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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十七章 旅の道連れ
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「さて。意外と森ばかりというわけでもないか……いや、むしろ森ばかりの方が納得がいくが。でかい湖が何であるんだ……川の流れがこっちに来てる? いや、そんな感じは……そもそも川遠いだろ。この大陸の河川状況はどう考えても真っ当じゃないしよくわからないけど。道が……森のないところを通るしかないか? 遠くの方に街が見えなくもないが……そこに関してはどうなんだろう。ここで聞いてもいいか、わかるものか。道が通じてないから繋がりはおそらくないはず……とりあえず行ってみる場所として見ていいか?」


 未管理地域の中、上空から遠くを見て公也はそう呟く。未管理地域の公也たちが通ってきた場所は森であり樹々によって馬車が通りにくい場所だった。また未管理地域内の街に入り周りも森に囲まれており、他の場所へ続くような道もなく、樹々で向こうの様子が詳しく見ることはなかった。見えるにしても何があるか詳しくは見えないだろう。なので公也は空から見ることにした。森の樹々に登ってもそこまで見えるようなことはないが、公也の場合はそれより高く、空まで魔法で登ることができるのでより遠くが見える。

 そしてそんな見えるものはどうにも妙……と言えるかはわからないが、妙に見える。川に繋がっている様子のない湖、見る限り何処にも道の通じていない街、大体は森だが何もない木々のない場所だったりもあり、なんというか地形が乱雑に変化している感じである。


「しかし馬車は厳しい……いや、行けなくもないか? 場所によるなあ……ある程度は切り開くなりしないと行きづらいところが多いか。流石に馬車や馬を置いて行くというわけにもいかないし……最悪馬は別空間に隔離、馬車も同じかな? ああ、でもリルフィたちに歩かせるのも厳しいか。俺やウィルハルトはともかく……フィリアもどうだろうな。シーヴェはまだ獣人だから……いや、獣人だから身体能力が高いというわけでもないか。なんだかんだずっと城にいることがほとんどだから三人とも歩くとなると厳しいか。やっぱり馬車を通れるようにするべきか……」


 馬車が通れないのであれば公也たちは歩いて探索するしかない。目的地が定まっていたとしても歩いて行くのはアリルフィーラたちには厳しい。まだシーヴェやフィリアは従者としてそれなりの身体能力があるにしてもアリルフィーラは一般的王妃のそれしかない。ハルティーアなら多少まだアクティブに動き体力はあるかもしれないが、仮に彼女だったとしてもこの未管理地域を進むのは厳しく、アリルフィーラはもっと厳しいということで歩きで目的地に向かうのは馬車でなければいかない……仮に馬車から降りて行かなければならないとなればフィリアとウィルハルトから反対が出てくる可能性は高い。なので馬車で進めるようにしなければならないだろう。


「魔法……<暴食>……結果としてウィルハルトには見せる機会があるだろうし後者でもいいか。でもほかに見られる可能性や痕跡の問題もあるからどうするかな……」


 周りは森である。少なくとも現在いる地点から空から見つけた目的地へと向かうのは馬車では難しい。ならば進むのであれば森を切り開くしかない。しかしその手段の問題もある。他者に見られる可能性もあれば<暴食>は使いづらい。使うのであれば魔法だろう。魔石の作成を何度もできるという点で魔力の大きさがはっきりしているし魔法で大きなことをしても問題は薄いが……こちらではあまり魔法という者に対する認識は薄いのでそれで驚かれる可能性はある。もっともこの辺りにいる魔石や魔法道具作りができる人間はそちらの方面の知識も多少はあるだろうしそこまで問題にはならないだろうが。


「そのあたりのことは相談するか……いや、話したら戻ろうと言われそうな気がする。先に森の中に入って樹々を切り開いておくか……」


 公也はとりあえず森の樹々を除けることを選んだ。先に進むことをしないという選択はない。であれば先に進む方法を作るしかない。なので森の樹々を切り開く……探索、調査という名目でアリルフィーラたちと一緒にいないうちに隠れてそうすることを選んだ。後々この地に住んでいる人たちもいきなり道ができていることに驚愕するだろう。







「……とりあえず何も問題なさそうで今のところは大丈夫だな」

「そうですね。最初ここに来た時は多少厳しい視線を向けられましたが……キミヤ様が魔石を大量に提供したのが良かったのでしょう」

「あの方はいったい何者なのだ? アリルフィーラ様の夫として結構な能力を持っているのは分かるが、あれほどの量の魔石を提供したり、あの身体能力……剣技はまだまだ稚拙だが強さという点で見れば我らよりはるかに上だ」

「……よくはわかりません。こちらには冒険者という役職がないため伝えにくいのですが、数多の魔物などを相手にする仕事をする者たちの中で最上位の実力を持ちます」


 少しの間だが未管理地域で生活している公也たち。最初はここに来た時のように厳しい視線を向けられていたが、公也が日々の滞在代金として魔石を結構な量提供しているのでそのせいか大分受け入れられている。まあ魔法使いで数人分を毎日提供してくれれば悪い扱いにはならないだろう。もしかしたら場合によってはずっといてもらいたいとか思うかもしれないし、少々危うい人物がいれば無理やりにでも滞在させるよう人質でも取るような危険はあり得るかもしれない。もっともウィルハルトの存在もあるからか、あるいは公也の強さの問題もあるからかそういった状況にはなっていないし大丈夫そうである。

 そしてウィルハルトは公也の強さとか大まかに雰囲気を感じてはいるが、その実態については詳しく知らない。それゆえに魔石づくりとか見て余計に公也の存在に対して理解できない感覚に襲われている。


「最上位ですか。あの強さなら……しかし冒険者。魔物を相手にする……」

「こちらの大陸では魔物があまり出ないようですからわからないかもしれませんね。しかしこの場所では魔物が出るようですし、機会があるかもしれません」

「強さに関しては分かっています。直接相手していますので」

「そうですか……」

「しかし、キミヤ様は毎日森の方へ行っています。この場所から他の場所へ行くことは出来なさそうでし早く戻りたいところですが」

「アリルフィーラ様の安全を考えるならそれが一番なのですがね」

「……意見が同じなのはいいことですね」

「ええ」


 アリルフィーラの安全目的で考え二人の意見は一致する……もっとも二人の方向性は微妙に違っており、その違いからフィリアはウィルハルトに完全に同調できてはいない。とはいえ意見は一致している。現状のままなら戻ることになるだろう。公也の強さとかそのあたりは関係がない。進めなければ戻るしかないのだから……まあ、公也がそれで諦めるとはフィリアは思っていない。この辺りは公也との付き合いの差なのでウィルハルトにはわからないだろう。だからこそすんなり戻れるだろうと考えている。




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