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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十七章 旅の道連れ
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「わざわざ森の中を切り開いて道を作ったんですか? 凄いですね」

「アリルフィーラ様……凄いと褒めるのではなく、そこまで無理をしてまで道を作らず戻るように言うのが普通かと思います」

「でもほかに街があるのでしょう? 公也様でなくともそこに行っていたいと思うのはおかしくないでしょう。私も見てみたいかもしれません」


 公也はアリルフィーラたちと合流し話をしている……しばらく森の中に探索に行き、いろいろ活動し、とりあえずある程度道を作った段階になって公也は街の方へと進むことをアリルフィーラたちに話す。完全に道を繋いでいるわけではなく、現時点では行ける場所は街の中からは見当たらないが、少し森の中に入れば到達できる。こちらの街も向こうの街もそういう森の中に入る人物がいれば多少気づくが、今のところそこまで積極的に動く人物はいないようでまだ気づいてはいない……気づいてもその道を進むこと自体に積極的には慣れない。そもそも奥に進むことができないのだから。知っていれば準備して道を勧めるかもしれないが……結局魔物自体は脅威としてあるし、街まで数日はかかる。馬車でも数日、なわけであり歩きならもっと……複数人でも厳しく、やはり道があるから安易にそこを進む選択を選べない。

 であれば公也たちはどうか。公也たちの場合はそもそも物資の心配がないという点、馬車での移動という点で他とは違う。公也の場合は明確に次の街を確認し目的地としているし、安全面でも公也自身とウィルハルトの存在があるため結構問題は少ない。そもそも道を作ったのは公也である。多少引っかかるようなところがあっても一気に切り開き進めるようにはできる。

 アリルフィーラも乗り気である。まあ彼女としては公也に賛成な面もあるためだろう。もちろん本人としても興味がないわけではないと思われるが。


「街や湖、森のない場所……この辺りの環境は結構特殊みたいだ」

「街は環境とは関係ないんじゃ……」

「まあ、そうだな」

「しかしこの場所以外に街ですか……よく作れるものかと感心します。物資の運搬、人材の確保、魔石や魔法道具の補充。道も通じていないのですから楽なものではないでしょう」

「魔法使いが一緒に行って街づくりをした、とかじゃないか?」

「わかりません。こちらの事情など知るところではありませんので」

「……それもそうか」


 公也の話を聞きウィルハルトは街に関して疑問を抱く。そもそも今いる場所ですら国側に近いとはいえ未管理地域で街を作るのが厳しい場所である。そのさらに奥に街があるとなるとこの場所よりも厳しい場所に街づくりをよくできたものだ、と思うのは普通の反応だろう。


「しかし切り開いて先に進むつもりですか」

「そうだ」

「…………アリルフィーラ様の安全を考えれば、私は遠慮したいでしょう」

「私もそれには同意します」

「しかし私は彼女に仕える身でありますが、この国の騎士の一員でもあります。未管理地域は人の手の及ばぬ場所。今住んでいる者がいるとはいえ、今後も同じように住めるか、安全であるかはわかりません。街があるのであればその街同士の繋がりを作り今後も生活していける環境を、人と人の繋がりを、助け合える状況を作るのは決して悪いとは言えません」

「……ですが」

「ええ、アリルフィーラ様の安全を考えれば連れて行きたいとはとても。ですが今の話の内容を切り捨てることは……」


 基本的にはアリルフィーラ優先ではあるがウィルハルトはこの国の騎士の家系の一員。国のことを考えれば未管理地域が人の手の及ぶ場所になることは望ましいこと。公也の行動に関しては決して否定をできない、いやむしろ頼んでやって欲しいとまで思うだろう。もちろんアリルフィーラに迷惑がかかるとか危険が及ぶとかなら頼むようなことはしない…………とはいえ、この状況に関しては公也のやることであるため、アリルフィーラは肯定するし公也と一緒にアリルフィーラが行動するため頼むこと、肯定も難しいし、かといってやるなとも言い難い。仕え騎士として絶対のことは順守するが、そうでない分はやはり騎士でありこの国の一員としての考えが強くなる。


「まあ、次の街に行くだけだから」

「……わざわざ開拓して道を作ってまで行く必要があるのかと」

「そうだな。そこまでして手間をかけてまで行く必要があるかと言われると困るんだが……でもリルフィを置いて行くわけにもいかないだろう? 馬車無しで移動するのも厳しいだろうし」

「…………メルシーネ様がいれば楽でしたね」

「メルシーネ?」

「ここにはいないから……そのあたりの各人の紹介に関してはまた何れだ。ともかく移動に関して森の中を歩かせるわけにはいかないだろう?」

「当然です」

「そうですね」

「だから馬車が通れるようにした……それをせずに戻る、とは言わないでくれよ?」

「……戻るつもりがないですからね、キミヤ様は」

「アリルフィーラ様のことを考えてくれていることは評価します」

「馬車が通れるなら別にいいんじゃないですか? 歩いて行くなら流石に私も反対しますけど」

「私も公也様と一緒に行くにしても歩くとなると厳しいですね。体力は……あると言えるほどではありませんし」

「馬車が通るなら防御の魔法道具もしっかりありますし、悪くはありませんが……」

「移動に関しても考えてくれているので仕方ありません。アリルフィーラ様も行くことに肯定しています。安全は私と彼で確保するだけですし……道がどの程度なのか次第ですが」


 とりあえず話の流れとして、アリルフィーラも乗り気なところもあり、全員が道を行き街へと向かうことには肯定している。とはいえ、その後もまた開拓し次の街へ……となるとどこまで受け入れるかは怪しい。


「ですが今後同じようなことをするとなると時間もかかりますし手間もかかります。ウィルハルトはこの国のことですのであまり強くは反対しませんが私はそこまでして次の街へ向かうのは反対です」

「……そうか」


 流石にフィリアにそこまで言われると同じ手は難しい。森を切り開きまた進む、というのは今回ではっきりしているが手間も時間もかかる。また移動自体にも時間がかかるし森の中を進む関係上作った道でも当然危険はある。魔物の危険も当然あり、防御の魔法道具などがあってもやはり危険は危険として好ましくはない。なので次は流石に同じようなことは否定されるだろう……とはいえ、公也もそれを考えて別の手を打つ可能性はある。少なくとも現時点で公也は一つ手を考えている。まあ公也の考えているその手が果たしてうまくいくかどうか、実際にできるかどうかは不明である。

 まあ、ともかく公也たちは次の街へ、未管理地域の奥深くへと入っていく。そこに何があるか、どうなるかは現時点ではわからない……まあ、なんとかなる、なんとかするだろう。



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