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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五章 城生活と小期間の旅
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 アンデルク山から山脈に沿って空を移動する公也とその騎竜であるワイバーン。特にこれと言って目を見張るような景色もなく、アンデルク城のような特別な建築物などもない。そもそもキアラート、トルメリリン共にアンデルク山に拠点を建築できないように近隣の山々は魔物や獣の巣で人が入ることができない難所。特殊な建築物など存在するはずもない。かといって一部では人が住んでいないわけではない。ワイバーンの巣となっているワイバーンの谷近辺ではワイバーンの脅威があるためあまり魔物や獣が住み着くことがない。まあそういった一部例外的な特殊な事例であればの話になるわけだが。

 そんな風に特に見どころのない中ワイバーンに乗っている公也は退屈している。ワイバーンに乗るという行為はかなり安定性に欠け空中ゆえに落ちる危険のあるという事実もあって流石に気を抜いて騎乗するわけにもいかないが落ちたところで害はない。ワイバーンが飛んで逃げていくくらいの損しかないといったところなのでそこまで気にしていないが、一応は安全をしっかり確保している。無駄に損失を出したり心配をかけるのもあれなので。だがそういったことよりも、退屈を紛らわせる、興味を持つようなことをしたい。そういった気分である。


「空中で出来ることなんて限られてるんだよな。ワイバーンの操縦……と言ってもこいつに任せているだけなわけだが、それ以外に何かできることと言えば……やはり飛行に関して少し試したいことやりたいこともあるし…………ふむ」


 公也はワイバーンを見る。騎竜に対して騎乗者ができることは一体どれほどあるだろうか。基本的に空を飛ぶのはワイバーンの役目で騎乗者はその状態では何もできない。戦闘する場面であれば騎乗者が戦いに参加するなどもあるが単純に空を飛んで移動する場合騎乗者は騎竜に乗っていることくらいしかできないだろう。しかしそれは普通の場合。通常の騎乗者と違い公也は魔法使い。様々な形でワイバーンを手助けできる。


「風よ空を駆ける者に遮る物のない守りを、ブリーズアーマー」


 公也はワイバーンに防御の魔法をかける。これは攻撃に対しての防御ではなく、風、風圧などの飛行する場合に騎乗者や騎竜に対して起きる影響への守りである。空を駆けると言うのは単純に自分の力だけではなく風など様々な環境的な影響を受ける。横風に突風、追い風向かい風、移動速度もその時々で変わるだろう。竜種の飛行は通常の生物の飛行手段、一般的なものでいえば鳥などの物とは違った飛行手段であるとされるがそれでもやはり飛行中は空気や風などの影響を受ける。その影響をかわすことで速度を速めたり風による負担、疲労などを減らすことができるだろう。もっともそれまでの飛行とは違う感覚になることで飛行自体に影響を受ける可能性がないわけではないし魔法の効果が切れた場合はそれまで影響がないことに慣れた状態になっているところにいきなりそういった悪い影響が入ってくることになるためそうすることが絶対に良いことであるとは言えないが。


「グルウ?」

「これで飛びやすくなったか?」

「グルルアッ」

「……言っていることまではわからないが、悪くはなさそうな感じか?」


 ワイバーンは人間の入っていることを理解できる……言語的に通じているとかそういう形ではなく、相手の意思を把握する形での理解なのかもしれない。それに対してワイバーンの言語、言葉は人間側には理解できない。もっともワイバーンの表情、仕草などである程度感情を読み取ることはできるだろう。もっとも公也はあまりその手のことが得意であるとは言い難いのだが。


「どうせだ、もっと速く飛んでみたいとは思わないか?」

「グルッ」

「風よ空を駆ける力をこの者に」

「グルルッ」


 先ほどの詠唱よりも短い……のは呪文を思いつかなかったからであるし効果をある程度制限するため。必要魔力量は増えるがそこまで魔力を籠めずどれくらいの補助にすべきかと考えるためのもの。ワイバーンがあまりにも高速機動できるようになると乗っている公也の方にも影響が出るかもしれないからである。本当に軽くの魔法であるがそれでもワイバーンにはかなり大きなものであったらしい。およそ五割増しと言えるくらいの速度で空を飛べるようになった。


「ちょっと! 流石に少し抑えて!! 危ないから!」

「グルルッ!」

「まったく……この状態掴まっているのも結構大変だって言うのに。少し落ち着け」


 今までにない動きでアクロバティックに飛行し公也を翻弄するワイバーン。しっかりと掴まっていなければそのワイバーンの動きで空へと放り出されることになるだろう。公也は力は十分以上にあるので掴まっていられるが一般的な人間はまず無理だと思われる。別にワイバーンも公也を振り払うためにそうしているわけではなくいつもと違う飛行ができることに喜んだ結果なのだがそれで振り回されるのも困った話だ。まあワイバーンにそうできるだけの能力を持たせたのは公也であるわけだが。


「っと! 危ない……流石にやりすぎだ! まだやるようだったら魔法で抑えるぞ! 頻繁に何度も連続でやるな!」

「グルルッ……」

「それでいい。別にやるな、とは言わないがあまり頻繁にするな。乗っている俺が振り回されることになる……お前としてそちらの方がいいのかもしれないが」

「グル……」


 ワイバーンとしては人間に従えられている状態とは望ましい状態ではないだろう。一応安全の面や食料の確保という面では公也を含む人間の勢力に属しているのは悪いことではない。しかしもともとワイバーンは強い。下手な魔物や獣ならば相手にならないためそう脅威、危険となるようなものがない。つまりわざわざ人間の保護を受ける必要がない。まあ元々人間に負けて従えられていたワイバーンたちだったのだからそこまで抵抗はないだろう。自由を確保したいと言う気持ちはないわけではないが人間に従えられることで得られるものもある。例えば今ワイバーンが経験している今までにない飛行能力は公也の魔法があったからこそ。魔法に限らず食事もただ肉を食らうというだけでなく焼いた肉や味付けされた肉、ワイバーンでは普通獲ることのできない魔物や獣などが得られることもある。決してワイバーンに損であることばかりではない。生きやすさでいえば野生よりも生きやすいだろう。その代わり人間に使われることになるわけだが。まあ一応ワイバーンも従う相手は選ぶ。現状のアンデルク城にいる人間では公也とヴィローサのみ、実力を有していたり生物的に上位者としての格を持つ存在など。それくらいでなければワイバーンを従えられないと言うことだ。

 今公也が従えているワイバーンも色々と思うところはあるものの、決して現状が悪いと思っているわけではない。ワイバーンが公也を振り回すような飛行をしていたのは単純に今までできない動きができるようになったからというだけである。

 そんなふうに公也を多少振り回しつつもワイバーンはワイバーンの谷へと向かう。


※主人公が落ちてもケガをしない……してもすぐに補填で回復するのでないようなもの。

※今回騎乗している彼あるいは彼女は今回で主人公慣れしたためまた乗る機会もある。少なくともワイバーンの中では比較的出番のあるタイプと思われる。まあ名前がつくようなこともないが。

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