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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十六章 神渡り
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「そういえば護衛に関してなんだが」

「何か問題でもありましたか?」

「俺たちを怪しんで正体を探るためにわざわざ護衛を外して俺たちを雇うことにしたのか?」


 少しだけ話をしていて公也が気にかかったことは護衛に関してである。公也たちはいなくなった護衛の代わりとして雇われたわけであるが、アストロは公也たちのことを怪しんでいた。護衛に雇うために護衛をわざわざ減らしたのか、そこまでして公也たちのことを調べる必要があったのか。それが気にかかったようだ。


「いや。実際護衛が体調を崩したのは事実だ。その代わりの護衛を雇う必要があった……あなたたちの調査に関してはその代わりの護衛を雇うついでというか」

「今は普通に話しているが、旅の途中で追及するように聞いてきたことは護衛を求めるならよくなかったんじゃないか……?」

「確かに危険がないわけではないですね。ですが必要なことです。流石にあなたがここまで危険そうな相手だとは……思わなかったのですが」


 公也をなめていた、というのはここで追及する要因の一つだろう。時日の追及も必要なことであったし、結局どこかで聞くのだからどこで聞こうとあまり変わりはない。とはいえ、相手が何者かわからないのに、しかもアストロ一人だけで公也たちに追及しに来るのは少々迂闊に過ぎるのではないか。護衛が近くにいる状況、あるいは公也だけアリルフィーラだけみたいな状況ならばともかく、相手の野営している場にわざわざ訪れて追及するのは流石に油断しすぎというか、行動として迂闊すぎるものかと思われる。

 まあこれに関しては彼自身緊急対応の防御用の魔法道具を持っているという事実といくらなんでも追及していきなり攻撃してきたりしないだろうという考えもあっただろう。根本的に護衛として雇う形でアストロが話しかけた時、それを受けた時点で怪しくはあるがそこまで危険はないと考えた。仮に四島の他の島からのスパイのような存在であれば受ける理由がない。この大陸の社会事情を知っていれば話し方でアストロが貴族やその類の存在であることは分かっているはず。であればまず近づかない選択を選ぶだろう。そもそも貴族の類の話し方をする人物を送り込むこと自体ないだろう。怪しまれる可能性が高いのだから。

 だから多少は何とかなるという考えであったが、公也の恐ろしさはそういった様々な想定を超えて恐ろしい者だった、というわけである。なお、本人の話してる通り護衛は元々六人と若干この大陸、一般的な移動に使うのには多い数であり、体調を崩したのもまた事実で置いて先に行っている、公也を護衛として求めたのも一応事実である。ただ、護衛の数自体は三人でも足りないわけではない。馬車に乗せる人数、急ぎで移動することを考えるなら六人はむしろ多い。まあ急ぎになった理由は体調不良で足止めを食らったからであり、別に体調不良になっていなければ既に発っていただろう。その時は公也達に逢うこともなかった。それだけの話となっていたと思われる。


「護衛はおいて行ったのか。しかし……目的地に着いたら俺たちの護衛は要らな良くなる、というか俺たちもそれ以上の護衛はやらないしついていくつもりもない。まあ、新規に護衛を雇うのかもしれないが……」

「ああ、おいて言った護衛にはきちんと目的地を伝えています。彼らとはこれっきりというわけではないですからね。長く雇っている護衛ですし、そう簡単に首を斬ることはありません」

「……護衛だけで移動するのか」

「旅人は特別多いわけではありませんが別にそこまで珍しいわけでもありません。護衛たちも三人で移動するなら問題はないでしょう。無暗に旅人を襲うような相手もそうそういませんし、危険を避けるのも難しくはありません。狙うにしてもそこまで得が大きい相手でもない。盗賊行為で稼ぐならやはり馬車などを襲うべきですからね」

「……なるほど」


 旅人が移動するのに持つ所持品はそこまで稼ぎになるようなものでもない。この大陸では魔法道具の類があるとはいえ、魔法道具と魔石を売り払っても旅人一人分ならたかが知れるもの。三人もいれば多少はと言ったところだがそれでもそこまで襲うメリットもない。そもそも魔法道具という者がある都合上、相手の人数が少なければ楽に襲い奪えるというわけでもない。一人でも恐ろしい魔法道具を持ち数の有利を狙えなかったり、多くとも魔法道具が弱く何とでもなるような相手というのもある。まあ圧倒的に数で優っていれば少人数の相手は大人しく降参するだろうが。それでも少人数であれば動きやすい、逃げやすい、自分たちの戦力をわかっているし危険そうな相手に無暗に近づない、そんな考え暗いある。公也たちのように無用に困っていそうな相手に近づく、なんてことはしない。

 今回護衛を置いて行ったのはあくまで一時的な処理である。アストロの急ぎの移動はあくまで時間がないからそうするのであり、その用件さえ済めば時間的には余裕ができる。というかすぐに動かないように調整する。その間伝えた目的地で護衛の到着を待ちまた仕事に向かうだけだ。多少体調不良で抜けることになった護衛に文句というかちょっとした罰みたいのはあるだろうが彼らもずっと護衛をやっていてこういった事態になることは全くないというわけでもない。そこまで多いわけでもないが、突発的な事態が起こることは珍しくもない。今回は少し問題になる程度に長いものだったため公也を雇うようなこととなったが。


「盗賊とかそういう輩は多いのか?」

「そんなことはない……と言いたいところですが、場所柄次第ですかね。魔法道具は取り扱いが複雑で、攻撃系の魔法道具はある程度売買の情報が握られています。魔法道具は誰でも使え、どこにでも隠して持ち込める。大きいものはともかく小さいものは危険ですからある程度情報はしっかり管理されています。攻撃系の魔法道具はその取扱いに資格を求めたり理由を求めることもありますしね」

「聞かれなかったが……買うときは聞かれるのか」

「聞かれるかもしれません、聞かれないかもしれません。実はそういうところは結構現場の裁量が多くて。管理が徹底されているわけではなかったりします。だから流れたりすることも多く、厄介な相手にわたることもあります」

「それは問題じゃないのか?」

「問題ですよ。ただ、重要な、危険性の高い魔法道具は流石に厳重に管理されている。そこだけはまだマシだ。もっとも……それすらも得らえるような危ないところがないわけでもないが。国の首都付近であればそんな危険なことはないが、ある程度外れの方に行くと……そういう輩は増えてくる。この辺りもそこそこ多い方だろう」

「そういうものか」


 盗賊などの無法者、乱暴者は国の首都方面ではほぼ全く見ない、といった感じである。多少街の中にいる厄介者はいないでもないし、どんな国でもあるような裏組織みたいなものはないわけでもないが……それでも表向きはほぼいない、あるいは首都付近、街の外でそういう輩と遭遇するようなことはほぼない、と言った感じである。

 しかし一方で地方、首都から離れれば離れるほどそういった存在の危険は多い。もっとも公也たちのいた大陸にいればそこまででもないだろう。この大陸では魔法道具があるゆえにこの強さがそこまででもなく、魔法道具の攻撃系のものは管理がそれなりに厳しい。ゆえに魔法道具を集めて盗賊組織をというのもなかなか簡単ではない。そもそも魔法道具があるゆえに奪って稼ぐよりも利用して稼ぎのいい仕事をする方が楽だ。まあどこにでも人道を外れる輩はいるし、人から奪う方が楽と考えることもある。そのあたりはそれぞれだろう。





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