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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十七章 旅の道連れ
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 四島の一つの島を進む公也たち。川沿い、海沿い、首都から遠い方、未管理地域、あるいは首都方面、もしくは山の方、行くところは色々とあるが、まず公也たちが何を求めるかと言えば魔法道具となるだろう。攻撃系の魔法道具、防御系の魔法道具、いろいろとあるがフィリアが強く主張するのが防御系の魔法道具である。まあ彼女からすればアリルフィーラの安全が何よりも優先である。


「……高かったなあ」

「元手ゼロで購入できているのですから気にはならないでしょう」

「まあ、もともとお金自体に執着があるわけでもないからな……流石に強力で大規模の防御の魔法道具ってことで高かったが」

「馬車ごと守るものもありますし、私がつけることになっているものも、フィリアとシーヴェがつけるものもあって本当にお金がかかりましたね」

「結構な大金……だったんですよね。わたしもキミヤさんと一緒に買いに行きましたけど、魔法道具ってすごく高いですよ……」


 公也たちの旅の資金は全部魔石によるもの。最初こそ魔法道具を売ったりもしたがそれ以後は魔石で稼いでいる。アストロからの報酬もあるが、弾むと言っていた報酬も護衛料としてはであって別に大金というわけでもない。この大陸には冒険者の仕事も魔物退治も特にないし、お金を稼ぐには公也であれば手っ取り早いのは魔石を作り売り払うことである。まあこれがバレてしまうと結構厄介なことになるのだが、今のところバレる様子はない。ちゃんと街を変えて売っているのが大きいだろう。

 魔石は未使用であれば本来売られているほどではないとはいえ十分な値段で売れる。それもこれも魔石はどこでも魔法道具に使われるため売られる物であり需要が高い。そして一般的な魔法使いでは魔石を作るのはあまりそこまで高頻度で作れるものでもない。公也の場合はそれこそ一日で数十作るのも余裕なのだが……仮にこの大陸に魔法使いが仙人板として、一日一魔石ならば千個の魔石が一日にできる。それを各地に回す……となる場合、一つの街でいくつの魔石が供給できるだろう。そこまで少なくないし魔石の利用も毎日常にというわけではなく、一つの魔石で一回しか使用できないわけでもない。しかし、どうしても魔石の個数は足りなくなってくる。それゆえに使用して消耗した魔石でも需要はあり、未使用であれば当然その価値は大きい。流石に未使用の魔石をいくつも売ってこられるのは怪しくもなってくるが、一回だけならば需要の高さゆえにあまり気にされない。いや、何回来ても買取してくれるかもしれない。もっとも魔法道具を売っているのは貴族側の人間である。それゆえに公也たちのことを怪しみ探りをかけてくる可能性は高い。


「でもバレなくてよかったですね。魔石、作れるのってバレたらまずいんですよね?」

「だろうな。アストロの話からすれば……彼らは皆貴族やそれに類する立場、関係者なんだろう」

「……魔法道具を売っている人たちのことですね」

「私は行ったことがありませんけど……魔法道具の取扱店の人は普通に話せるんですよね?」

「ああ。魔法道具関連は本当にそちら側の人間が扱ってるってことだろう。アストロの移動もそれ関連だったみたいだし」


 魔法道具屋の店員は最初に公也が話し、普通に話していたと把握している。そしてそれ以後も魔法道具屋に通い、店員と話やはり同じように話し方は普通だった。店員として雇っているのは普通の街の人ではない、ということだ。というより取り扱う者の関係上相応に信用のおける相手でなければ雇えない使えないということでもあるのだろう。魔石や魔法道具はそれだけの価値がある、危険の高い代物だ。

 そういう相手であるため魔法に関わる能力を持っていないわけでもない。公也の魔法使いとしての気配を感じる者もなかにはいたかもしれない。ただ、特に何も言われることはなかった。そもそも公也自身の話し方の関係上貴族関係の何かであるのは分かっているわけであるし、魔法使いとしての感じる何かがあったとしてもそこまで変でもない。そもそもこの大陸でも貴族関係でなくとも魔法使いは生まれることがある。公也たちのいた大陸と比べると全然少なくはあるが。


「とりあえずこれで安全面に関してはいいだろう?」

「……戻るのが一番ですが」

「まだ言うか……」

「一番いいのは戻ることに変わりありません。ですが……旅をするなら十分な防御手段を得ることはできあ、と思うところではあります」

「ではこれで旅を再開するということでいいですね」

「今までも旅をしていたようなものだと思いますが」

「そうですね。結構色々と街を巡りましたし……でもまだまだいろいろ行くつもりですか?」

「ああ。とりあえず……まずは川の方に向かうか」

「川や海は危険でしょう」

「未管理地域でも危険だし首都も危うい、そんなことを言っていたら結局行ける場所がなくなる。大陸の真ん中付近の街やら何やらを巡るだけだと真新しさがないぞ」


 公也が向かおうと考えているのは川の方。当然川や海の方は魔物の発生の都合上危険が大きい。安全面で言えば首都の方も悪くはないがそちらだと身分的なもので危険がある。中間地点である公也たちが現在回っていた地域であればそこまで危険はないが、結局のところどこもそこまで大きな変化のない同じような場所だ。多少魔法道具の開発などで文化的なもの、建築物や観光名所みたいなものを作っていたりはするがそれもほとんど大したものでもないところが多い。一応アストロの言っていたものも知識としてはあるが公也たちの回っていたところにはなかった。それも探す目的で色々行き来したいところではあるかもしれない。

 それ以上に興味があるのは川、そしてその向こうやそこの魔物だったりである。公也も川をいくらも見たことがあるが、大陸を島にするような分断するほどの大きな川は見たことがない。それ自体がある意味では観光名所になるような巨大な川……地脈の関連もあるし、一度行って色々と確認してみたいところだろう。海方面や山方面も興味が惹かれないわけではないが……とりあえずは距離的にまだ行きやすそうな川、といった感じである。


「そういう理由で決められても困りますが……」

「結局行くことには変わりないし、早いか遅いかだから別にいいだろう?」

「…………」

「フィリアさん、キミヤさんに言っても仕方ないですよ。こういう時言っても聞かないって、いつもそんな感じじゃないですか?」

「ハルティーア様も大分苦労していらっしゃいますから……」

「………………」


 唐突に飛んでくるハルティーアの苦労話。現在の公也の強情さ、自分の目的を優先する押しの強い意見はいつも通りであり、またハルティーアが怒る要因となる諸々に近い。決してそれが悪いわけではないのだが、周囲の苦労とか伴う面倒とか、そういうことをもっと考えろ……とよく言われる思われるもの。それにフィリアたちも巻き込まれている感じだ。まあ気にしているのはフィリアくらい、シーヴェはまあ別にいいやという感じだしアリルフィーラは公也の意見を優先する。フィリアにとっては胃の痛い状況であった。




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