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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
五章 城生活と小期間の旅
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7



「ふっ、ふっふっふっ……」

「はあ…………」


 アンデルク城の一つの部屋の中、男性と女性が荒い息を吐きながら疲れた様子でぐったりとしている。


「ようやくできたぞ……!」

「そうね……………………本来の目的である成長や治癒はできなかったけど、なんとか遠話と帰還は一応の完成を見せたわね」

「そうだね。しかもそれを実行するのが個人じゃなくてこの城だって言う話だ。もし城魔が魔法陣を使うことであらゆる魔法を自由に使えると言うのならとんでもなく城魔の価値が出ることになる!」

「………………そうね」


 城魔に魔法陣を書くことで城魔が魔法陣が意味する魔法を使えるようになる……城魔の意思であるペティエットの匙加減、またペティエットのような城魔の意思が生き残っていることが前提条件となるものの、自由に魔法を使えるようになる、それも人間の魔力を必要としないと言うのは大きい。そもそも魔法陣は魔法を使うための補助的な意味を持つもので恒常的に魔法を使用するためのものとするには本来難しいものである。補助効果は大きいが常時魔法を使えるようなものではない。人間が扱う魔力には限度があるのだから。それを城魔なら扱える……あるいは扱える可能性があると言う事実はとても大きいことだ。実際に試すまではわからないがもしこれが実用可能なレベルになれば魔法界隈に衝撃を与える事実となる。


「ロムニル」

「なんだい?」

「このことに関しては秘密ね。外に漏らすわけにはいかないわ」

「…………そうか。リーリェがそういうのなら仕方がない」


 しかしそんなとても大きな発見であるがリーリェはそれを外に漏らさないことに決めた。


「せっかく派閥の発言力を強めるかもしれないのに、残念ね」

「なに。そこまで気にすることでもないさ。僕らは研究ができればいいんだから。リーリェが外に漏らすわけにはいかないと言うことは何か問題があるんだろう?」

「ええ…………いろいろとね」


 仮にこの事実が外に漏れれば城魔は様々な形で利用されることになる。一応城魔はその場所から動くことができないのでその利用価値は城魔の発生個所によることになるが、例えばアンデルク城に帰還する魔法陣を自由に使えるようになった場合……トルメリリンという国にとっては洒落にならないくらいに重大な意味合いを持つだろう。それはつまりワイバーン部隊を送ることが今まで以上に簡単になると言うこと。ワイバーン部隊に限らず多くの人員を自由に遅れる。城の守りが今回公也が城を落とした時以上のものにできるということだ。それ以外にも国の境付近に城魔が発生していれば兵士を遠方から送ることが自由にできるし物資の運搬も楽になる、戦争の準備が極めて簡単になり得ると言うこと。そして今はまだ帰還の魔法陣を例に出しているがそれ以外の魔法陣も使えるかもしれない。攻撃魔法の魔法陣、天候を変化させるような魔法の魔法陣など、相手の国にとってやられたら困るような魔法も自由に使えるようになるかもしれない。城魔を利用した戦争ということも起こり得るだろう。流石にそれはいろいろな所に悪い形で影響を残しかねない。

 ゆえにリーリェはこの魔法に関しての知識を秘することにした。知るべきものは公也とそれに縁深い仲間のみ、秘密を守ることのできる者のみとすることにした。こういった魔法の秘匿技術というものはリーリェに限らず様々な魔法使いが有しているものだ。秘匿されるほど重大な事実を知る者は少ないものの、それなりにこれを外に出してはいけないと隠している者は多い。あるいはリーリェの属する魔法の真実に関しての派閥も、厳密な意味ではその事実を認識したうえで他の派閥に属している者もいるかもしれない。魔法は魔力を用いて起こす現象である、自由にどんな現象でも起こせると言うことがわかってしまうとそれはそれで危険なことになりかねない、そう考えている者もいるかもしれない。ある意味真実を排斥し虚言とすることで魔法の危険性を減らしている可能性もある。もちろんそうでない可能性もあるのでこれはあくまでそういった可能性もあると言う話でしかないが。




 と、そういった思考を挟んだりしたが魔法と魔法陣の完成に関して公也を呼びロムニル達は相談をした。一応完成はしたがまだまだ考える余地はある。何か見落としはないか、使って不便はないか、どう利用すればいいか、様々な問題点を挙げて改良に努める。作ればいいと言うものではない。完璧に近いものができてもまだまだ研究の余地はあるのである。


「これが完成した魔法か……双方向からの転移か」

「そうだよ。一応元の場所に戻れるようにした方がいいかなって」

「誰が魔力を込めるんだ? これ魔力を込める要素がないとむりだろ」

「あ、確かに」

「一方向からの方が消費魔力は減るからそっちの方がいいと思う。元々戻ってくるためのもので帰還は考慮しないし。しかし、これどうやって使うんだ? 記述すればいいのか?」

「発動するための魔法陣を記述した紙を用意しているわ。これを使えばこの上に移動用の門が出てくるの」

「……魔法陣の回収はできないのか? 残ったら誰かに利用されたりするかもしれない」

「確かにそれはあるわね……一定時間門を作り維持する形式にした方がいいかしら」

「しかし、これだと……移動が問題だな」

「何か問題があるかな?」

「俺が移動するのにワイバーンを使うつもりだ。その移動の問題がある」

「ああ、それは確かに……」

「でも門を大きくするとその分魔力消費が大きくなるわ。キミヤ君なら別にいいかもしれないけど……」

「そうか、ロムニル達が使うような場合は厳しくなるか……フーマルはまあ魔法を使えないから無理だとして、ロムニル達にも使えないのは厳しいか」

「でもワイバーンを戻せないのは困るね。流石にここまで飛んで戻らせるって言うのは無理だろう?」

「無理やり従えているようなものだからな。俺から離れたら逃げる可能性が高いと思う」

「……キミヤ君、空間魔法を使えたわよね?」

「そうだ! 空間魔法で作った空間から転移するのは? それなら魔法陣の回収は必要ない」

「空間魔法同士で干渉しあうと思う。でも……そうか、空間魔法か。ワイバーンはそちらにしまうって言うのも手か」

「ああ、それはいいかもね。でもキミヤ君の空間魔法って保管庫のようなものだよね?」

「そうね。でもそれならそれで新しく作ればいいのよ。人間を含め生物を入れて置ける空間を確保する魔法を」

「無茶を言う……でもそれがあれば楽にはなるな。部下の移動も俺がワイバーンに乗って移動すればその移動先に人を連れていけるわけだし」

「たしかに。それなら僕らがワイバーンに乗る必要がなくなる。ぜひ開発してくれ」

「まあ、それはいいけど。結局魔法の改良はまだまだ必要ね。すぐに実現できるほど簡単ではないわね……」

「ああ、それと遠話も重要だね」

「そうだな。こっちも確認しておく」

「遠話は帰還よりも楽よね。魔法陣間で話せればいいだけだもの」

「消費魔力問題はあるけど、まあだいぶ楽だよね。帰還よりはね」

「…………通話に関しての問題があるな。まあ魔法陣に対して届けば、初期の待機反応、使用者の問題……素材、魔法陣を刻むもの……仕組み、やっぱり電話みたいに気軽に使える方がいいか…………」


 ロムニル達が作った魔法とその魔法陣、それを元に公也は色々と考え、また仮に使う場合どういう問題があるかなどの検証、思考を行っている。そしてその改良点をだし、様々な問題をあげ、より良い魔法を考える。魔法陣自体はそれを書けば最後までずっとそれであるとは限らないので別にそこまで最良のものを記述することにこだわる必要はないが、書く場所がペティエットの部屋なので出来る限りいい物を書いて一回だけで済ませるようにしたいと言う気持ちがある。そのためにより良いものを、またその改良に関しての思考、ロムニルたちとの魔法に関する話し合いも公也にとっては楽しいものである。


※別に魔方陣を使えばいいだけだからだれでも使えるはず。

※城魔の利用価値が上がる、というのは確かなことかもしれないがそれ以上に戦争利用その他の危険もあるのでこの事実に関しては外に漏らさないほうがいいという判断。場合によってはアンデルク城の取り上げに動く可能性もある。まあそちらは主人公のせいで阻止されるだろうが。

※魔法の技術は中によってはシャレにならない危険な代物も少なくないため魔法使い次第では個人の判断で他者にその中身を伝えず封印することもある。

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