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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十六章 神渡り
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「この大陸のことは……まあ、少しは分かった。しかし、それ以外はさっぱりだな」

「そうですね」

「そもそも何がわかっていないのかもよくわからないけどな」

「離したのはこの大陸のことに関して、情勢に関してだけだからまだまだ全然話していないことも多い。私が全部何もかも話せるわけでもないが、ある程度知りたいことがあるならば教えるのは構わない。あなたに面倒な騒動を起こしてもらいたくもないですし」


 アストロが公也にいろいろと話すのは公也の存在がいろいろな意味で危険そうだからである。何も知らずにあちこち首を突っ込めばそこで騒動を起こしてどれほどの被害を起こすか。洒落にならないような事態が起きないよう、できれば無暗に面倒なところに突っ込まないよう注意しておきたいようだ。


「そういえば……言葉に関してなんだが」

「ああ。あなたもそちらの女性も、従者のお二人も話し方は私たちと同じようでしたね。私たちこの地において貴族、あるいはそれに類する高貴な血を引くものは話し方が妙なことになりません。これに関して理由は不明ですが、私たちの血を強く引いていると大丈夫なようです」

「やっぱり何か妙な理由があるのか」

「わかりません。結構複雑なのですが……」


 この大陸において一般的な市民、血筋的に高貴な血筋を引いていないものは公也からみて方言やそれっぽい話し方となる。一方高貴な血筋の方はそういう話し方にはならない。これは誰であれそうなる……公也たちはその対象にならない辺り、大陸に住む者たちの血筋、それ自体が大きく関係するものなのかもしれない。

 この血筋を引くというのは結構複雑……いや、複雑ではないがいろいろ厄介だ。例えば高貴な血筋の者同士の子供は話し方が妙にならない。一般市民同士の子供は必ず話し方が妙になる。しかし混血、両者の血が混じった子供は……話し方が妙にならないのが基本である。ゆえに子供の話し方で親がどの系列かわかる。少なくとも普通に話している場合、片方の親に貴族の存在があるということになる。なのでこの大陸の男性貴族は隠れて浮気するとかそういうのは結構難しい。少なくとも一般市民、普通の立場の人相手だとまず子供を作るとバレる。

 そしてこの子供の血の混ざり方がかなり複雑であり、貴族の血筋が薄れていくと徐々に訛るようになってくる。ある程度の薄れ具合だと訛りは弱く、まだそれなりに音としては普通に聞ける、理解と音の不一致が少なくなる。だが血が本当に薄れてくると普通の訛り、一般的な市民の話し方と同じになる。結局それが何故、何が原因でそうなるのかは基本的には分かっていない。


「その点であなたたちは難しい目で見られることになるかもしれない。あまりにも普通に話せている。普通なら貴族の一員か何かになるが、あなたは家名を名乗っていない」

「あるけどこちらの大陸のそれとは違う。知らない家名だと怪しまれると困るだろう?」

「そうですね。ちなみにどのような?」

「アンデール」

「ありませんね。詐称と見られるか……あるいは他の島の人間として見られるか。どちらにしてもあまりいい結果になるとは思えません。名乗らないほうがいいでしょう……しかしその喋り方ですとどちらにしても怪しまれるでしょうが」

「かといって変えることもできないしな。そもそもあの喋り方は自然なものじゃない……聞こえる音と理解できる内容、把握できる内容が別というのは何らかの魔法か何かじゃないかと思うレベルのものだぞ?」

「魔法ではないとは思いますが。仮に魔法だとしてもその規模の魔法をどうやって扱う?」

「そうだな。魔法なら流石にわかるはず……常時影響をもたらしているならその気配を感じてもおかしくはない。魔法では……たぶんないんだろう」


 言語の妙は魔法によるもの……かと公也は少し考えるが、流石にそれほど大規模な魔法が使われていれば公也でなくともわかる。もっとも魔法に関してはかなり特殊なものもあり、また魔法道具によってはそういった何かを行えるものがあるかもしれない。もっともそういうことができるとしてもわざわざ人々の話し方を方言、訛るようにする理由が理解できないし、全ての人々ではなく貴族のみを対象にしないことやその血の混じり方で影響が変化することもまた妙なものである。


「一応貴族と普通の市民の子供は話し方が普通です。あなたの知識のなさも妾、そういった市民の子を育てるうえで意図的にそうした……隠して過ごさせたため何も知らせず知らないようにさせた、ということもありえなくはない。それが外に出てくる理由はわかりませんが、色々と事情があり外に出した、それがあなた方である……と考えることもできるでしょう。まあ多少無理やり感はありますけど」

「まあ……そうだな」

「あまり貴族関連と関わらなければそこまで怪しまれないでしょう。それを心がければいいかと」

「そうだな……できればそうさせてもらう」


 どうなるかは公也たちにはわからないが、積極的に関わるつもりはない……もっとも相手側から同動きを見せるかもわからないので難しいところだ。


「そういえば魔法道具に関してだが」

「あまり話せることは多くない。関わっている身として他者に漏らせることはどうしても……」

「普通の人でも知っている話は多少聞いている。売買にカードを作る必要があるとか、魔石を燃料にしているとかな」

「ああ、それくらいは知っていますか」

「手に入れた魔法道具をいろいろ調べたからな。作り方とか色々と気になるところはあるが」

「企業秘密です」

「俺も別に自分で作れないわけじゃないからそこまで知る必要はないと」

「作れるんですか!?」

「……厳密には作るのはなかなか難しいけどな。一人で作るとなると簡単なものしか」

「簡単な物でも作れれば相当なものだぞ!? いや、あなたはもしかして魔法使いなのか!?」

「……今までわからなかったのか?」

「少なくとも聞いていませんので」

「そちらがわかったりはしないのか?」

「魔法使いであればまだわかるかもしれません。魔法道具で魔法使いかどうかの判別を可能とするものもあります……しかし、見て分かれというのは。あなたの場合剣をもっていることもありますし、そういう方面なのかと」


 公也が自分は魔法使いであるというと大分驚かれた。まあ、公也は自分が魔法使いであるとはなかなか思えない見た目、印象である。そこは仕方のないところである……もっと戻悪露いたのは魔法使いであるという事実よりは魔法道具を作れるとかそちらの方面だ。これに関してこの大陸はかなり発展し、そして独占気味である。それなのに他所から来た人物が作れると言われると流石に驚く。


「そちらではその技術がどれほど広まっているのですか?」

「……いや。魔法道具に関しては俺たちのところでは全然だな。俺と俺の身内が多少詳しくて作れる程度の話だよ」

「ああ、そうですか……」


 少しほっとしたようである。まあこの大陸の強みである魔法道具関連が他所でも同じように、あるいはそれ以上だったなら少し危ぶむところがある。この大陸は四つに分かれ統一もされておらず安定もしていない。ゆえに他大陸からの侵攻、攻撃が魔法道具の発達次第ではあるかもしれない、そう思うところがあったからである。公也を見れば余計にそう思うところは増えるだろう。もっとも公也ですらこの大陸に来るのは難易度が高く、この大陸から外に出るのが難しいように外から中に入ることも難しい。なのでそこまで心配する必要はないだろう……そもそも海を渡るのは元々難易度が高いのだから。




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