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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五章 城生活と小期間の旅
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 公也がワイバーンの谷の方角に向かい、その後別の方向へと飛び立った。そうして色々な場所へと向かいアンデルク城から離れている間。基本的にアンデルク城に存在する食料はそこまで多くはない。公也がいれば保管に関しても移動して購入し持ってくるのも容易であるが今は公也のいない状態。ある程度は保管場所を考えればまだ食料を保存していられるかもしれないが限度はある。そのため食料確保のために何度か街に向かい食料を購入してくる必要はある……まあ空間魔法をまともに使える人間がいないため必要なだけを全てというのは無理なのである程度小分けにして運ぶことになるが、ともかく街に向かい買ってこなければならない。


「というわけでよろしく頼むね」

「お願いするわねヴィローサちゃん、フーマル君」

「ええ。頑張ってくるわ」

「……俺がワイバーンに乗るっすか」

「弱音吐かない! キイ様がいない以上フーマルがやるしかないでしょう! それともリーリェやロムニルにワイバーンに乗ってもらう? 魔法使いの二人だと負担が大きいわ。キイ様の部下はそっち方面は使い物にならないし。それに物を運ぶ都合上力がいるわ。フーマルはこれでも冒険者でそれなりに実力があるんだからフーマルに頼らざるを得ないのよ。それにその程度もできないで冒険者をやっていくつもり? これから先ここからいろいろするつもりがあるならワイバーンに乗るのは必須、今はフーマルだけで乗れなくともいずれは必要なことよ? 今経験しておけばこの先楽になるんじゃない? っていうかやらないと食料足らなくなるのよ。別に肉だけ食べたいって言うならそれでもいいわ。私が毒で弱らせてフーマルに取ってこさせるだけだから。野菜とか野草とかも確保したいんじゃないの? できなくもないけど森の中を探索するのは辛いだろうから大変よ? 別に私は良いけど。キイ様と相乗りならともかくフーマルと相乗りって言うのはちょっとね。嫌とは言わないわ、どうでもいいだけ。キイ様と一緒ならそれこそ甘い雰囲気で……はないかもしれないけど格段にうれしくはあるわ」

「もう、いいっす、いいっすから…………」


 怒涛のヴィローサの口撃に負け大人しくなるフーマル。元々文句があると言うよりは不安の方が大きかったというのもある。フーマルは師匠である公也にいろいろと後を託されている立場なのだから必要とあらばワイバーンに乗って街に食料の買い付けに向かうと言うのは必要不可欠なこと、頼まれていることなのだからやらざるを得ない。


「大丈夫?」

「はい、大丈夫っす……元々師匠にはいろいろと頼まれていたっすから。ただ、やっぱりワイバーンに乗るって言うのは不安が……」

「大丈夫よ。私が一緒に乗るんですもの。フーマルだけだとまだ乗れないでしょう。ワイバーンは私には従順に従うわ。だから大人しくフーマルに使われてくれるわよ」

「そうっすか……」


 今のところフーマルではまだワイバーンを従えるだけの実力が足りていない。しかしヴィローサが乗ると言うことでワイバーンは大人しく従うヴィローサの毒の問題もあるし、そもそもヴィローサという存在は多くの生物からはかなりの恐怖を感じる上位の格を感じる存在。以前もかなりヤバめだったが今はさらにヤバめになっておりワイバーンも怯えるだけではなくもう勝ち目がないと従うようになってしまっている。


「とりあえず一番近い場所でいいっすよね?」

「そうね。別に遠くに行く必要性はないと思う……ここから近いとなると、やっぱりジェルシェンダかしら?」

「キイ様がいつも買い付けているところなら私が知ってるからそこまで行ってもらうわ。フーマル、こっちでちゃんと指示を出すから聞きなさいよね」

「了解っす」


 ヴィローサは一応知識として公也が向かっていった先の事を知っている。絶対に確実に行けるとは限らないが、まあそこはワイバーンに乗っているので空から見ればある程度はわかるだろう。そこまで不安に思うことではない。どちらかというといつもの買い付けを行っている公也ではないことや妖精であるヴィローサがいることなどの方が不安は大きいだろう。まあ恐らくは大丈夫であると思われるが。






「うおおおっ!? あ、あんた……いつもの人じゃねえな」

「あ、すいませんっす。えっと、いつもの人は今日は来れない感じっす。もしかしたらしばらくは俺がここに買いに来るかもしれないのでよろしくお願いするっす」

「お、おお……そうか。あの貴族さんではないのか」

「そうよ。キイ様は少し遠くに出ているの。今日は私……いえ、このフーマルが色々と買うわ。お金も預かってるしね」

「妖精!? あの貴族さんの飼っている妖精か……」

「………………そうね、そんなところよ。だから手を出さないように言い含めておいてくれない? 私も手を出してくる相手には容赦をしないから」

「……ああ、わかった。流石に貴族さんの物に手を出したらいけないからな」


 ヴィローサは少しだけ飼うと言う言葉にムッとしつつも、その勘違い……思い込みを利用し自分に対する手出しを禁じた。手出しされた場合の対応についても言い含めた。誰でも何でもその力で始末すると言うことはしないが手を出してくる相手には本当に容赦をしないつもりである。


「とりあえず食料が欲しいっすけど……」

「ああ、いつも買って行っているものはしっかりと用意してある」

「あ、俺はあの人ほど物を運べないっす。なので小分けに数日で、ってことになるかもしれないっす。場合によっては保管をお願いしたいんすけど……」

「まあ、それくらいはいいだろう」

「ワイバーンは何処に置けばいいっすか?」

「いつもはこっちにおいている……案内しよう」

「お願いするっす」


 そう言ってフーマルはいつも公也に対応している人物に案内してもらいワイバーンを置きに行く。


「さて、私はちょっと街の方を見て回りましょうか……いえ、まだ連絡が行っていないでしょうから勝手をしてはいけないわね。はあ、とりあえずフーマルについていきましょう。ワイバーンに言い含めるのもフーマルからではなく私からしたほうがいいでしょうし……そうとなれば早くいきましょうか」


 色々と考えた結果ヴィローサは街に出てあちこち見て回ると言う勝手をせず今のところはフーマルについていき、先ほど話したヴィローサへの手出しの問題に関して広まるまでは大人しくすることにした。元々ヴィローサにとっては街に出ることはそれほど重要なことではない。何か公也の役に立つようなことでもあれば後で報告する、というつもりのものだ。なので先に公也に迷惑をかけるようなことをすることはよくない。またワイバーンのこともある。今はフーマルに従っているがヴィローサから離れた場合元のワイバーンらしい行動をとるかもしれない。フーマル一人では抑えられないだろう。そう考えられるためヴィローサが言ってワイバーンに勝手をするなと言い聞かせたほうがいいかもしれない。そういうことで今は大人しくすることに決めた。

 そうしてその日はその街で休息をとり、翌日準備を終えてわずかな間、ヴィローサとフーマルは街を見て回る自由を得たのである。


※ヴィローサの単独行動。一応フーマルもいるがおまけ扱い。実際にはフーマルが購入しなければならないしワイバーンに乗ることも考えると彼の苦労のほうが多い。

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