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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十七章 旅の道連れ
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「特に何も起きないな」

「起きるわけがないでしょう。未管理地域という呼ばれ方をしていても本当に全く未管理なわけではない。少なくとも入ってすぐに何か起こり得るほどの危険はない」

「そうか」

「何を望んでいるのですか? 何も起きないほうが危険もなく良いでしょう。そもそもこの未管理地域は観光で来るようなところではない。すぐに戻るべきです。主の安全のためにも」


 未管理地域は国の管理に入っていない地域である。その理由は基本的にはやはり魔物が原因であり、それらの存在ゆえに手の出せない場所となっている……というわけだが危険に関しては直ちに襲われるようなとても危険な場所というわけではない。少なくとも未管理地域に入ったばかりの場所で何か起きるということは少ない。その場所は境界地点、未管理地域ではない場所と管理されている地域との境に近いがゆえにある程度では入っている。少なくとも魔物などは倒されているし近くにいるかもしれない盗賊などもその場所からは追い払われている。


「魔物も見かけないから本当に未管理なのかと思ってしまう」

「入ってすぐに出会うわけもないでしょう……この場所ならまだ人の通りも多い、中にいる人やできている街とのつながりもある。道が作られている以上多少管理はされています」

「未管理地域なのにか」

「国が守る、手を入れるわけではありませんがここに住もうとする人はいます。挑戦し様々なものを得ようとする者たちも。国が手を入れるわけでも、国が支援するわけでおありませんが、彼らもこちらとの繋がり無しで生活するのは無謀というもの。あちらで得られた品物をこちらに売り生活に使える物資に、あるいは戻り成果として様々な形で資産に還る、そういったあれこれを行うためにも人がある程度は手を入れています。こちらに繋がることができる程度には」

「……国は力を貸さないが、こちらで色々人が頑張っているってことだな」

「そうでしょう。しかし結局その程度……何が起こるかもわからないゆえに手は出せない。今ここにある道も次の日には消えているかもしれない。そんな危険もあり得る場所です」

「そこまで危険には思えないが……まあ、この辺りでそこまで危険だったら問題か」


 入り口付近でも何が起こるかわからないという危険な場所である……が、まだ公也がそこまで危険と感じるような場所でもない。少なくとも入ってすぐには何か大々的なことが起こるようなことはない。そもそもそんな危険なことが起こり得るなら入る場所付近の管理はもっと厳重に行われるだろう。隔離されるでもなく、ある程度の監視程度で済まされているあたり、そこまで極端にあれこれ起きるわけではない。


「しかし……狭いな」

「本来なら馬車で入るようなところではないですから。この地に入る目的を持つ人物が通れる程度に道が整備されていればそれで十分なのでしょう。こんなところにわざわざ来る必要はなかったのでは?」

「だからこそ見てみたい気持ちがある……まあ、ウィルハルトやフィリアにとってはリルフィを危険に巻き込みかねないから望ましくはないんだろうな」

「もちろんです。ですがいくら言っても無意味なのでしょう? さあ、道の安全を確保しましょう」

「ああ……馬車が進みにくいからな」


 公也とウィルハルトは道に出て馬車が進みやすいように周りを少し切り開いている。一応一切馬車が進めないということもないが、周りの木々などに引っかかり傷がついたりする可能性もある。なので二人が外に出て作業している。道はあくまで人が通れる程度、馬車は微妙である。そうやって外に出る時間が長いが、今のところ魔物や獣が襲ってくるということはない。まあ襲ってきたところで外に出ている公也やウィルハルトでも問題ない程度だろうが。


「この先のことは分かっているのか?」

「街がある程度でしょう。さらに先のことは流石に」

「……街か」

「こちらで過ごさざるを得ない、あるいはこちらで過ごす目的がある者も少なくはない。物資だけで言えば様々なものが未管理地域には存在します。それらを活用し街を作ることはできるでしょう。もっともちゃんとした資材を大量に用意できるわけでもなく、こちらに来る職人も多くはありません。街と言っても小さなものです。さらに言えば魔物や獣こちらには多くその危険もある。逃げ込んだ盗賊や犯罪者もいる場合もある。それゆえに防衛の状態も完璧ではありませんし安全の保証もされません」

「しかしそれくらいの危険がある場所でも街を作るのは逞しいな。でも魔物などの危険もあるとなると結構大変そうだが」

「魔法道具や魔石の供給はこちらにはされませんが……逆にそれらの技師、魔法使いがこちらに逃げてくることもあります」

「魔法使いに魔法道具の技師が?」

「この国でも、四島の他の国でも恐らくは同じようなものでしょう。魔法を使える者は魔法道具を作ることや魔石を作ることができる。この国ではそれらは重要な戦略物資です。我ら騎士も魔法道具の発展と普及において戦う場は失われた。もっとも最近は人同士の戦いは専らなくなりましたが……ともかく、魔法道具と魔石は戦闘や生活を含め様々なことに使える重要物資です。ゆえに魔法を使える者は国によって集められます。それを隠す者もいますし、魔石や魔法道具に関わらなければならないことに不満を抱き逃げる者もいる。そんな人々の逃げ先の一つがこの地です」

「そういうことも……まあ、あるか。なら魔法道具や魔石、魔法使いも色々と独自の者の可能性もあるのか」

「逆に危険もあるということですが。彼らは決して国のことをよく思っていないでしょう」

「……俺たちの存在が厄介なものとして見られるかもしれないか。その扱いになると面倒だな」


 貴族かその係累に見えるだろう公也たちは下手をすればこの地にいる人間には敵になり得る。旅人っぽく進めばまだしも馬車に乗ってきているあたり、かなり妙な存在に見えるだろう。盗賊やその関係が多かったら下手をすれば奪う目的で襲われる可能性もある。そういう点でウィルハルトの話は警戒を促すにはちょうどよかったのかもしれない。まあここで向かう先は国とのつながりもある街であるため……流石にそこまで無法で危険な場所ではないはず。しかし公也たちの行き先がそこで終わるとは限らず、もしかしたらその先で何かある可能性もあり得るだろう。



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