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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十八章 未管理地域
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「ないです。魔石が設置されている様子がありません」

「ありえないな」

「そうですね」

「……でも実際にそれは魔石がついていないのですよね?」

「魔法道具として機能していない、動かないなら別に魔石がついていなくともおかしくないが……」

「普通に照明がつきますね」

「ありえないな」

「魔法道具を使う上で必要な魔力の供給が為されていない状態で機能するはずがありませんからね」


 魔石が付けられていない魔法道具はない。いや、魔法道具として機能しない使えない、使わないものは……要は魔石は電池のようなものであるため魔法道具として使うつもりがなければ外すなりしてつけていなくてもいいためない場合はあるだろう。しかし今アディリシアがしたようにこの魔法道具は魔法道具として機能している。魔法道具自体は所持者が魔力を込めれば使えるもので別に魔石がなければ使えないわけではないが、今回アディリシアは別に自身の魔力を使ってはいない。つまり魔石というエネルギー源無しに、エネルギー供給も無しで魔法道具が動いていない。ありえないとはそういう意味だ。エネルギーなしに魔法道具が機能する、魔法が使われるわけがないのだから。


「勝手に所持者の魔力を吸い出すとか?」

「流石にそれは分かりますね。だから違うと思います」

「極小の魔石が入っている……魔石を作るのももともと魔法だ。色々と性能を弄って小さい魔石でも普通の魔石並に機能するものをつくれるとか」

「そういうことはありえなくもないと思います。でもそれなら魔石を入れる場所はあるでしょう。それも見当たらないですね」

「ふむ……」

「何か別に魔力源となる物があるとかでしょうか」

「充電式……にしても何かそういう設備、魔石か何かエネルギーを入れておく部分、物があるだろう。それも特に見当たらないな」

「魔力を周りから吸収……するにはこの大きさじゃ難しいかもですね。そもそもそれ自体にも魔力を必要とします」


 公也とアディリシア、ついでにウィルハルトも混じり色々と考察する。魔法道具を魔力なしで使うことは出来ない。であれば使える時点で何らかの形で魔力が供給されているということ。しかしそれらしき代物、魔力の供給源らしきものは見えない。もしかしたら極小の魔石を作り出せるようになりそれを入れているとか、公也の考えでは充電池のような何らかの魔力供給設備により魔力が入れられているとか考えるが、それも見えない。魔法陣などを用いた周囲の魔力を吸収する機構なども考えなくはないが……それも現実的ではないだろう。アディリシアも魔法道具の作成能力の高い、魔法使いとしても技術力の高い存在。夢見花のような存在を除けば上位に当たる……そんな彼女でも魔力吸収、魔力回収の仕組みは作れていない。厳密には作るだけなら不可能ではない。ただ、作ってもコストが見合わないというか、それを利用して得られるものがあまりない、赤字に近い採算になる。物としてではなく魔力を得る部分において。効率の問題もあるし得る魔力の対象、魔力を得る量の問題が主な理由である。


「何かから魔力が供給されている可能性は?」

「魔石や周りのもの、魔法陣……そういうものはないが」

「何らかの膨大な魔力源がどこかにありそこから供給されている可能性です」

「直接魔力を入れるために繋げなくとも供給源があれば確かにできる可能性はあると思いますね。でもあまり考えられるものではないですけど」


 何らかの魔力源から魔力波みたいなものを通じて魔力を直接供給する……あまり現実的ではない。ただ、それ自体は不可能ではない。ここにいる二人、アディリシアとウィルハルトは知らず、アリルフィーラたちもその名前くらいは聞いている。


「地脈……」

「地脈?」

「ああ、いや、それはちょっと現実的じゃないか」

「地脈って何なんです?」

「……大地に存在する、大地の中を巡る膨大な魔力の流れだ。まあ、大まかにそんな感じと知っておけばいいかな」

「そういうものがあるんですか。そんなものがあるならそれを有効活用できれば魔石なんて幾らでも……」

「それができる魔法の技術が今のところないから無理だろう」

「…………そうですね。そんな技術があれば魔法道具の開発はもっと盛んです。魔石も大陸中に供給されてますね」


 がっくりとするアディリシア。現在のこの世界では地脈利用の技術はほとんど存在しない。一応全く存在しないわけではなく、一部の魔法使いは活用できるし仙人みたいな存在もいて彼らはその技術を扱えるが、現状その技術が伝えられることはな。独占した方がいろいろ強みにあるしあまり広げることが良くない技術でもある。また単純にその技術を扱えるだけの魔法使いの技術が現状ほとんどないというのも一因であり、下手に手を出してしまえばどうなるかわからない問題もある。

 まあ仮に扱えたとしてもこの大陸ではほぼ無理に近い。この大陸の地脈はほぼ河川の部分にあり、漏れ出たものが各地に巡る程度でそれを活用するのは色々な意味で難易度が高い。量が多いほど取り出しやすく、量が少ないほど取り出しにくい、下手に扱えない状況である。


「しかし、それに代わる魔力供給源があるとか……いや、それはわからないが」

「それは面白そうな話です。探してみます?」

「……街に出てみようとは思う。リルフィたちはどうする?」

「私は主の守りにつきます」

「……それはぜひ頼みたいな。ウィルハルトがいればあまりリルフィの守りを気にしないで済むのは楽だ」

「本当ならあなたが行うべきかと思いますが」

「護衛ばかりしていてもしかたがないだろう……」

「そのあたりの話はともかく……街へ出るのですね」

「ああ」

「では私たちはあまり外へは出ず大人しくしていた方がいいかと。アリルフィーラ様、キミヤ様がこの街のことを調べ、どういう場所なのかわかるまでは宿にいましょう」

「あら……どうしてかしら?」

「安全かどうか不明です。こちらの方々がどう出るつもりなのかもわかりません。ある程度調べ、彼らの動向や目的がわかり安全であると判断できるまでは守りやすいわかりやすい場所にいた方がいいかと思います」

「……わかったわ。でも公也様が外を見て安全だと判断すればいいのでしょう?」

「はい。そうなります」

「公也様、調査をお願いしてもいいですか?」

「元からそのつもりだからな……」

「じゃお願いします。私は魔法道具の研究を……」

「…………宿にある物は分解したりせずに調査するんだぞ」

「はい」


 各々の方針として、宿にアリルフィーラたちが残る、アディリシアが残り魔法道具について調べる形となる。公也は外に出て街の調査……本当ならもうさっさと立ち去ってもいいかもしれないが、一応調査、確認をしておくつもりである。公也の趣味というか興味の件もあるが、フィリアとしても街に出たい理由はある。アリルフィーラたちもだが馬車の中でずっと宿の部屋でずっとは流石になかなかきつい面がある。多少外で息抜きを、としたい。もちろんそういう場面は基本的には少ないが……この未管理地域だと周りが危険でいっぱいでありゆっくりできる機会は少ない。ゆえに街で少しゆっくりできるだろうこの機会に息抜きしたいところである。だが安全かどうかはまだ判断できないため公也に調査を、ということである。何にしても暫し滞在することにはなる。



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