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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十六章 神渡り
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「本当に魔法が出るんですね」

「あまり見ない魔法ですね……魔法道具の形状も一般的ではありません」

「魔法道具なんですし独特な形でもおかしくないと思いますよ? わたしでも魔法みたいなものが使えるのはちょっと嬉しいですね!」


 魔法道具の使用に関してアリルフィーラ、フィリア、シーヴェとそれぞれ試してみた。魔法使いでもない三人であるため道具を使っているだけとはいえ魔法のようなことができるのはちょっと楽しい面白いと感じる様子である。特にこういうことに関してノリのいい方であるシーヴェはすごく喜んでいる。彼女の場合は攻撃自体がまともにできない問題もあるだろう。誰かを攻撃するわけではないが、攻撃そのものと言える魔法に近いものを使えるという時点ですごく嬉しいものだろう。

 シーヴェに関しては魔法道具自体を使用できるかどうかの不安があったがどうやら使用自体には問題がなかったようだ。ただ、やはり攻撃意志……何かを狙って使用するなどは試してみた限りではできないようである。攻撃するつもりで使うこともできず、結局のところ何かを狙わずに、シーヴェから見て生物……一般的な生き物認定する感覚が強い代物のがある方向ではない「場所にしか使えない。草はまだ魔法道具を向けて使えるが木はできない、花が咲いている草はできないとそのあたりの感覚的なものが正直謎である。


「これは多分銃の形だと思うんだが」

「銃?」

「銃ですか?」

「銃って何ですか?」

「……まあ、俺が知る限りではアンデールのある大陸でもシーヴェのいた大陸でも見たことはないからな。そもそも火薬を用いる武器みたいなものを見かけること自体がないし」

「火薬ですか……」

「あまり聞いたことはないですね」


 この世界において火薬の利用は全くないわけではないものの、普及はしていない。そもそも火薬で武器を作るよりも魔法の方がはるかに経済的である。火薬に資源を使うくらいなら別の何かに利用した方がいいだろう。まあ、そういった別の利用に関しても結局魔法の方がいい事の方が多いような気もする。なのでこの世界に銃は存在しない……ただ、抗して魔法道具に銃のような形状のものがあるという事実もある。前提としてこの世界を含めた他世界の多くでは基準となる知識、発展形、世界法則が存在する。基準世界と呼ばれる世界を大本とし、その世界の法則、その世界の技術、その世界の知識によって多くの世界は成立する。重力の存在、空気に関して、植物や動物などの生態系、意思疎通における言語的情報。公也がこの世界に来ても生きていられるのはそれらが公也の生存適性に合っているからこそ。

 そしてその中の知識や発展形においては武器などの技術も含まれる。この世界でも剣は剣だし盾は盾、槍は槍。武器の形状は公也のいた世界と違いがない。もちろんそれぞれの技術によって一般的ではない形もあるし、この世界は魔法も存在し公也のいた世界では見られない金属なども存在する。それゆえの別の形、性質を持った武器はできるにしても基本的なところは変わらない。すなわち銃もまたその形は変わらない。ただ、火薬を使う技術自体が一般普及していないこともあり、それは別の形で使われている。それがこの魔法道具の形として。魔法の射出、という点では銃器は悪くない形となるだろう。杖の先から打つよりもだいぶやりやすいかもしれない。まあどういう形でも大きな問題はないと思われるが、イメージ的なものや扱いやすさは重要だ。少なくとも先の方から出るような形状、狙いをつけやすい形状の方が利は大きいはずである。


「なくても問題はないけどな。危険性を考えればない方が……」

「そんなに危険なものですか?」

「まあ、爆発とか……この魔法道具みたいに魔法じゃなくて鉄の球を撃つことができるとか?」

「危険と言えば危険かもしれませんが、魔法の方がよほど……」

「魔物の方が危険ですもんね。剣も弓矢もありますし……鉄の球を撃ちだすのがそこまで危険かって言われると」

「……そうだな。魔法使いでなくとも使える、練習が必要なく簡単に使えるとかもあるが、そうか、魔法とか剣とかそういうのが身近にあるとそこまで危険でもないか……」

「でも公也様も不意打ちを受けていましたし、隠しやすいとかわかりにくい利点はあるのかもしれませんね」


 銃器はこの世界では一般的ではない。だからこそ、それが武器である、危険なものであると認識されづらい。ゆえに向けられてもすぐに反応できず攻撃を受ける、そんな可能性はある。もっとも魔法なら魔法使いでもなければその使用に気づけない……やはり魔法の方が使いやすいのがこの世界かもしれない。下手な遠距離攻撃武器よりも武器を持って挑む方が強いとかそういうこともあり得る。鋼より硬い肉体とかこの世界ならばあり得ることであり、銃器程度の攻撃なら余裕で防げる装備、魔物の毛皮なんてものもあるかもしれない。剣なら勝てる、強いというわけでもないが、ただの遠距離武器よりは近距離武器の方が攻撃性能は高いというのがこの世界を含めた多くの世界でのルール。またこの世界では技の関係もある。技を使うことを考えれば銃器は何を技とするのか、という感じで技を使いにくい。そもそもそれ自体が攻撃力があるゆえに技を使う、磨くというふうにはできないため技を身に着けることができるかもわからない。結局のところ銃器は色々な意味で利が少ないのがこの世界。魔法道具という形でその技術、形が残る程度なものなのかもしれない。


「気を付けた方がいいですね」

「アリルフィーラ様をいきなり狙ってくる輩がいるとは思えませんが……危険があり得るという点では知っておいた方がいいことでしょう」

「でも狙われて躱せます? キミヤさんも撃たれてますし」

「命がけで防ぎなさい」

「……はいー」

「ふふ、無理はしなくていいですよ。公也様が何とかしてくれますから」

「そういう期待をされると困るんだけどなあ」


 銃器への反応、対応は不可能ではない……とはいえ、流石にそこまで急な攻撃に対応しろと言われても厳しいところ。そもそもアリルフィーラの公也への期待値が高すぎる。彼女のそれに関しては単純な期待というよりはそれだけ信頼、信用している……単純にそういうものだと思っているところがある。まあ、それだけの力を持っているからこそでもあるが……ちょっと重い、色々な意味で。



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