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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十七章 旅の道連れ
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「それほどまでの実力がありながらあの方の守りに専念しないなんて……」

「いや……とりあえずそういう話はも終わりにしよう。こちらの実力は見ただろう? それで納得はしたな?」

「…………主たる彼女、アリルフィーラ様を守るに値することは確かだ。相応しいかどうかは私からすればどのような相手でも相応しいとは考えられないが、わたしより実力は上だ。私よりもはるかに守るだけの実力はある……ゆえに私は少し残念に思う。このような男にそんな実力があることを……」

「あんまりな言われようだ……」

「仕方ありません。キミヤ様ですので」

「………………」


 ウィルハルトに嫌味みたいなことを言われ、またそれにフィリアが追従し若干悲しそうな顔をする公也。もっとも言われても仕方がないところはある。今までのあれやこれやを思い起こせばその評価はわからなくもない。


「まあ、これでウィルハルトはこちらのことに納得したわけだし雇うのに大きな問題はないよな」

「アリルフィーラ様に仕えついていけるのであれば私には異論はありません。給料なども要らず、ついて行ければそれで」

「いや、流石にそういうわけにもいかないだろう……立場や役職、給料は後で決めるとして。今はひとまず旅についてくる感じでいいか」

「男性が増えるのは不安な点もありますが……」

「むしろ女性の中に俺一人だけの方が問題があった気もするが……」

「わたしはキミヤさん一人だけの方がよかったですけどね」

「公也様がいても問題はないですよ? 私たちの立場からすればそこに文句をつけることはありません」

「……キミヤ様だけならばまだ心配することもないのですが」

「私の存在はあなた方には不安を抱かせるものですか」

「まあ、こちらから見れば本当にいきなり入ってきた男だからな……女性陣的には色々不安はあるだろう。騎士だっていう話だからそこまで心配しなくてもいいと思うが」

「騎士とかそういう者は関係ありません。むしろキミヤ様は私達よりも心配するべきでしょう。妻の近くに他の男性がいるわけですから」


 ウィルハルトを雇うこと自体にはそこまで問題視する気持ちはない。ただ、やはり男性が増えるという点で女性陣は不安がある。公也だけならまだマシ……夫婦であるアリルフィーラ、関係のあるフィリア、片思い……一応片思い中なシーヴェ、三者的には何でも許せるわけではないだろうがそこまで不満には思わないだろう。しかしウィルハルトに関しては彼の性質上絶対に手を出してこないだろうと思われるがそれでも不満はあるだろうし、そもそも男性が近くにいること自体、公也ではない見知らぬ縁の薄い他人がいること自体があまり好ましくはない……女性ならまだ野営とかでの不安は少なくなるだろうが、男性ではやはり生活上で色々不安や不満はあるだろう。


「……心配するべきか。そうだな、普通はするべきか」

「でも彼はあまり心配する必要はない……と思っていいですよね?」

「仕え騎士とか自分で言って、家族の方もそれを保証してるし……」

「それを信頼するのもどうかと思いますが」


 ウィルハルトやその家族の言を安易に信じるのはどうなのか……フィリアはそう公也やアリルフィーラに言う。普通に考えれば公也とアリルフィーラがあまりにも簡単に考えすぎというか、安易すぎると思わざるを得ないものだろう。ただ、彼らはメルシーネという仕え魔のことを知っていたり、そもそもウィルハルトの行動の奇妙さだったり、家系の話に関しても一般的なものとは違うのもわかる。確かにあまりにも相手の言を信用しすぎなところはあるが、それでもどうとでもなるからこそでもある。


「まあ、なんとかなるだろうしなんとかするから」

「……そうですね。私がいくら言おうとキミヤ様もアリルフィーラ様も自分たちの意見の方を押し進めますからね」

「棘がある言い方だな……」

「そうなる程にキミヤ様がいろいろなさっているので」


 大体公也が悪い、というのは公也のせいで結構苦労を被っている人物の言である。悪事を行っているわけではないが結果として被害を受けているため不満がたまってそういうふうななようになる。


「とりあえず今日はここに泊まらせてもらうとして……次に向かうところだな」

「どこへ? いえ、そもそも何を?」

「もともと旅の途中だしな。観光旅行というか」

「……観光」

「変か?」

「そういったことができる人物は多くありません。我々でもあまりあちこち行くようなことはしません。もっとも一切旅行することがないとは言いませんが。しかし旅……旅行……観光……案内なら私でもできますが。あまりそういったことには明るくないので紹介を上手くできるとは言いませんが」

「いや……この辺り、内の方の観光はしたし、川沿いや海沿いの地域も見て回った。だからたぶん案内は必要ない」

「川沿いや海沿いに? そんな危険なところにアリルフィーラ様を連れて行ったと?」

「ちゃんと防御対策はしているが……」

「対策していればいいという問題ではありません。そんなところに連れて行くこと自体が問題です」


 フィリアが二人に増えたような感じのするウィルハルトの発言である。まあなんというか二人は性格的に似たり寄ったりという感じである。ただ気が合うかどうかはわからないが。性質的に似ているからこそ、些細な違いが大きな対立を作る可能性はある。そんな話はさておき、川沿いや海沿いにもいき、内の方も色々見て回った公也たち。そんな話を聞いてウィルハルトは疑問が浮かぶ。


「ではどこに? 色々と既に行ったのであれば行くところはありませんが」

「未管理地域に行くつもりだが」

「未管理地域!?」


 公也の発言に驚くウィルハルト。そして未管理地域に関してウィルハルトは公也に対して危険性を説き、またそこに行こうという好意に対して文句を言う。その大きな要因、内容はアリルフィーラを危険に曝すことだがそれ以外に関しても色々と理由を話している。自分たちだけの危険に関してだけではなく他所に危険を招く可能性もある。そういう点でも問題がある。ともかく諸々未管理地域に関してその危険をウィルハルトが説く……しかし、それで公也たちが未管理地域に行くことを防ぐことはできない。そこに行き、後は山に向かい探索する、それが終わるまでは旅が続く。



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