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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十六章 神渡り
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 流石に野営中ある程度話す余裕があるとしても、そう毎日話せないし夜に話すにも時間的な限度がある。もともと急ぎということもあり一日にできるだけ移動することを優先しているためそこまで余裕があるわけでもない。早い段階である程度公也たちと話し事情を理解したアストロはそれ以後は簡易的に話す程度でそこまで詳しく話すこともなかった。公也たちもそこまで何か優先して聞きたいこと、そもそも何を聞きたいのかもあまりわからないという点もあって公也たち側もあまり聞こうとはしない。そういうこともあって普通に護衛の仕事をしていた。

 そして予定の街に到達し公也たちはアストロと別れることとなった。アストロと話した諸々の内容を総合し、公也たちは首都側に近づいた状況にある。この大陸、四島の首都は少なくとも今公也たちのいる島では山側に存在している。山のふもとというほどそばではないが、山側、川よりも遠い内側、海から離れた山寄りの側、そのあたりに首都があるということらしい。

 現在公也たちは街に滞在中、次にどうするかどこに行くか、そのあたりの話し合いをしている。


「目的地とする場所に関してだが」

「どうするつもりです? 正直私としてはこの大陸にいる意味を見いだせないのですが」

「たまの旅くらい構わないと思いますよ?」

「それなら元々いた大陸でも構わないと思います。わざわざこんな私達の存在が怪しまれるような場所で旅をする意味は薄いかと思いますが」

「でもちょっとこの大陸で魔法道具とか欲しいと思いませんか? わたしでも使えるようなのですしちょっと興味が」

「シーヴェは黙ってなさい」

「あう……」

「俺も興味はあるが」

「キミヤ様のそれはわかります。ですが身の安全を重視するならあまりこちらに滞在するのはどうかと。先日のアストロという方に怪しまれたように一定の立場にある方であればキミヤ様やアリルフィーラ様はもちろん私達の存在も怪しいものとなるでしょう。面倒ごとに巻き込まれる可能性が高いのはあまり好ましくありません」


 公也はこの大陸の状況、様々な知識、魔法道具関連のいろいろなものに興味がある。しかしフィリアからすればアストロの件で余計にいろいろ問題があると感じた。特にアリルフィーラを巻き込んで妙なことになりかねないのではないかと厳しい目で見ている。


「ふむ……それは首都方面、貴族などの存在が多い方向であれば、じゃないか?」

「……そうですね。一般市民はそこまで話し方を意識、それに対して執着、警戒はしないとは思いますが」


 公也たちを怪しんだのはアストロである。アストロは貴族、あるいはそれに近い立場でありその関係で公也たちの存在を怪しんだ。しかし普通の人はそこまででもない……一応盗賊は怪しんだあたり必ずそうであるというわけでもないだろう。まあ彼らの場合は盗賊だからというのはあるかもしれない。ただ、普通の人でも怪しむときは怪し無視怪しまない時は怪しまない、だが貴族はおそらくほぼ怪しむだろうという事実はある。貴族が怪しむのは公也の家名の存在がないこと、喋り方、四人とも普通に喋ることができるという点、事実から。近づけば少なくとも怪しまれる、危険視されるかもしれない。

 だがそれは首都方面なら……貴族などの存在が多いのは安全な場所、十分に設備が整った場所である。この大陸は川の知覚や海の近くになればなるほど魔石の供給は少なくなり、また危険も多い。当然貴族ともなればそういった不便で安全ではない場所で過ごすことはなく、首都などで過ごしているだろう。そもそも貴族などの立場の存在は魔法使い、魔法道具作りをしたり魔石づくりなどをする立場である。そういった存在が安全はない大陸の端の方、川沿いや海の方にいるわけがない。首都、安全で色々としっかりとした場所にいるわけである。

 つまり首都方面でなければ公也たちの存在が怪しまれる、危険視され警戒されることは少ない……無いとは言えない。盗賊が怪しんだように普通の人が怪しむ可能性もあるし、普通は貴族が来ないような場所であれば余計に貴族たちのような話し方をする公也は浮いた存在になるだろう。


「しかしそうなると川の方や海の方……危険な場所に近づくことになるのでは?」

「未管理地域もある。未管理地域はこの大陸で数少ない魔物のいる場所らしいからそういう点でも危険はあるだろう」

「……そんな場所に行くのはどうかと思いますが」

「公也様であれば魔物の危険はないでしょう。魔物より人の方が面倒な相手なのですから魔物がいる方はむしろ安全なのではないかしら?」

「魔物も危険ではあります。キミヤ様も完璧なわけではないでしょう」

「それを言ったらどこでも危険なことになるわ」

「だから早く戻りたいと言っているんです……アンデールならば今のところ最も安全ですから」

「強情ですね、あなたは」


 フィリアの優先は何よりもアリルフィーラの安全。それ故にこれだけ強情に帰ることを提案している。行っている通りこの大陸は決して安全ではないし公也たちとしても味方となる存在がいない。だからこそ余計に言っているのだろう。


「でもこちらで魔法道具を手に入れ持ち帰るのはアンデールにとっても役立つものになると思います。公也様が魔石を作ることができるようになりましたし、アンデールで魔石づくり魔法道具作りを行えるようになれば大きな力になるでしょう」

「……それができる人材がアンデールには全然足りませんが」

「そうかしら。ユミカにミディナリシェ、魔法に関して大きな力を持つ子はいるわ。特にミディナリシェからすれば魔力が余るくらいの膨大な魔力量なのでしょう? 少しくらい魔石づくりに魔力を使っても問題ないかと思うのだけど」

「……それは悪くない話かもしれませんが」

「安全に関しては公也様がいればもんだいありません。完ぺきではないかもしれませんけど、フィリアもシーヴェもいます。身の安全くらいならなんとでもなるでしょう。それにこの大陸には魔法道具があるのですから防御の魔法道具を手に入れればもっと安全になるでしょう? それでもまだ問題があるかしら」

「アンデールよりは全く安全ではありませんが」

「それはあちらで他に行くのでも同じでしょう」

「旅の人数の問題もあります。護衛を多く用意できます。こちらよりもはるかに安全を図れます」

「……本当に強情ですね」


 どこまでもフィリアの意見は頑なである。もっとも……結局彼女はアリルフィーラの最終決定に従うものであるため、結局いくら強く意見を言ってもこちらで旅をすることになってしまう。アリルフィーラが公也のため、公也の望みが叶う方向性で意見を言うのだから、公也の望む通りこちらで色々見て回ることが続く。頭を痛め苦労する悩み多い立場である。



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