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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五章 城生活と小期間の旅
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「旅に出るんだね。お土産よろしく。魔法薬の素材とか魔法の開発に使えそうな何かを頼むよ」

「ロムニル、そういう強請り方はどうかと思うわよ? 珍しい日持ちするお菓子とかお願いね」

「……いや、リーリェさんも頼んでるっすよね? 師匠、無事に戻ってくるっすよ」

「誰に物を言っているのよフーマル? キイ様なんだから大丈夫に決まってるでしょう。キイ様、お早いお帰りをお待ちしてます」

「ああ」


 公也の見送りに来ているロムニルたち。他の見送りはいない……クラムベルトあたりは来てもいいかもしれないと思うくらいだが彼らも仕事で忙しい……というよりは公也たちと打ち解けていないのが原因だろう。このアンデルク城においてやるべき仕事はそう多くない。ある意味彼らも現状は結構暇の方が多い。そもそもこの場所自体領地としてちゃんとした場所ではなし、城の仕事も元々大して必要もないし兵士などの人員もいなく役割としても多くはない。交流機会もあまりないというか。不満が溜まっているのではないだろうか。


「っと、ペティ」

「…………待ってる」

「ああ。城の方は頼む」


 ペティエットは城の中からの見送りだ。彼女は入口から外に出ることはできない。ペティエットは部屋に鎖でつながれているという束縛からは逃れた物の彼女は城という場所の存在。その場所から離れることはできない。入口まで来れても壁があるようにそこから外に出ると言うことはできない。


「それじゃあ行ってくる。何かあったら連絡を頼む」

「遠話も試したけど、結局どこまで有効なのかはわからないねえ」

「魔力を込めるのを忘れないようにね」


 公也たちの開発した遠話の魔法も基本的には空間転移の魔法陣と変わらない魔法陣を利用した仕組みだ。ただ、これに関して言えば空間転移のものと違って本当に双方向のものとなっている。遠話に関して言えば使った魔法陣を持つ本人と対応する魔法陣を持つ人物が繋がればいいものであり双方がお互いに話し合うもの。そのため対応する魔法陣をそれぞれ用意する形でロムニル、リーリェが個人用のものを、ペティエットの部屋に連絡用のものを持っている。ロムニルとリーリェの持つ二つはいざという時の連絡用であり彼らが急に何かを見つけた時の物。ペティエットの部屋にあるものはペティエットの連絡用でもあるが同時に公也から連絡をつけるためのものでもある。遠話の魔法陣は空間転移の物と同じで魔法陣の待機状態が必要になる。個人間での連絡もできるが公也から連絡できるのはペティエットの部屋にある者に対してのみでロムニルやリーリェに直接の連絡はできない。これはロムニルやリーリェの遠話の魔法陣に魔力を込めるのが結構な負担となるからだ。公也ほどの魔力量がないため朝に夜まで魔法陣の待機状態を維持するほどの魔力を込めるのは大変である。ゆえに城魔に書かれることで常時待機状態を維持できるペティエットの部屋の魔法陣が常時連絡できる手段ということになるのである。一方で公也の方はロムニルやリーリェからの連絡を受け取れるように常に朝に魔法陣に魔力を込めるようにするということになっている。使う機会がなかったとしてもいざという時のための連絡手段があるのとないのではかなり大きな差がある。とはいえ、この試みがどれほど成功するかは今のところわからない。距離による魔力消費の関係上あまりに離れすぎると使えなくなる危険もあり得る。今回はその検証も兼ねていると言えるもの……であるのかもしれない。

 ちなみにこの遠話の魔法陣を考えているとき、この魔法陣で連絡を取ることで空間転移の魔法陣に魔力を込めて起動してもらえるのでは、と一瞬考えたりもした。もっとも結局のところ城に魔法陣を書き込まないと必要魔力量の関係で起動できない可能性もあると言うことからどちらにしても変わらなかったが。


「行くぞ」

「グルルォッ!」


 公也がワイバーンに乗り、ワイバーンが空へと飛び立つ。既にこのワイバーンに乗っての飛行も公也にとってはそれなりに慣れたもの。山を下りる際や戻ってくる際などに何度も行っているため特にこれと言って問題はない。そうして公也はアンデルク城を旅立ったのである。






「さて……どこに向かったものか」


 旅立ったは良いが現状公也は特に目的とすることがない。とりあえず何処にでもいいので行ってみたいという感じではあるが、明確にここに行きたいと言う目的はなかったりする。


「お前どこか行きたいところはあるか?」

「グルゥ?」


 突然の質問。乗り手である公也に訊ねられワイバーンも少し戸惑った様子である。そもそもワイバーンは公也の言葉を理解しているのだろうか? いや、ワイバーンが公也の指示に従い飛び回る時点で恐らく理解しているのだろう。つまり質問の意味は分かると言うことになる。しかしやはりワイバーンはその質問には戸惑うところである。そもそも目的があるから飛ばすのではないのだろうか。乗り手である公也は一体何を考え自分を飛ばしたのか。


「グルル……グルッ!」

「そっちにいくのか……キアラートでもトルメリリンでもない方向か。いや、少しトルメリリンに寄っている感じか?」


 ワイバーンはキアラートとトルメリリンの間にある山脈に沿ったように飛行していく。ただ方向的には若干トルメリリンよりに進んでいる。しかしトルメリリン本国に向かうと言うわけではない。ワイバーンはトルメリリンのワイバーン部隊で使われていたものでありトルメリリン出身と言える。しかし実際にはトルメリリンの国自体の出身ではない。トルメリリンにはワイバーンを手に入れるためのワイバーンが住む谷に通じる道が存在する。他の地域からは殆ど入り込むことが難しいその土地はトルメリリンからしか殆ど移動できない。それゆえにワイバーン部隊はトルメリリンにしか存在しないとされている。

 つまりワイバーンの出身地はそのワイバーンの谷である。自由にどこにでも行っていい、どこか行きたいところと言われればワイバーンとして思いついたのはその場所だったわけである。つまりワイバーンは今ワイバーンの谷へと向かっている。里帰りだ。


「さて、何処に行くんだろうか」


 公也はそのことを知らない。仮にトルメリリンに向かうのであれば流石に制止をかけたがそうでなければ気にしない。一応ワイバーンの谷はトルメリリンに属する扱いなのだが、まああまり人の来ないような場所なのでそう問題視はされないだろう。


※基本的に主人公の心配をしない魔法使い二人。主人公の心配をする弟子と妖精。相手に対する心情が見て取れる。あるいは二人が心配しないのは信頼があるからか。いや、どっちかっていうと物欲な気がする。

※城魔の意思であるペティエットは城から離れること、城の外に出ることはできない。彼女の自由はあくまで城の中だけ。城の中とは果たしてどこまでを言うのだろうか。とりあえず屋上には出れなかったと思う。

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