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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十六章 神渡り
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「しかしただの盗賊が魔法道具を持っているとはな」

「珍しいものですか?」

「そもそも……魔法道具は魔法使いでもなかなか作れないからな」

「でも公也様は作っていますよね?」


 公也はアンデールで魔法道具を作っている。厳密に言えば魔法道具と言っていいか……いや、魔法道具ではあるが少々特殊に過ぎるもの。もっともこれに限って言えば公也一人で作ったというわけでもない。


「あれはそもそも夢見花やロムニルたちと共同で作ったようなものだ。一番核となる作業、作成のためにいろいろやっていたのは夢見花だろう。俺単独で魔法道具を作れと言われたら…………できてもかなり簡単なものだろうな」

「そうなんですか」

「まあ、魔法道具を作ることに関しては結局のところ魔法道具に関する研究、知識、技術、それらがしっかり伝えられる状況にあれば難しくないっていうのはあるかもしれない。作る魔法使いの腕もかかわるし魔法に関する能力の問題もあるが、結局のところ技術的なものだから」

「でもあちらでも作れる方は今のところいないようですけど」

「ハーティアでもそういう話はありませんし……キアラートでもそういう話はないですね」

「そもそも日常的な魔法道具を作ってもそこまで大きな価値はないし、攻撃性の高い魔法道具は取り扱いの問題もあるからな。今回の盗賊みたいな輩が持てば危険だ」

「……誰でも扱えると危ないってことですね」

「あったら便利なんですけどね。わたしたちの住んでたところだろと」

「そっちだと危険も多いし、シーヴェたちの場合は住んでる場所が場所だからな……」


 魔法道具の作成は公也たちのいる大陸では実現できていない。そもそも魔法道具自体がほぼ過去の遺跡などからの産出品である。魔法の能力に関してもキアラートでも魔法構築に関してそこまで発展しているわけではなく、夢見花みたいな魔法に関する特殊な知識を持っていなければ難しい。また、魔法道具を作るにしても武器として作るのであればその管理の問題も出てくる。今回の盗賊みたいに悪人の手に渡れば犯罪に使われ、その被害は大きなものとなる。魔法使いが手を貸す事態と変わらないが、それを誰でもできるようにしてしまうことの方に問題が出てくる。人を管理するよりも物を管理する方が難しいだろう。また魔法使いを危険視する状況下で魔法使いでない者が魔法に等しいことを行える、ということにもなるためそういう点でもあまりいいことではないだろう。

 もっともやはり作るための技術が完成していない。あるいは誰か作っているところはないとは言えないが、それが表に出される可能性は低いし、公也も言う通りそれらの作成技術がなければ簡単なものしかできない。魔法道具で強力な魔法を使うようにするのは魔法使いでも難しい特殊な技術となる。魔法に関して研究され発展しているキアラートでも難しいだろう。そして簡単なものを作れても簡単なものにどれほど価値があるか。古代の遺跡からの産出品のようなものなら骨董品としての価値があるかもしれないが例えば灯りの魔法道具などは必要な物か。魔力を無駄に消費するだけ、魔力を使って灯りを用意するくらいなら普通の灯り……蝋燭なりなんなりを使う方がコスト的にはいい。物理的な消費がない分魔法道具の方がいいが、灯りを維持するのに必要な魔力がどれほど必要か、ということになる。もちろん魔力をどこから調達するかにもよるがやはりその調達能力次第では秘事になるだろう。


「しかし、こちらだとこれくらいは誰でも持っている、らしいな」

「それは……危険では?」

「むしろ誰でも持っているとなるとそこまでではないかもしれない。もちろん魔法道具による被害は増えるだろうけど、一方的じゃなくて対抗もできるから。個人的にはそれだけ広まる技術がどう伝わっているのかとか……あと、魔法道具を使うためのエネルギーに関しても気になる」

「エネルギーですか」

「魔法使いでなくとも魔法道具は扱えるけど、使用限度がある。魔法道具でも魔法を使うため魔力は必要だ。魔法道具自体に溜める機構や魔力を余所から持ってくる機構があったりするが、それは流石に危険だし制限はかけるものだと思う」

「……だから今キミヤ様は魔法道具を弄っているのですね」


 現在公也は魔法道具の解体中である。魔法道具に関して知識を得るため、どういうものかを調べるためである。まあ公也はそこまで魔法道具に関して作成に関する能力が高いわけではなく、簡単な調査をしたところで何かわかるわけでもないだろう。魔法構築、魔法式も魔法で調査するならともかく、ただの解体、物理的な調査で何かがわかるわけではない……まあ魔法陣に関して少しは何かわかる可能性があるが。


「これかな?」

「それは何でしょう?」

「多分だが……魔法道具の動力源、エネルギーの元……かと思う」

「石みたいな感じですね?」

「鉱石類……でもない気がするな」

「少なくとも見たことがない感じではありますが」


 魔法道具に嵌められていた石……恐らくは取り外しが自由、交換が可能な代物が魔力の源であると公也は当たりをつける。まあその石から魔力を感じるという事実もあるため間違いではなさそうである。ただ、現時点で断言できるものではない。

 その石は少なくとも公也たちが見たことのないものだ。まあ公也を含めこの場にいる人間で見たことのある石材というのはそう多くない。シーヴェはそのあたり詳しくなく、フィリアとアリルフィーラは多少宝石に知識がある程度、公也も石材そのものはそれほど興味がないためそこまで知識を取り入れていない。今までの過程で色々知識を得た分でm該当する者もの、当てがない。


「さて……」

「あ、同じような石がありますね」

「他の魔法道具にも同じようなものが使われているようですね」

「公也様の考えが当たってるということでしょうか?」

「それはわからないが……しかし、これは……加工でこの形か?」

「……真球ですか?」

「何か問題あるんですか?」

「本当に真球であるなら加工技術の無駄遣いになります。仮にどこからからこの石を掘り出して加工するとしても真球である必要がありません」

「魔法道具に使うにしても形は重要じゃないしな。そもそも掘り出して加工するなら真球にする加工は掘り出した石材の無駄な削ぎ落しになると思う」

「へー。そうなんですか……」

「この石はどこで手に入れられるものなのでしょうか?」

「とりあえず、これらの魔法道具以外にも使われているか調べないとわからないな……」

「ひとまず馬車を進めてどこか街にでも行くしかありませんね」


 現状の公也の調査だけで何かわかる、というものでもない。なので街など人のいるところに行き、魔法道具に関する知識を得る必要があるだろう。とはいえ、それを聞くのも面倒ごとに繋がる可能性はある。やり方、聞き方は慎重にするべきだろう。盗賊相手とはいえ疑問に思われていたわけであるし、普通の人々であればどうなるかわからない。何はともあれ、フィリアによって馬車は進められる。何時までも人のいない場所にいても仕方がないので。



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