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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十八章 未管理地域
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「出発する前にいろいろ準備したいので十日ほど時間ください!」




 そのアディリシアの言葉をきっかけに公也たちは彼女の家の方に拠点を移した。アディリシアの家と狭いがそれなりの大きさの未管理地域の街へと道を繋げ、移動自体はそれなりに容易になったとはいえ魔物や獣が道に出てきたり危険は増える。ある程度その対処を道を作った本人がちょっと行っている。まあ、持っていた魔物が避けやすい植物の種とかを植えて魔法で育てておいた程度だが。しないよりはマシ程度であり獣には効果がないものではあるが、何もしないよりはいいだろう。

 そんなことをしつつ馬車で移動し彼女の拠点……の側で簡易に建物を建てて過ごしている。アディリシアの家は中に魔法道具が山のように積まれあまりまともには生活できないのでそういう状況になっている。




「魔石二十個ほどください!」




 魔石の提供は事前に話していた通りではあるが、準備の段階でも要求されるのは少々図々しいかもしれない。さらに言えば二十、公也には作れなくもない数だが一般的に見ればあり得ないくらいの数で結構な要求である。まあそれだけの要求をする理由があるが。


「魔法道具の再利用、収納の魔法道具の実現か。ここにある魔法道具をなんとかしたいらしいな」

「そのような魔法道具は今のところ実現できはいませんね」

「でもあれば便利ですね。色々とここにあるものを持っていけるのですし」

「キミヤ様がいればそれで十分な気がしますが」

「それは……そうですね。今もキミヤさんが荷物を全部持っていて、それで十分ですし」

「いや。個人がそれぞれ荷物を持てるようになるならその方がいいだろう。私は別にこの人が持っていてもいいですが女性の方は男性に持ち物を持っていてほしいとは思わない人も多いでしょう」

「それは……まあ、そうですね」

「私は別に気にしませんが」

「アリルフィーラ様はそうかもしれませんが……私もそれほど気にしませんが、あまり良くは……」

「自分の中で重要な持ち物を自分で持てるのであれば悪くありません。一人が全部持っているのも何かあった時危ないですから」

「公也様であれば大丈夫だとは思いますけど……」

「そうですね。でも……確かに自分で持っていられるならその方がいいかも。頼まなくてもすぐにいろいろ用意できるから……」

「まあ、あれば重用する便利な代物でしょう。ですが実現できていない現状ではあまり話をしても仕方がないのでは?」

「確かに。だがそれを作るつもりらしいから……」

「期待できるものですかね」


 要求してきた理由は家の中にある魔法道具の再利用のためらしい。再利用と言っても単純に魔法道具自体を利用できるようにして持っていったら便利なものはできる限り持っていくというものと、魔石の数を用意できない関係で作れなかった便利な魔法道具を作ることを目的としている。特に収納、異空間系の魔法道具さえあれば魔法道具を全部持っていくことができるかもしれないし、今後何か手に入れた時も置いて行ったり捨てたりせずに済ませられるためかなりいいことである。個々人で持っていることができれば話している通り、利用価値は高い。もっともやはりそれはできてこそ。できていなければ無理な話だ。


「とりあえずアディリシアの準備ができるまでは待つだけだな」

「その間魔法道具の整理でも手伝いましょう」

「アリルフィーラ様はゆっくりしていてください。そういうことをするのは私とシーヴェだけでいいですから」

「あら。私も少し興味はあるのですけど」

「整理自体は置かれている魔法道具が崩れてきたり危険な魔法道具もあるかもしれないのでお控えください。何か興味を惹きそうな珍しい魔法道具やこれは使える、あるいは面白いのではないかと思うような魔法道具があればそれを持ってきますのでお待ちいただきたいのですが」

「……しかたありませんね」


 暇なのでアディリシアが魔法道具にかかりきりの中、公也たちは魔法道具の整理を行うことになった。アディリシアには一応了解は取っている……まあ、割と雑な返事だったので実際本当はどう思っているかはわからないが、一応了解は取れたので問題はないだろう。持っていくにしても有用なものかどうかを確認するのにいちいち確認するのは手間である。先に公也たちがこれがよさそうだ、とかこれは少し使い道がないとかそういうのを判断していれば後々整理するにしても楽になるだろう。




「何がどういう魔法道具かわからないな」

「恐らくこれは武器だ、というものは外しておきましたが……見た目でわからないものも多いですね。あと、使ってみて初めて分かる物も多いですが、大体はあまり使い道のあるようなものではないものが多い」

「ゴテゴテした明かりを灯すだけの魔法道具とかな……」

「小さな火を熾す火種の魔法道具とかもあります。しかも無駄に重くて大きい……」

「小型化してもらった方がいいが。というか同じもので小型なものもあるよな」

「恐らくは小型の物を作る前に作られたものでは? 処分したり解体して素材だけ利用しないものでしょうか。そもそも別口で炎を出すような魔法道具はすでにあります。それなのにこんな火種の魔法道具があったところで、と思うのですが」

「大は小を兼ねるとはよく言うよな。でも使い道が一切ないとは思わない……けど、使わないんだろうな」


 整理していろいろと確認しているが用途がわからないもの、そもそもよくわからないもの、もっと便利な魔法道具があるもの、そういった魔法道具が数多く存在する。技術的に同じ効果の魔法道具も多く、なぜ二種類同じ魔法道具があるのかと考えるほどである。まあゴテゴテとした魔法道具がすらっとした魔法道具になっていたり、魔石の魔力消費が変わっていたりとそれぞれで違いはあるが、そもそもそんな風に利用せずとも別にまともに使える魔法道具があったりとかそういうものも多い。

 まあ、それらが作られているのはここにある魔法道具が全部アディリシアによって作られているからなのだろう。実用的な魔法道具を作るまでに様々な実験的な魔法道具を作り、そこから魔法道具が作られ完成している、ということなのだろう。しかしそれならせめて解体するなりして再利用したり、あるいは処分して部屋を広くしたりするべきだろうが……そこは彼女なりの作った魔法道具への思い入れがあるがゆえに残している、ということなのだろう。片づける方は大変である。




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