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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十七章 旅の道連れ
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「はっ!」


 川の方へと馬車で向かい、ぽつぽつと出会うことになった魔物の退治をする公也。川沿いは魔物が出てくることが多いとはいえ、それはあくまでこの大陸における基準での話であり、公也たちの大陸で見かけるほどの魔物ではない。強さとしてもそこまでではない。


「……大したことないな」

「お疲れ様です」

「ああ、問題はない……しかし、川に向かう道はあまり整備されてないな」

「わざわざ危険のある所に向かう人も少ないでしょう。魔物も出てくるようですし仕方ないかと思います」

「あちこちで魔物と戦っている人も見えるからな……魔法道具を持っている……人物ばかりじゃないか」

「魔法道具も魔石も供給限度があるようですし仕方ないでしょう」


 公也たちが魔物と遭遇しているように他にも魔物と遭遇している人物がいる。もっとも彼らはどちらかというと魔物と戦いに来た形である。川辺は魔物が出やすく、そこから魔物が向かってくる。其れを防ぐために戦う……者もいれば、魔物を斃しその素材を目当てとしている者もいる。魔法道具を作るのに必要な素材は場合によっては魔物の素材が使われる。魔物の素材は決して何でも使われるわけではないしなくても作ることは不可能ではない、しかし魔法道具次第では魔物の素材があった方がいいこともある。あるいは魔法道具関連ではなく魔物自体を食べるためとか、普通に毛皮などの利用とか、内臓などを薬にするとか、その他牙や爪などの素材を何らかの武器や防具に加工するとか様々な理由がある。

 そして魔物と戦っている人物は幾らか……というほど多くはないが、種類がある。単純に魔法道具を持っている人物とそうでない人物。魔法道具はこの大陸で使われる武器として当たり前に持ち使われているが、それを持っていない人物も存在し、当然持たない人物は魔法道具で戦えない、ではどうするかと言えば普通に戦うだけである。公也のいた大陸にいた冒険者も技も持たない魔法も使えない人物は多くいた。しかし魔物と戦うのはほぼすべての冒険者がそうである。当然武器を持ってきちんとした装備をして戦えば魔物相手でも戦える……もちろんある程度鍛えていたりしないと厳しくはあるが。その点で言えばこちらの大陸でも体を鍛えないというわけでもないし多少は直接戦闘をすることができる人物もいる。魔法道具を使っていてもそれを効果的に扱えるようにするため体を鍛えることもある。決して誰もが魔法道具なしでやっていけないわけではない。


「……とりあえず道沿いか」

「ずっと進んでいますがまだ行くつもりですか?」

「直に川を見てみたいところだ。直接見ればわかることもある」


 公也たちが……いや、公也が目的とするところは川。道中でも魔物に逢うが魔物目的ならそれらの魔物でも別にいいだろうが公也としては川、地脈の様子などを見たいところ。公也はそのあたりをはっきりわかるわけでもなく、地脈の操作をできるわけではないがなんとなくだがわからないわけでもなく、そこから色々と……わかる範囲で判断できることはあるだろう。


「キミヤ様だけで……いえ、それではアリルフィーラ様の安全の保証が難しいでしょう。馬車に使っている防御の魔法道具、そもそもキミヤ様が防犯に一役買っているわけですし私とシーヴェだけでは流石に厳しいでしょう……宿にいれば安全でしょうが、そんな閉じこもっている状況が果たしていいか。アリルフィーラ様の立場であれば別にあれこれと動かなければいけないわけではないですしそれでいいはずなのですが……」

「行って戻るにしても残していくのはどうかと思うが。もしかしたらそのままどこかに行くことも考えるし」

「アリルフィーラ様が一緒でないならば戻ってくるでしょう。流石にキミヤ様だけで勝手に行くようなことはしませんよね」

「まあ、流石にそれはな」

「なら残っていたとしても問題はないはずです」

「……そうだが、置いていくのもな。それに旅、いろいろ見て回るのも楽しいものだろう」

「危険さえなければそれでいいですが……現状が安全とは」

「それは前にも話したと思うが……結局向こうでも安全とは限らないだろう……そういうことを言うと結局どこでも同じ問題が出てくるだけだと思うが。絶対の安全はどこにもないんだから多少は緩く考えてもいいかと思うが」

「それは私の役目ではないでしょう。私は他の方と違いアリルフィーラ様のためにあらゆることを厳しく最悪の想定寄りで考えるだけです」


 結構意見の対立が起きるが、大体はアリルフィーラ優先のフィリアが原因……安全第一、安心できる環境を要求するためだが、この地ではまず無理なものであるため毎回のように言ってくる。公也が連れて行った場合でも、また公也が出る際に残していった場合でもフィリアの発言は大体厳しい物言いとなるだろう。こればかりは公也たちの総数が少ないのも一因、公也がいなくなった場合アリルフィーラを守るために動けるのがシーヴェとフィリアしかいないからこそいろいろ言ってくる。


「何かあっても近くならい大丈夫だから別にいいだろう?」

「その何かあること自体が問題なのですが」

「防御の魔法道具もあるんだが。フィリアは本当に頑固だな……」

「頑固と言われるのは……少しむっとしますね」


 頭が固いと言われるのはフィリアとしてはちょっと不満に思えるものらしい。




「川だ」

「川ですね」

「大きい……」

「そうですねー」

「アリルフィーラ様は馬車に身を戻してください。シーヴェ!」

「あ、は、はーい!」

「もう……確かに危険かもしれないので戻りますけど、少し見るくらいいいじゃない……」


 道を進み川の近くまで来た公也たち。その場所から巨大な川が見える。その光景を見る四者……アリルフィーラはフィリアの指示でシーヴェに隠されたが。アリルフィーラもちょっと文句を言っているが、彼女としてもフィリアの気持ちは分かっているので仕方がないと受け入れている。


「っと!」


 不意に川から魔物が跳び上がってくる。それに対して公也が対処する。


「結構距離があるんだが……ここまで跳んでくるか」

「やはり安全では」

「防御の魔法道具を使っているから馬車に来てもとりあえずなんとかなる。そこまで心配するほどでもない。流石に本当に川の近くまでいったらもっと襲ってこられるだろうか危ないだろうけど」


 川の中には結構な数の魔物がいる……流石に遠目なので公也でも川の中を見渡すことはできないが、川の様子からしてそれが想定できる。魔物が結構跳ねたり顔を出したりしているのが見えるからだ。流石に溢れるほどいるというわけでもないが、結構いるだろうというのは確認できるレベルではある。


「……流石に周りには人がいないか」

「あれだけの魔物がいるのに近づく方がおかしいです」

「確かにこっちだとそうだろうな……魔法道具があっても川の近くは厳しいか」

「そもそもあの魔物を倒すメリットもないでしょう。川の中の魔物も、近くの魔物も無理に倒す必要はないはずです。近づかなければ危険がなく、向かってくる魔物も対応できるレベルであれば……来た魔物を迎撃する程度でいい」


 こちらの大陸でも魔物は危険である。しかし魔物は川沿いにいるものがほとんどであり、近づいたりしなければそうそう危険がなく川から向かってくる魔物に対してもある程度はなんとでもなることもあって魔物退治の必要性が薄い。川沿いの魔物も向かってくる魔物は少数であり、大体は川沿いで魔物同士で争いになったりで数を減らすため割と大丈夫である。川の中の魔物はそもそも水の外にはめったに出てこない出でてこれる魔物自体多くもないだろう。

 もっとも……珍しいことであるが自ら出てくる特殊で強力な魔物が向かってきたり、あるいはたまに稀に特殊な魔物を目当てに一獲千金を狙う人物がきたりする。そして川の傍まで来ると……人の気配か何かを感じてか、あるいは通常では見られない相手を観測するからか、魔物の動きが活発になることもある。普段は表れない魔物が出てくることもある。


「……何か出てきたな」

「どう考えても危ないのですが」

「何とかしよう」


 巨大な馬の上半身が川の中から現れた。なぜ馬なのか……という疑問はさておき、巨大な魔物は結構厄介なものである。後ろにはアリルフィーラたちもいる死状況的に面倒な感じだろう。



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