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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十八章 未管理地域
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「で! き! ま! し! た!」

「…………収納の魔法道具?」

「馬車……ですか?」

「既に馬車があるのですが……引く馬がいないのに車の部分だけを作っても」

「収納できるにしてもこの大きさはどれほど使い道があるでしょうか」


 アディリシアが作った収納の魔法道具は巨大な馬車だった……ということではない。これは彼女の発言が悪いだろう。


「あ、これ収納の魔法道具ではないです」

「え?」

「なら何なのですか……」

「馬車に乗っていくのだと今のままだと狭いし作業できないので。作業場を作りました」

「収納の魔法道具はどうしたのですか……」

「それならここにあります。はい」

「……箱型か」

「魔石がたくさんいるので維持するだけでも大変なものですが。数日ならある程度の量の物は入ります。それでも全部は持っていけませんが。割とそこまで持っていく必要のある魔法道具はないですし、皆さんが使えそうな魔法道具の仕分けをしてくれたので持っていくものの選別は楽です」


 馬車の方は彼女が作業場とするために用意した物らしい。確かに現状の馬車では公也、ウィルハルト、アリルフィーラ、シーヴェ、フィリア、アディリシアの六人で結構狭いというのもあるし作業するのは無理でその他いろいろやろうとすれば余計に狭くなる。アディリシアとしては作業したいし別に狭い場所でもいいが広い場所で過ごしたい、そういうことで独自に馬車の車の部分を作ったわけである。

 しかし車の部分があっても肝心の馬の部分がない。それでは動かすこともできそうにないが。公也たちが乗っている馬車、馬に無理に接続する……車の方に接続するのも不可能とは言えないが、そうすると今度は重量の問題が出てくるだろう。どう動かすつもりだろうか。

 それにしても収納の魔法道具を作っていたはずなのに馬車の車の部分を作っているのはなぜかと言わざるを得ない。もちろん収納の魔法道具はちゃんと作っていたわけであるからやっていることに嘘はないわけであるが、それでも馬車を作っているのもおかしな話である。魔石二十個の要求をされた魔石はいったいどこへと消えて行ったのか。収納の魔法道具にすべてを費やされたとは思えない。アディリシアの作る物は魔法道具しかありえず、この馬車の車の部分もまた魔法道具。当然魔石はそちらにも使われているわけで。つまり最初に二十個要求した時点で車を作ることは考えていたのだろうということになる。まあ、それもまた準備として考えればやってることとしては間違ってはいないのだが。


「しかし馬車を作るとは。作られても困るんだけどな」

「引く馬がいないですからね」

「えっと、これなんですが重さが極めて軽い……ように魔法道具として機能させることができます。なので人間でも運ぶことができるし、馬車の後ろにくっつけておけば別に重さを感じるわけではないので簡単に運んでくれると思いますけど」

「……いや、そう簡単にはいかないよな?」

「重量の問題ではないと思いますね。これだけの大きさのものを追加で引かされるというのが影響としては大きなものになると思います」


 アディリシアが作った馬車の車体は大きなものではあるが重さはない……厳密に言えば魔法道具であるため機能させれば重さを軽くしてとても軽い、ほぼ重量がない状態にできる。色々と有用な機能ではあるが、だからと言って馬車として仕えるかどうかはまた別の話。むしろこういうものは重い方が扱いやすい。軽すぎる重量物、質量が大きな物はむしろ逆に扱いにくいのではないだろうか。

 そもそも、馬車で進むこと自体この森では難しい。公也たちが乗ってきた馬車も公也が作った道を通るのは結構ギリギリなところがあり、アディリシアの作ったそれはその通ってきた馬車よりも大きい。自分が中で作業をすることや居心地がいいことを重視した結果、車体の大きさが結構なものとなっている。まず森の中を進むのは厳しい大きさであり、また彼女が言ったように馬車の後ろに車体をつけると森の中でほぼ確実に引っかかるだろう。現状でも割と引っ掛かりかねないのに余計なものをつけて長くすれば必ず引っかかる……結局重量がどうのという問題ではなく、車体が増えること自体がいろいろ影響を与えてくるのである。


「そもそも新しい車体をつけると森の中を進めなくなります。それではどうしようもない」

「……あれ? 馬車で森をどうやって進むんです? ここに来るまで道を作ってきたのは知ってますが。同じことをやるつもりですか? 流石に手間だと思いますけど」

「ああ。ここに来るまでは道を作ったが、別に道を作らなきゃいけないわけじゃないし。そもそも場所……街があるとかわかっているから道を繋げたけど、そうじゃない場所に無意味に道を作るのは危険性を高めるだけだからするつもりはない」

「じゃあどうするんですか? 馬車で進まないんです? え、それならこの車体を作った意味が……」

「馬車では進む。要は森を進むから面倒なだけだ……そうだな、それなら車体もある程度は問題がないのか? 制御の難はあるから考慮しなければいけないことはあるが……」

「え? どこを進むんですか?」






「まさか馬車が空を飛ぶなんて! 空を飛ぶ魔法道具を作らずにこんなことができるんですか!?」

「空を飛んでいるわけじゃなくて空中に道を……足場を作っているだけだからな。流石に簡単に作れるものではないし足元の確認が難しいからゆっくり進まざるを得ない」

「景色は良いですね。でも落ちたら危なそうですね」

「そう、じゃなくて危ないですよこれ。ここに来た時のことを思い出します……」

「落ちないようにはしているみたいですが……魔法で作っている足場ですし不安は大きいです」

「公也様がなんとかしてくれますよ」

「その信頼はどこから……いえ、主を疑うわけではありません。それだけ信頼されているのですしなんとかするのでしょう」


 現在公也たちは空、森の上空を進んでいる。飛行ではない。空中に足場を作り進んでいる、という状況である。そんな状況であるため後ろに車体がついても進めるわけである。ただ、安全面では不安が大きい。そもそも足場というのも実際の地面のような感じの物質的に作っている物ではなく、魔法で構築した一時的なもの。空気を固めたような感じであるため不安定な部分もある。もしかしたら後ろの馬車がずれて落ちてしまうかもしれないなど危険のあり得るものである。まあ、その代わりというわけではないがとても移動が楽にはなるだろう。




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