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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十六章 神渡り
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「あそこか……結構大きな街だな」

「入るのは大丈夫でしょうか? この大陸の者ではないので身分証明がどうなるかわかりません」

「それは不安があるが……別にそこまで大きな街でもないし、そういった厳しい検問はやってないんじゃないか? 魔物もいないわけだし」

「確かに防壁の類はありませんが……」

「いちいちそんな厳しい検問はやらないだろう。まあこちらもお金も何もないから立場的に難しいところはあるが」

「賄賂を掴ませるつもりですか? それで黙らすことができるところだと楽でしょうけど……どちらにしてもお金はないですね」

「街に入るときにお金を取られるかどうかも不明か……魔石払いができるかどうかか?」

「魔石は確かにこの地の必需品、魔法道具に関わるものであるようですから支払いの代わりにできる可能性はあるかもしれませんが……」

「フィリア、あまり心配しても仕方ありません。どう頑張っても問題を回避できるかは不明です。あとは公也様に任せて行動しましょう」

「アリルフィーラ様はキミヤ様をあまりにも信用しすぎかと思いますが……」

「でもフィリアさん、ここまで来たんですしこの後無理に方針転換方向転換は難しくないですか? それにここでダメならどこでも同じかも……」

「…………そうですね。どこでもそこまで対応の違いはないかもしれません」


 森を過ぎ、村の人間が話していた街が見えるところまで来た公也たち。ここで公也達にとっての心配は自分たちの身分証明の問題とお金がないこと。街は防壁などない場所で結構大きいとはいえ、都市的な街ほどではない。とはいえ、検問的なことは行われているだろう。それがどれほどの厳しさかは不明だ。そもそもこの地における身分証明がどうなっているかもわからかない。ただ、街の周りは特別防壁みたいなものはない。ある程度の空堀みたいなものはあるがそれくらいだ。この大陸において魔物はそこまで数が存在せず、動物が襲ってくることはあるがその動物も森などの地域以外ではさほどの数はいない。街の外には牧場や農地らしきものもあるし、そこまで危険はないのだろう。あるとすれば盗人の類や公也が遭遇したような盗賊の類。ただ、街にそれらが襲ってくる危険、入り込む危険はそこまで注意していないのかもしれない。

 金銭がないことの問題は最悪物々交換である程度はどうにかできる可能性がある。特に魔石に関しては一度実際代価として使えている。ただこれに関してはそこが村であったからとかそういう理由があるし正当な取引とは違うからこそでもあるだろう。とはいえ、街に入る代価が厳密な意味での取引とは違い、多少誤魔化しの利く代物ではあるかもしれない点を考えれば魔石での支払いということは不可能ではない。あるいはすぐの支払いではなく街でお金を用立ててから支払えばいい、ということにできる可能性はある。実際魔石の現物さえあればお金の支払いという点では問題がないだろう。だがそれを許容してくれるかどうかがわからない、そういう点で不安は大きい。融通の利かない人物が相手だった場合、お金を持っていないからダメとなる可能性もある。怪しまれもするだろう。最悪逮捕や捕縛といった動きがあり得るかもしれない。


「……まあ、なんとかなるだろう」

「心配はありますが……どちらにしてもこちらでの生活をするための財産は必要ですね。それには街に入るなりして金銭を得るしかありません」

「魔石を売る、魔法道具を売る、その他仕事をするにしても……外ではな」

「街中に入る必要があるってことですね」

「野宿もできますけど、やはり宿で過ごせるほうがいいですし……」

「そうだな」


 そういうことで公也たちは街へと向かう。歩いて行くのと違い馬車ということでいろいろ目立つし乗っている人物でも目立つ要素はあるしお金を持っていないとかでも目立つところがある。なので呼び止められる可能性は高いだろう。






「……あっさり通れたんだが」


 呼び止められなかった。


「あれでいいいんだろうか?」

「一応確認はありましたね。何か魔法道具を向けられましたけど」

「キミヤ様はあれが何かわかりますか?」

「いや……正確なところは何も。たぶんでいいなら、恐らく確認用の魔法道具だろう」

「そのままですね」

「相手の持っている情報を確認し、それが何かに一致するかどうかの確認をする……恐らくは通る人間が記録にある盗賊などの犯罪者などはすぐに判別できるんだろう」

「普通に見ればわかるのでは?」

「…………まあ、魔法道具でわざわざ調べずとも本人だと判別することはできるだろうな。だけど……この大陸は魔法道具が普及され使われている。何らかの魔法的な仕組み、特殊な何らかの作用が人の体に仕組まれ、それを通じて例えば人を殺したことがあるか、犯罪行為をしたことがあるか、そういうものを見抜く……仕組みに記録されているそれを判別することができるのかもしれない。あるいは単純にあの魔法道具が極めて大雑把な相手の情報を得ることができる、例えばこの大陸における犯罪行為に合致する行動を相手がとったことがあるかどうか、を判別できるとか」

「そんなものがあるとすればとんでもないことになると思われるのですが?」

「そうだな。だからあくまで可能性だけだ。実際のところは分からない」


 公也たちがあっさり通ることができたのは魔法道具による判別が行われたからである。この大陸における町などの入り口に存在する検問で使われる魔法道具は相手が一般的な観点におけるこの大陸の犯罪者であるかどうか、を判別している。その犯罪は主に重犯罪、盗賊行為や殺人、強盗、その他一般的な犯罪行為……どうやってそれを判別するのか、何をもってそれらの犯罪を犯したことがあるかどうか、それを決定しているのかは謎だが、ともかく犯罪者であるかどうかを判別できるという極めて優秀な魔法道具による判定である。

 公也たちは一応この大陸において外から来たというある意味では密入国に近い存在でありそれもまた一つの犯罪と言えるところかもしれないが……そこはどうやら判定しないらしい。あるいは公也たちの場合は自分たちの意思で入ってきたわけではないのもあるかもしれない。

 結局のところ魔法道具が何をどう判別しているのかは謎である。しかし、どうであれ公也たちは街の中に入ることができたということに変わりない。現状はそれで十分……少なくとも公也たちにはそれで問題がない。


「とりあえず馬車があると邪魔だし宿を探さないと」

「お金がありませんので宿を探すのは……」

「後払いで支払うことを話して泊めてもらえばいいと思う。魔石はあるわけだしそれを見せればお金の支払い自体ができないとは思われないだろう」

「……私にはそのあたりはわかりませんが」

「でも馬車で無意味に街の中を移動するのは通行の妨げになります。早めに落ち着ける場所を見つけた方がいいでしょう」

「フィリアさん、わたしが換金できる場所探してきましょうか?」

「それは流石にダメです。一人では危ないでしょう」

「俺も行こう。流石に町中で馬車に乗っている人物を襲うようなこともないだろう?」

「……キミヤ様も行くつもりですか?」

「速めにお金は用意した方がいいからな」

「そうですね。シーヴェ、公也様と一緒に行ってらっしゃい」

「えっ? あ、え? キミヤさんとですか!?」

「ふふ、そうですよ。少し街の中を一緒に歩いてきたら?」

「あわわ……」

「シーヴェ。アリルフィーラ様はああいっていますが、宿に泊まる以上お金の用立ては速めにお願いします。泊める相手も速くお金をもらった方が心配はないでしょう」

「あ、は、はい!」


 街の中でいきなり襲われるような可能性は低い……馬車に乗っている相手を襲うのは流石に目立つし、そもそもそんな無法な街でもない。道を歩いているところに絡んでくるということならまだあっても馬車に絡む相手はそういないだろう。なのでフィリアとアリルフィーラはそこまで危険は少ない。シーヴェだけだと安全面では不安がある……この大陸での獣人の扱いは不明だし、戦闘能力という点では防戦ならともかく攻撃のできないシーヴェは微妙なところがある。ゆえに公也も一緒な方がいい……そもそも魔石は公也が持っている形であるし、魔法道具もそうだ。取り扱う点で持ち主である公也がいた方が都合がいい。金銭的なやり取りもシーヴェよりは公也の方がいいだろう。まあ、公也もそのあたりは大雑把なので不安はあるが、別に元々お金に関しては必要な分を得られればいい、ということで損も得も考えないところだろう。もとより大陸が違うのであるし、お金はちまちましたところでより高く得るという必要はない。すっぱり早く売ってくるだろう……ただ、この街、この大陸の街は初めてということもあり、悪い癖が出そうな気もするが。



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