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暴食者は異世界を貪る  作者: 蒼和考雪
四十五章 傾国の魔
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「結局今回の騒動の元凶は見つからなかったのですね」

「そうみたいだな」


 色々と紆余曲折あり、ダハーカをアンデールに送り自分を誘った王のもとに合流した公也はそのまま安全な状況を確保しつつ様子を見ることにした。そして騒動自体は一応の終結を見せた。もっともそれは城の中で解放された魔物をすべて倒したというだけに過ぎない。その後街の幾らかの場所や幾つかの貴族の住んでいる場所、家で魔物が現れたという報告などもあったがそれがどういう繋がりで起きたのかまでは明確には分からなかった。一連の騒動にリシェイラという女性、ダハーカの言で魔物であることが分かっているその存在が関わっていることは確かだろうと推測はできるが推測はあくまで推測にすぎず、実際に断言できるほどの確証がある物ではない。ダハーカがいれば多少は情報を得られたかもしれないがいつまでも連れているわけにはいかず誘った王との合流前にアンデール送りにせざるを得なかったのは公也にとっては残念と言わざるを得なかっただろう。

 そして騒動は解決したが問題自体は残っている。一つはリシェイラという女性が逃げたままであること。騒動の元凶を捕まえられなかったためそちらに矛先を向けられず、また今後も同じような騒動を引き起こす可能性がある。そのため見つけなければならず、その捜索に兵士や騎士を使わなければいけず面倒なこととなっている。そしてその騎士や兵士に関わる問題が一つ。公也の影響であの魔法が使われた場にいたほとんどすべての者はリシェイラの影響から解放されたがそれ以外の人物はそうではない。リシェイラがこの地から離れ、また彼らの知るところではないが殺された結果、影響が抜けて行き元に戻るにしてもしばらくは影響が残るだろうことは間違いない。その間リシェイラの影響を受けていた物はリシェイラの捜索には使えないし、最悪邪魔される危険もあり得る。そのあたりの君話目も難しい。さらに言えばこれは騎士や兵士だけではなく一部の貴族に関しても問題となるものだろう。どこまで影響が広まっているかわからない。

 またこれとは別に、今回の騒動の被害の面での問題が残っている。城で魔物が解放されたわけであり、その対処に兵を動かした事実……魔物が現れその魔物が遺した被害の問題もある。魔物は基本的にリシェイラの使っていた兵の一部から発生した物であり、またそうでないところからも少ないながら発生している。それゆえに誰が魔物か今もまだ魔物がいるのではないかという疑心暗鬼、そして魔物だった兵が失われたことによる人員喪失、魔物が被害を与えたことによる損害の補填から人員への被害の問題……かなり大きな問題だ。そして起きた時期の問題もある。宴の最中で他国の王族もいる中での魔物が現れ被害を残した騒動である。城への被害で宴が続けられなくなる、騒動の中で宴を続けることが無理なこと、一番の大問題が宴に呼んだ人物への被害である。不幸中の幸いというか、本当に最悪は避けることができたというか、王族などの重要人物には被害が出なかった。しかし連れてきた護衛や従者には被害が出てしまった。あまり多くもないし使者は出ていないが、それでも被害は被害、その補填、謝罪などが必要となる。そして謝罪すれば、補填すればいいという話でもなく、この国に対して呼んだ国の人間は良くは思わない、宴も途中で不満も発生する、信用が失われるのは確実である。

 そしてこれらの騒動の影響というわけでもないが、民から財を吸い上げ贅を凝らした宴を途中で停止すること、城での騒動と民への様々な重圧の急激な解消に対する疑念、リシェイラという魔物を城に引き込みその魔物に好き勝手させてしまっていた城、王への不満。魔物を引き込んでしまっていたことは他国も厳しい目を向けるだろう。そういった問題もあり色々と対処に動くがその動きも決して早くはなく、遅々としており、さらに言えば成果も芳しくないという状況。

 宴がなくなったということで王たちはこの国に残ることなく自国へと変えることとなった。宴がなくなったこともあるし今回の騒動でこの国が忙しいというのもある。またリシェイラという魔物がどこにいるかもわからない。その魔物がどう動くかによって自分たちも危ういかもしれない、そういう理由もあり帰ることとした。その際話題に公也とその妻であるアリルフィーラの件も登ったこともまた一つ要因だったと言える。


「キミヤ様は探せませんか?」

「一応不可能ではないが……無作為に探すのは難しいかもな。魔法も決して万能じゃないから。大分いろいろできるのは確かだけど」

「そうですか……」

「不安ならアンデールに戻った後夜明けの魔女に訊ねてみるといい。彼女なら探し物に関しては魔法以上に凄いことができるようだからな」

「検討してみます」


 リシェイラの行方に関しては直接かかわった公也やアリルフィーラよりも、その従者であるフィリアが一番気にしている。二人は別にリシェイラという女性に対し危機感が薄いというか、そこまで問題視危険視していなというか、そういう感じなので特に気にしてはいないのだがフィリアは何よりアリルフィーラの安全第一、そして今回手を出されたという事実がある。公也も自身の妻に手を出されたということで怒りはあるが、決して無駄に追いかけることに力を費やさない。いや、本気で追いかけるつもりがあるから追いかけるつもりがないというのが事実だろう。公也に向かわず逃げるような相手を追っても探すのは難しいし、その程度の相手ならまだ何とでもなる……そう考えているところもあるだろう。あるいはフィリアに言ったように夜明けの魔女に力を借りることでいつどこで見つけられるかを知るつもりがあるのかもしれない。何にしても今回は放っておくつもりであるようだ。


「それにしても残念ですね」

「宴が途中で終わったことか?」

「それは私にはあまり。私としては公也様と楽しく過ごせる時間が少なくなってしまったことが非常に残念です」

「……そうか」

「大丈夫ですよ! ほら、アンデールでも楽しく過ごせますし」

「そうですね。でも今回みたいに国の外で楽しく、というのは機会が少ないですから」

「あ、そ、そうですね……」

「シーヴェ……」

「あう……」

「ふふ、気にしないで。楽しく過ごせる機会はまたあるわ。その時はまた二人も一緒にね」

「はい……」

「私たちもですか?」

「そうよ。シーヴェも、あまり機会はないでしょう?」

「あ、あー、えっと、そのー……」


 アリルフィーラを含め三者の心情はいろいろ複雑である。いや、フィリアはそこまででもないだろう。彼女は何よりもアリルフィーラ第一なので。シーヴェに関しては公也に対する想いもあるし、アリルフィーラの友人というたちもある。そしてそのうえで従者ですでに結婚しているアリルフィーラに対して裏切りのような横恋慕を抱いている。まあ公也は他にも二人の妻がいるし、フィリアを含め関係を持つ相手は他にもいる。今更シーヴェが増えたところで問題はないが……そこはやはりシーヴェ自身のアリルフィーラとの関係があるからこそだろう。アリルフィーラは気にしないというか、むしろ勧めるくらいだったりするのだがそれでも、と複雑な心境である。

 そんなアリルフィーラは今回一緒にいられる時間を楽しむつもりだったがその時間が減ったことに対して不満を持っているようだ。普段も割とそういった機会はすくない。シーヴェとフィリアがいるとはいえ、二人で過ごす時間は稀少なもの。他の妃やメルシーネ、ヴィローサがいることが多く、二人きりは結構珍しい。なので堪能したかったところだが、残念ながら騒動で中断されてしまった。今の状況、戻るための馬車での旅を楽しむ以上のことはこれ以上は無理である。


「どう思います?」

「……そこは俺が関与することじゃない」

「いえ、むしろ一番関与の大きい人物でしょう……」

「最終的に決めるのは彼女たちだし」

「キミヤ様?」

「……こういうの、苦手なんだ」

「…………そうですね。キミヤ様はそういう方面は本当に疎いというか下手というか。だからこそアリルフィーラ様が仕切っているような状況なのでしょうけど」


 はあ、と大きくフィリアはため息をつく。優柔不断というか、恋愛的なことは公也は基本的に自分が色々決めるようなことをしない。どちらかというと相手側に責任、決断を置くようにしていることが多い。割とろくでもない男な気がする。そのあたり本当に下手というかできるタイプではないというのもあるだろうが。まあ、だからこそアリルフィーラたちで色々と決められ上手くまとめやすい、というのもあるのかもしれないが。







 そんなふうに馬車に乗っている四人で話していた。誘ってくれた王はやはり今回も公也たちだけの方がいいだろうと馬車には乗っていない。御者は会話に参加しているフィリアが兼ねており、他には誰もいない。ある意味では、だからこそまだよかったと言えたのかもしれない。


「っ!?」

「えっ」


 突如、馬車が、落ちた。遥か空から、見知らぬ大地へとむけて。



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