても言って意見を貰おう」


 色々と推測するがそれが確実、確定の事項とは限らない。そもそも公也だけで今の状況をすべて考えるのは難しい。仮に魔法道具、メイド人形のような魔法的な仕組みで動く人形の類であったとしてそれを直で調べるのは流石の公也もできない。魔法で調査と言っても下手に手を出すと街が敵に回るような事態にもなり得る。そもそも公也もどこまで何ができるか……この街でどこまで動けるのか、安全なのかがわからない。夢見花でもいれば魔法的仕組みから警報がどうとか、人間に見えるが実は魔法道具であるとかそういうことがわかるかもしれないが公也だけではそこまでの把握能力がない。ゆえに今は相談し意見を取り入れる、他の仲間……特にアディリシアやウィルハルトの考えを聞きたい、という考えである。






「人が魔法道具ですか……」

「…………正直信じきれるものではないですが」

「でもアンデールだとそういう人たちがいるんですよね」

「メイド人形だな。あれらは古代の魔法道具……少なくとも今の技術じゃ一般的には作ることはできないものだ」

「こちらでも作れるものではない。魔法道具で人と同じように活動するもの? そんなものは魔法道具を作る技術者でもできない」

「私でもちょっとそれは無理ですね。一定の行動を取らせる程度ならできますけど。この大陸……国の方だとそんな作る利のない物を作ることはしたことがないでしょうから作れないかどうかは判断できません。もしかしたら過去の技術者にそれだけ物を作ることのできる魔法道具作成者がいた可能性はあります。そういった人物が国の縛りを受けずそのような魔法道具を作りたいとこの未管理地域に逃走した……というのであればもしかしたらそういった物を作っている可能性があります」


 ウィルハルトは人形、人が魔法道具である事実に対しては否定的だ。アディリシアも魔法道具の人形に関しては聞いたことがないとは言っている……が、意見に対しては否定的ではない。彼女もそこまでの魔法道具は作れないが、それだけの魔法道具を作れる技術者が存在しないとは思っていない。この大陸、国において魔法道具を作れる人間、魔石を作れる人間は国によって管理され、それによって作られる魔法道具は国の意思、全体の意思に寄るものとなる。ゆえに自分で思いついたからと何でも作れるわけではない。ある程度自由な裁量で作れるが、それでもメイド人形のような魔法道具は流石に作ることはできないだろう。それだけの魔法道具を作れるなら国から離れるしかなく……未管理地域に逃げ込むか、あるいは海や川に近い場所で隠れ住むか。どちらにしても普通ならそこまでの代物を作ることは難しいだろうが。


「でも魔力をどうやって調達しているかの疑問はあります。そちらのメイド人形とやらはどうなんですか?」

「魔法道具側にその仕組みが存在する。こちらのものにそういう者があるかは流石に見ただけじゃわからないな……俺は魔法道具作成にそこまでの技術があるわけじゃないから」


 公也もとあるメイド人形作りに関与したが公也の技術はそこまで魔法道具作りができるわけではない。なので知っているのは夢見花を通じて得た知識のみ。なのでそこまで詳しく放せるわけではない。


「調査……は難しいだろな」

「この街の人間がもし魔法道具であれば……何らかの防衛、反撃機構はあるでしょう。手を出すわけにはいかない」

「そもそもそうじゃない可能性もあります……興味はありますが、迂闊なことはできませんね」


 仮に道歩く人々が魔法道具でも手は出せない。そもそも人に近い存在であるなら手を出す、破壊するような行為は好ましくない。真っ当に生きてるわけではないが人のように動いているならそれは人とどこまで違うだろうか。


「調査するなら魔力源の方がいいかもしれません」

「いや……そんなものがあるならそちらの方が防衛機構が強いんじゃないか?」

「……そうかもしれません」

「下手にこの街に手を出す方が危ないでしょう。興味はあるかもしれませんが私たち、主を含めたこの場にいる者の安全を考えれば何もしないのが一番正しい」

「……そうだな」


 何もしない……それが一番安全であるが、公也としては色々な未知に対する興味が生まれている。それをどうにかして解消……知識の獲得をしたいところだ。


「もし本当にここにいる人々が魔法道具で作られた人々なら、それを直したり作ったりする何かがあると思います。魔法道具の作成技術も何かで伝えられているかも。どこかでそういう設備や魔法道具関連の知識、情報が集められている場所を当たるのはどうでしょう」

「……それがいいのかな」

「キミヤ様。何時までもここにいるわけにもいきませんから調査するにしても期日を決めましょう」

「……わかった。じゃあ七日ここに滞在することにしよう」

「では後五日ということで」

「……もう二日経っている、という扱いか。まあ仕方ない」


 いつまでもこの街にいるのはアンデールに戻るまでが長くなるということやアリルフィーラをいつまでもこの街に留めるのも、ということでフィリアに期日をつけられる。公也もあまり無為に長く調べても仕方がない、とその意見を仕方なく受け入れた。



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